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「お金のむこうに人がいる」の読書レビュー、感想

この本は元ゴールドマンサックスの金利トレーダーの人が書いた本で、経済をお金を中心に捉えるのではなく人を中心に捉えることで、経済をわかりやすく説明している本です。

面白い視点で書かれたことがたくさんあるのですが、後半に進むにつれ頭がこんがらがるところもあったのでここでまとめておきます。

結論としては、下記のようになると思います。

  • 普段私たちはお金を中心に経済を考えている

  • それがその裏にある労働を覆い隠してしまい、お金があれば解決すると思い込んでいる

  • しかしその裏にいる働く人こそが重要であり、そこを中心にすると得体のしれない経済というものを掴みやすくなる

本は3部構成になっており、今回は部ごとに心に残ったことを書いていこうと思います。

社会はあなたの財布の外にある

この章ではなぜ皆がお金を使うのか、お金とは何なのかといった内容が書かれています。
確かに私たちは自分の口座残高や使う金額ばかり目がいって、その裏にある労働を見落としがちだなという事に気づきました。
またお金は労働交換チケットであり、知らない人とのコミュニケーションツールであるというのはかなりわかりやすいと思いました。

  • 皆が政府が発行したお金を使うのは税を支払う必要があるから、つまり脅されているから

  • 税がお金を循環させている(民間から政府、自治体に税金が行き、その税は公共事業や取引を通して民間や公務員に流れる)

  • お金をコピーするとお金に価値を感じる人がいなくなり働く人がいなくなる、そうなると助け合って生きていけない

  • 全てのものは労働によって作られる

  • お金を使うというのは誰かの労働を消費すること

  • 価格(客観的価値)と効用(主観的価値)がごっちゃになると混乱する

  • お金はコミュニケーション力を持ち、人をつなぐ糸になるが、それによってその向こう側にいる人を覆い隠す壁にもなる

  • 価格は好意によって変わり、それが大きい家族の間では基本的にお金は必要ない

  • 働く人がいなければお金の力も消える

  • 誰が働いて誰が幸せになるのかを考える

「社会の財布」には外側がない

お金を払うとそれがなくなったような気になりますが、それは社会の中を移動しているだけという話かなと思いました。
簡単にいうなら「金は天下の回りもの」という事だと思います。
GDPの成長率や株価、国民の預金金額といった目立つ数字に捉われがちですが、それも結局お金が移動した結果だよねといった話だと解釈しました。

  • 原価というものはない、元を辿っていくと労働に行き着く(牛肉を辿っていくと生まれたばかりの仔牛になり、それは元々自然界にあるものである)

  • 貨幣自体の総量は政府が発行しない限り増えない

  • 預金を貸し出す事によって世の中にあるお金は増える、それもまた預金となる、ここで増えるのはあくまで残高としてのお金

  • つまり預金大国=借金大国

  • 国の借金も公共事業や取引を通して企業や個人の預金になっている

  • 流通市場の株式売買は転売と原理が同じ

  • 経済効果というのも財布から財布にお金が移動したに過ぎない

  • 低価格で商品が買えたり、壊れにくいという効用はGDPには現れない

  • 過去の積み重ねが今の豊かさなので、現在のGDPだけに注目して不安がる必要はない

  • 経済効果と言われるとそれだけの価値があると考えてしまうけど割に合わない労働なのかも

社会全体の問題はお金で解決できない

この部ではお金で解決できる限界の話をしていると思います。
特に国外への労働の借りが増えすぎると、外国のために働く必要があり、国内の労働力不足になる。
それがハイパーインフレの原因になったりするというのは今まで考えたことがなかったので興味深く、確かにその通りかもと思う説明でした。
老後2000万問題というのもお金があれば解決する問題ではなく(個人の範囲では解決できるが)、将来の労働力不足の問題なので身内を社会全体とするなら子供を増やしていくことでしか解決できないよねという話でした。

  • お金で解決できるのは分配の問題だけ

  • 貿易黒字は「労働の貸し」、貿易赤字は「労働の借り」

  • 労働の借りがありすぎると、外国人のために働かなくてはいけず、国内の労働力が足りなくなる

  • 労働力不足はインフレにつながる

  • 国の借金も財布間のお金の移動に過ぎない

  • 国が潰れるのは「労働の借り」を返せなかったとき

  • 昔は高齢者を支える負担がなかった代わりに、子育ての負担があった

  • 社会全体を考えた時に、お金は負担を押し付けるだけなので、子供を増やすことでしか老後の不安を解消できない

全体的な感想

経済の本となると用語が頻出しがちで、実態を理解できないような気分になることがありますが、この本はそういった小難しい言葉を使わずにわかりやすく説明されていると思いました。
お金ばかりに気を取られていると大切なものを見落としてしまうよと言われているような気がしました。
現在流通しているお金と税は切っても切り離せない関係にあり、この仕組みを考えた人はすごいなあと思いました。

ハイパーインフレに関する話もその背景にある労働力不足の話を前提に捉えてみると、綺麗事ではなくお金があるだけではダメで働く人がいなければどうしようもないのだと理解できる話でした。

また現代に生きる私たちはお金を神聖視し過ぎているのかもと思いました。
無いと明日の暮らしもままならないほどお金に依存している現代人ですが、お金は労働交換チケットであり、知らない人とのコミュニケーションツールであるということは忘れずにいれたらと思います。


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