渋沢栄一先生と街を歩く 〜日本橋兜町『Book Lounge Kable(ブックラウンジカブル)』〜
これは2024.01.21の記録です。
日本橋兜町は金融の街
お天気の悪い日だけどちょっとお出かけしたい。のんびり読書も良いな。そんな気持ちで日本橋兜町にあるブックカフェに出かけました。
兜町界隈をゆっくり回れる機会なので、少し寄り道してみます。
日本橋兜町といえば、金融の街。多くの証券会社が立ち並び、「国際金融都市の要」と呼ばれました。
今でもレトロな雰囲気を残した証券会社の建物が大変目を引きます。
街を発展させた立役者
この街が日本経済が大きく発展するきっかけを作ったのが、「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一先生。
渋沢栄一……最近よく見るな……という方も多いかも。ニュース番組でよくお見掛けするようになった柔和な顔のおじさんは、2024年7月から日本の1万円札の顔になる方です。
2021年には大河ドラマ『青天を衝け』の主人公になりましたね!
渋沢栄一を知る旅
生涯500以上の事業の立ち上げに関わったという渋沢栄一先生。彼がこの街で旗振りをして作ったものが2つあります。
1つが「第一国立銀行(現みずほ銀行)」、そしてもう1つが「東京株式取引所(現東京証券取引所)」。株取引と銀行は、日本の近代化に欠かせないものでした。
兜町のみずほ銀行は銀行発祥の地と言われ、今でも記念のパネルが飾られています。今では日本中にあるものがみんなここから始まったと思うと感慨深いです。
ちなみに渋沢先生のお宅は、東京証券取引所のすぐお隣にありました。お宅は現在江東区に移築されてしまっています(2024年春に公開予定)が、跡地は『日証館』という建物になっています。こちらには今素敵なチョコレートのお店が入っていますので、よかったら覗いてみてください。
KABUTO ONE(カブトワン)
前置きが長くなってすみません。それでは今日の目的地である、ブックカフェが入る建物の話に移りましょう。
平日は多くのスーツ姿の人が盛んに行き交う永代通りと平成通りが交わる場所に建つ『KABUTO ONE(カブトワン)』にやってきました。
最寄り駅は日比谷線・東西線の茅場町駅。雨の日でも濡れずに入れる駅直結の立地が魅力です!
ビルの1階フロアには、階段状のオブジェが置いてあります。実は机と椅子になっていて、平日はここで勉強や打ち合わせをしているビジネスマンさんが多いようです。
ロビーのパネルも必見
1階にはこのビルの来歴が書かれたパネルが置かれています。現在は『KABUTO ONE』と呼ばれるこのビル、かつては日本の経済発展を支えた大きな企業の本社ビルが立っていたようです。美術がお好きな方は『ヤマタネグループ』という名前にピンとくるかもしれません。今は渋谷にある『山種美術館』に収められているコレクションは、実業家の山崎種二さんが蒐集したもの。山崎さんが創業した『山種証券』は、現在の『SMBC日興証券』です。
昔立っていたビルも全部お洒落で、一流の建築家の仕事が伺えます。流石金融街のど真ん中にあるビルですね…!
幸運の『赤石』
サクッとエスカレーターで上っていこうかな……の前にぜひ注目していただきたいのが、ロビーの目立つ場所にある、この赤い石です。実はこの石こそが、渋沢栄一先生ゆかりの「幸運の石」。
この本赤石(佐渡赤石)は、明治21年に渋沢栄一邸を建築した折に、日本経済の繁栄を祈念して運び込まれました。建物は関東大震災(大正12年)で焼失してしまいますが、渋沢先生は難を逃れます。この石のおかげなのか……?渋沢先生は生涯に渡ってこの石を大切にしていたようです。
渋沢先生亡き後はゆかりの場所で大切に保管された後、『KABUTO ONE』竣工に際してビルの1階に設置されることになりました。
おそらく1人では持ち上げたりすることは難しい大きさ、いろんな人の手を経てここにやってきたんだろうなぁと思います。
Book Lounge Kable
エスカレーターで3階へ上ったら、すぐ目の前に綺麗なガラス張りの扉が見えます。サイネージにはプリンが映ってる……内部にキッチンがあり、食事ができるのも嬉しいです。
蔵書数は3,000冊超。ビジネス街ということもあり、経済・金融関係に特に強いということですが、それ以外にもデザイン、絵本、文学書など、種類は豊富です。図書館では何ヵ月も待ってやっと届く本がすぐ目の前に…という喜びと、ゆったり飲み物を飲んだりお仕事もしたいという希望が両方叶うのが素敵ですね。
選者のこだわりが伺える本棚の前で、意外な出会いを待つのも楽しい場所です。
この日初めて伺ったのですが、土日は混雑必至の人気スポットの様子。パソコンを持ち込んで仕事をしていると思しき人や、真剣に勉強している人も多かったです。
本がたくさんあるのはもちろんですが、専用Wi-Fiと楽天マガジンアプリを使って電子書籍が読めるサービスもあります。便利!
折角だからなにか読みたい…と思って選んだのは、石田夏穂先生の『我が手の太陽』。「異色の職人小説!」の文字に惹かれました。まだすべて読めていませんが、溶接工である主人公の動作の描写が丁寧で興味深いです。未体験の分野であってもぐいぐい読ませる力のある本でした。
利用料金は平日1時間550円、休日880円。1日利用は2,200円です。お支払いはキャッシュレス決済のみなので、事前チャージをお忘れなく!
この日はゆっくり食事をできそうなテーブルが見当たらなかったので、お食事は次回に。ちなみに、11時から13時までの間、880円以上の食事を注文すると1時間無料で利用できます!ありがたすぎる裏技。
最後に施設情報と渋沢栄一先生のまとめを置いておきます。この情報がどなたかのお役に立てば嬉しいです。
【施設情報】
Book Lounge Kable(ブックラウンジカブル)
住所:中央区日本橋兜町7-1 KABUTO ONE 3F
営業時間:11:00~20:00
定休日:年末年始(12月30日~1月3日)、全館メンテンナンス日
入場料:平日1時間550円、2時間1,100円、3時間1,650円(休日1時間880円、2時間1,760円)、1日利用2,200円
渋沢栄一先生について(1840~1931)
天保11年、深谷市血洗島(現在の埼玉県深谷市血洗島)生まれ。
子どもの頃から頭がよく、家業の商売を発展させる手腕さえ見せたという俊英でした。その知恵を買われて一橋家に仕えた後、欧州視察の随行員として同行します。
ヨーロッパへ渡り、外国語を覚え、髷を切って洋装に身を包み各国を遍歴。ヨーロッパ諸国の経済発展を目の当たりし、その発展を支えたのは「合本主義(2つのものを1つに合わせること)」によるものだと考えました。
西洋の発展に目を見開いた渋沢先生の次なる転機は、大政奉還でした。帰国を余儀なくされた後、蟄居になった徳川慶喜がいる静岡紺屋町で「商法会所(しょうほうかいしょ)」を設立します。これは日本で最初の銀行、そして商社を目指したものでした。
渋沢先生は日本が発展するためには、西洋のように商人たちが活発でなければならない、その為に国がバックアップをするべきだと考えて、明治政府で財政面の改善に奔走。そして、できたばかりの大蔵省で「富岡製糸場」の設置に関わっていきます。近代化していく日本で必ず求められる産業を、いち早く手掛けていたのですね。
大蔵省の官僚という立場を退いた後、開業に携わったのが「第一国立銀行」と「東京株式取引所」です。「国立」と冠していますが、「第一国立銀行」は初めての民間企業としての銀行になります。その後も「抄紙会社(現王子ホールディングス、日本製紙)」「日本鉄道」「日本煉瓦製造会社」「東京電力会社」など、500以上の事業の設立に関わりました。
日本の国際社会での立場を改善するべく、生涯で4度の訪米。日米の親善に尽力し、ノーベル平和賞の候補にも推挙されました。
とても分かりやすい動画をテレ玉さんが作成してくれています。
深谷市にある渋沢栄一記念館にも行ってみたくなりました。お時間があったら是非見てみてください。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?