見出し画像

気球からアンコールワットを見る

私は旅先で可能な限り動くことにしている。
特に国内のようにいつでも行ける場所ではない海外では電池が切れるまで動く。回遊魚のように動き続ける。時間と体力の許す限りその土地を堪能する。それはカンボジアのアンコール遺跡群を訪れた時もそうだった。
拠点は遺跡群を巡るのにちょうど良いシェムリアップという街だ。空港もこの街の中心部から車で10キロ(15分)ほどの良い立地だ。
日中は40度という環境で太陽が昇る前から日没まで遺跡を巡り、夜もショッピングセンターへ繰り出し日付が変わる直前にホテルへ戻る。そんな日々だった。

画像1


ここはショッピングセンターから徒歩5分の場所。もう人気がほぼ無い。
深夜の街は街頭も少なくちょっと怖い感じがしないでもないけれど、これはこれでここだけの体験だ。
ホテルの前には沢山のトゥクトゥクが待っている。夜の遊び場へ案内しようとホテルの客を待っているのだ。
そんな人たちに私は声をかけて情報を集める。

この遺跡に行ける?
どのくらいの距離?
この時間までにホテルへ戻るとしたら何時に出発するのが良い?
どのくらいの金額で行ける?

などなど。
夜の遊び場へは行かないけれど、明日の早朝に来てくれないか?と交渉をしておく。どこへ行くかは話を聞いた中から考えておくので、明日よろしく!と。
色々と話を聞いてみて、良さげなプランを練りながら夢の中へ落ちてゆく。

画像2

翌朝。日が昇る前に行動開始だ。
夜に考えたプランはホテルの朝食タイムまでの短い時間で1つ何かを楽しもうということ。それには比較的ホテルから近い場所が望ましい。且つ、ココならではの景色が見たいじゃないか。そう思って選んだプランはアンコールワットの日の出を気球から眺めるというものだ。
深夜に約束したおじさんは現れなかったので仕方ない。ホテルの前の道路で走っているトゥクトゥクを呼び止める。

・気球に乗りたい
・ここ(ホテル)を出発して、ここへ戻ってきたい。
・この時間までに戻ってきたい
・往復の送迎は可能?

現地の人にとっては美味しい金額だったかもしれないが、片道20分ほどの道のりを往復で日本円で1000円いかないくらいで交渉が成立した。

画像3

早朝、窓のない乗り物で進むのは風がとても気持ち良い。
決して乗り心地の良いものではないけれど、とても楽しい時間だ。
(めちゃくちゃ揺れるので写真を撮るのも難しい)

画像4

まだまだお店もやっていないところが多い。
これも帰りには景色が一変しているのだろうな...。
アンコール遺跡郡のような、観光地として有名で行かなくても見たことがあるような場所はそれはそれで「ついに来たんだ...!」と、とても感動するけれど、異国の地に来ると、こういう日常の景色が刺激的で印象に残る。
なんとなく私はその場所の雰囲気や空気感を体験できることが好きなのかもしれない。

画像5

アンコールワット遺跡群に近づくと...あっ!気球が見えた!
俄然テンションが上がっていく。

画像6

アンコールワットを横目に目的地の気球乗り場へ向かう。
この時のシルエットが美しすぎて言葉が出なかった。
そうこうしているうちに時間は過ぎ、気球乗り場に到着だ。

画像7

乗り場の前には猫ちゃんが寝ていた。
なかなか落ち着いてどっしりとそこに居たので、どれだけ私が近づいても逃げることなく、堂々としている猫ちゃんであった。

画像8

さあ!いよいよ気球へ乗り込む時が来た。
人生2度目の気球である。私以外には人はいない。これは上空で気球の中を行ったり来たりできる最高の状況だ。
ゆっくりと気球は上がっていった。

画像9

おー!綺麗じゃー!
空の上から眺めるアンコールワットはとても美しい。

画像10

高度が上がるとアンコールワットが森の中に存在していることがとてもよくわかる。四方を堀で囲われていて、堀には水が張られていることも。

ここに見えるアンコールワットという寺院は12世紀前半にスーリヤヴァルマン2世によって建てられたもので、ヒンドゥー教最大の寺院としてアンコール遺跡群の中でも一番有名なものだと思う。
(世界遺産にはアンコール遺跡群として登録されている)

アンコール遺跡群はアンコールワット以外にも、アンコールトムとかバイヨンとかバンテアイスレイとか...数多くの遺跡がかなり広範囲にあって、ベンメリアという遺跡のように全貌が未だ分かっていないものも存在している。
空から眺めることで見えてくるものもあるのだなぁってとても感動した。

画像11

気球の中で流れるのんびりとした時間はとても心地良かった。
日差しを浴びて、風を感じ、大地の匂いを嗅ぐ。
遠く日本から遥々ここへやってきていることが不思議なような気分にもなった。
10分程度の短い時間だったのに、とても充実した時間として感じることができた。
空の上からだと空港も見えたし、ホテルのある場所もあの辺だろうと位置関係も把握できた。これで迷子になっても大丈夫な気がする。

画像12

降りる時、地上に気球の絵を見つけた。割と大きい。
ナスカの地上絵のようで嬉しい。なんか得した気分だ。

画像14

街はもうすっかり朝である。
屋台もたくさん並んで活気も出てきていた。

画像15

すでに気温は30度を超えている。生暖かい風に吹かれながら今日もきっと素晴らしい日になるとワクワクする。

画像13

私を案内してくれたおじさん。
この時期はカンボジアで日本人がカンボジア人を殺害してお金を奪うという事件があった直後であった。そんな中でもとても優しく、言葉が通じないのに身振りや指差しなどで色々と伝えようとしてくれて優しいおじさんだった。
本当にありがとう!(オークン!)

あっという間の1時間弱の小さな探検であったけれど、最高に楽しかった。
スタート時はくたくたで重い身体だったけれど、気持ちがリフレッシュできたことで不思議と身体も軽くなったような気がする。
この日、私はこの後にシェムリアップから40キロほど離れたバンテアイスレイ遺跡を見てから、空路ベトナムへと渡った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?