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エール

朝7時30分

登校する子供達の声がする

上級生が先頭に立ち
黄色の帽子の一年生を挟むように
一列に並んで歩いていく
ピカピカのランドルが朝日を浴びて
光っている

子供の数が減り
一時期、全くといいほど子供の声が聞こえて来なかった

毎年、少しずつ
登校班の人数が減り
一年生がいない列の時期もあった

長女の頃は子供達が多く、登校時間になると
あちらこちらに、いく筋かの列ができた

車通りの多い交差点
親が順番で旗振りをした

おはようございます
元気に声かけてくれる子もいれば
声かけても返事をしてくれない子もいた

下の子をおぶって旗振りした事もある

ぐずる事なくお兄さん、お姉さんをニコニコ笑いながら見送っていた

あちらこちらで止められるせいか
朝から不機嫌な顔のドライバーさん

ニコニコ笑ってくれるドライバーさん

列の先頭の班長さんが渡りきる
頭を下げてありがとうございました!というとその後を下級生が真似をして頭を下げる

列によっては
せーの!ありがとうございました!

列から離れた子が無事に横断歩道を渡るのを見届けて、旗をおろし、頭を下げる

8時20分
周りを見渡し、子供達がいないのを確認して帰宅する

そんな生活を12年続けた
お子さんの多い方ならもっとされたのだろうけど。

今は車の送迎を増えたし
信号機もついた

子供達が卒業して、数年後、たまたま、通学路を通ったが、子供の数はまばら…

家の前を通る子供もいなくなった

それが、ここ2〜3年で子供の声がするようになった。

毎朝、子供達の声が聞こえてくると
「朝」がきた!
そんな気がする

子供の声がうるさい!
確かに、子供の声は大きいし、響く。

子供達を育ててる間は私もそう思っていた。

だけど
子供達の声が聞こえない町は
寂しくて
元気がなくなる

この年になって
やっと気づいた
私が元気だったのは、子供達から
「エール」をもらっていたのだと。

すぐ悩んで落ち込む私に
そんな時間を与えないように
動き回れるようにと、試練を与えてくれたのだと

そして
子供達が運んでくれたのは元気だけでなく、
人との繋がり。狭い世界から引っ張り出してくれた。

子供が大人になるためには
たくさんの段階を踏まないといけない
その階段は私が経験したものとは違い、
戸惑う。だからこそ、一緒に悩み、苦しみ。
そして、それが親である私にとっても、貴重な体験になる。

子供は手がかかるだけでなく、
何かを与えてくれる大切な存在。

黄色の帽子の一年生が
これから、どんな成長をするのだろう。
この子の親はどんなふうにこの子と接していくのだろう。
この子がよりよく成長できますように。

なんてことを
ベランダで洗濯物を干しながら
思った。

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