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パリと京都の往復書簡 パリの日本食事情

フランスにいた頃、よく日本食が恋しいでしょう、と言われました。一時帰国すると、こぞって皆さんがお寿司をご馳走してくれました。(ありがたい。。。)当時の皆さんには言えませんでしたが、日本の味は意外と工夫して食べていたんです。今回はそんなパリでの日本食事情のお話です。

在仏で見つけた、日本の味。 ◀︎ヤマダ@KYOTO

突然ですが、パリに住んでいた頃、日本からのお土産としていただいたものランキング。
1.うどんだし
2.カレー粉
3.お茶

でした。
とてもありがたかったです。
訪問が重なると、たっぷりとストックができて、留学生同士で分けたりしました。

私が住んでいた頃、ちょうど大葉のタネが友人同士でシェアされていました。しそ味に目がない私は、せっせと小さな植木鉢にタネを巻きましたが、あいにく、日当たりが悪い我が家では芽は出ず。ある時、南仏のマルシェで"SHISO"と書かれた大きな植木鉢を見つけた時には、売っているおじさんに「大葉」の素晴らしさを伝えるべく、興奮気味に話をしたのですが、おじさんは一言、「食べたことがない。」と。その大きな植木鉢、TGV(列車)で持って帰りたかったのを今でも覚えています。

最近、パリのバターが我が家に届きました。もちろん送料やら何やら、、、コストはかかりますが、パリのバターが手に入るのか、と感慨深いものがありました。今はせっせとバターに合うバゲッドを探して、パン屋巡りをしています。

さて、意外と日本の皆さんには知られていないけど、海外在住の方が工夫している日本食、ありますよね。

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お酢の代用はシードル酢。 ▶︎ カネコ@PARIS

そうですね、我が家はほとんど外食をしないので、家でできるものは作ります。日本食も、材料はできるだけこちらで手に入るもので作るようにしています。

例えばお寿司を作るのに、酢飯や魚を〆るためのお酢は、シードル酢を使います。ほんのりとりんごの甘い香りがしますが、邪魔にならず結構イケます。実はこのテクニック(というほどのものでもないのですが)、父の転勤でアメリカで生活していた頃、母がやっていたことなんです。

90年代のアメリカ中西部の田舎町には、まともな日本食レストランなどあるはずがなく、車で1時間圏内に中華系の食料品店が1−2軒ある程度でした。たまに駐在員家族で集まったり、地元の人たちを招待して日本食を振る舞うには、材料を探すだけでもかなり厳しい。

生で食べれる魚はサーモンとヒラメ(カレイ?)くらい。それも近所に新しくできたスーパーの魚売場の人が日本人である母に声をかけ、魚の扱いに関して相談されたことがきっかけで、やっと手に入るようになった、ぐらいの状況だったのです。

お金を出せばニューヨークあたりの業者さんから送ってもらえるのに、工夫と力技でなんとかしようとしていたのは、母の主婦としての意地だったのでしょう。ホームパーティを開くとメインとなる握り寿司は、当時高校生だった自分や小学生の弟、家族総動員で大量に握ったのを覚えています。

あの頃と比べれば、今のフランスなんて恵まれたものです。種類の豊富さは日本には遠く及びませんが、生で食べられる魚(多少の慣れと目利きは必要)も手に入ります。最近は味噌、納豆、日本酒など、フランス産も出回るようになったため、買っている輸入物は醤油くらいで、あとはできるだけこちらの食材でなんとかします。

数年前からは妻が味噌を作るようになりました。フランスでは大豆を食べないのですが、オーガニックショップで安く手に入ります。ゲランドの塩、カマルグの米で麹を作れば(麹菌だけは専門業者から入手)、Made in Parisの味噌ができます。まさに手前味噌ですが、かなりイケます。

他にもひよこ豆や黒豆など色んな豆で仕込んで、1−2年後に味をみる時のサプライズ感も楽しみの一つです。もちろん失敗することもありますが。


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パリで新鮮な魚を手に入れる。

週末に子供に何を食べたいかと聞けば、たいてい「おすし!」と返ってくるので、土曜の朝はマルシェで魚を仕入れることがルーティンになりました。季節によりますが、タイ、マグロ、サーモン、サバ、アジ、イワシ、ホタテ、イカなどは寿司ネタとしてよく使います。

自分でさばくのが苦手という人にはフランスが誇る冷凍食品店、Picard(ピカール、2016年に日本進出)がおすすめ。こちらの魚、なかなか良いのです。新鮮な状態で急速冷凍しているため、下手な生魚よりも実は身質が良いと、料理人の友人から聞いて以来、マルシェで魚が手に入らない時に利用しています。

特にサバは既に冷凍されているので、アニキサスの心配もなく、鯖ずしを作るのに重宝しています。マグロもステーキ用にカットされているのがちょっと残念ですが、漬けにして表面を炙り、切り方を工夫すれば握りに使えます。

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限られた食材で工夫するのは海外生活の醍醐味だとも思います。単なる代用品ではなく、新しい味が生まれる時があり、時にはオリジナルを超えることもありますから。

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