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雑想・情報の距離感
そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。
少年の頃に読んだ、という世代は少し年嵩の方だろうか。江戸川乱歩不朽の傑作『怪人二十面相』の書き出しである。
この本が刊行されたのが昭和11(1936)年。日本が二・二六事件に揺れ、東京の電話加入数が15万ほどだった(平成27年度は250万弱)。
そんな時代にあっても、噂や事件の注目度を示すのはやはり、人口に膾炙したか否かである。今でもこの書き出しのようにして、話題に上るコンテンツは珍しくない。
昔と今で大きく変わったののがある。情報の量だ。二十面相は発表から26年に渡り、少年たちの耳目をさらったが、今や7日経てばニュースは褪せてしまうらしい。
本稿を書いたそもそもの理由は、ゲームクリエイター松山洋氏のエントリに少々驚いたからだ。
[第28号『TOKIO山口メンバー』の消費期限|松山 洋|note]
記憶に……いやさ、少なくとも私の記憶には新しい、かのアイドルグループのメンバーが起こした事件と、それに影響を受けて広まった小ネタが、既に若者の間では『古い』とされているというのだ。
無論一個人の意見ではあるが、興味深いことに変わりない。松山氏はひとつの結論を見出したらしいが、その委細は上記の記事をご購入の上ご覧いただきたい(軽く宣伝)。
この話を読んで、私も強く思うところがあった。こと近年、情報の「距離感」が加速度的に早まっている気がするのだ。
その感覚を少し感じてもらうため、ここでクイズを出しましょう。
第1問・今年1月、各地で晴れ着が着られない新成人が続出する事態の原因となった、振袖販売やレンタルを行っていた会社の名前は?
さて、あなたはすぐに答えられただろうか?
この稿を打っている今現在、まだ半年も経っていないできごとであるが、私自身も気持ちの中では「あったなぁ」率がかなり高い話だ。
ここでもう一つクイズ。
第2問・将棋の藤井聡太六段(現在)が、デビュー以来29連勝という新記録を樹立したのはいつ?
相当頭をひねっておられる方も多いのではないだろうか。
あまり引っ張っても芸がないので正解を披露しよう。
第1問の答えは『はれのひ』
第2問の答えは『2017年6月26日』
よもや第2問で今年と答えた方は……ねぇ(^^;
こうした情報と今の自分との距離感のズレは、いったいいかにして生まれるのか?松山氏にならって私なりに思索してみたい。
分進秒歩の現代社会、その起因は他ならぬ、情報を捉えて伝える手段の発展に他ならない。新聞が唯一の広域媒体であった頃とは比較にもならない、すべての人が放送局を持ち歩く時代である。世界で生産され蓄積される情報は、1秒あたり何GBになるやら、計算する気も失せる。
そして我々は、そうした機器を使いこなす(ことをある程度強要される)世代である。さらに若い世代は、アナログ時代の先入観を微塵も持たずに、これらの機器と接している。
つまりあなたが(30代以上の現役世代と仮定して)今処理している日々の情報とその量は、あなたが青年期に接し処理した情報量と大差がなく、経験によってそれを効率化最適化しているにすぎない。
またこの差には、世代差のみならず性差も関わっていると考える。
乱暴な言い方になるが、男性と女性は脳の作りが違う。例えば、ラジオを聞きながら雑誌をめくってみてもらいたい。男性はどちらかしか頭に入らず、女性は両方入ってくるらしい(確認した人が少ないので断言はできないが)
またこれも、論証に入れるには少々曖昧な話だが、男性はできごとを社会につなげて記憶し、女性は自分につなげて記憶するという。
クイズにあげた二つのできごとを思い出そうとした時、同時期に起きた事件からリンクしようとしただろうか?それとも自分が何をしていたかを思い出していただろうか?これも男女によって差が出るらしい(以下同文)
まとめよう。私の仮説はこうだ。
世代ごとに感じる情報の摩耗速度の差は、その世代が経験した情報の生産と処理の練度と、生理的差異によって生じる「距離感」との差である。
ない頭を働かせながら書いてしまったので、またとりとめのない文になってしまったが、人は皆そんな大人になるしかなくて、そんな大人としてたたかうのだろう。
拙文の悪足掻きに、親やひいては年長者の願いを湛えた歌を添えて終わる。
父として 幼き者は 見上げ居り ねがわくは 金色の獅子と うつれよ
(佐佐木幸綱)
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