つつむもの、つつまれるもの

 先日、小さな宴席への手土産にと日本酒を買った。下戸なので銘柄に詳しくはないが、見栄えと値の少しいいものを選び、お店の方に包み紙で丁寧に包んでいただいた。
 酒と同じ名の入った白い包み紙に、ひとつひとつ丁寧に包まれていくにつれ、中身の酒が少しづつ美味しそうになっていく気がした。席に出した際の周囲のリアクションも上々で、いい買い物をしたと満足した。

 新元号の発表に接して感じたのはそれだった。元号とは、この国の包み紙のようなものだな。と。
 必要不可欠かと言われれば、西暦が主となった今の社会ではさほどでもなく、かといって、なければないでどこか寂しく落ち着かない。中身が良いものであれば、その価値をそっと引き立てるが、中身がいびつなものであれば、その不出来を隠せるほどの器用さは持てない。

「平成」が発表された日、私も含め眉を曲げる人が多かったように思う。はじめて出会う言葉だったせいもあるだろう。いずれ馴染むのだろうかと思った。三十一年経った「平成」は、激動の日本を包み育んだ言葉と呼んで疑いあるまい。
 それまで漢文などから引用されてきた元号であるが、今回初めて和書(万葉集)から引用されたのも話題となった。命令や令状の令を連想して、やや威圧感を感じてしまいそうだが、この令は令月(何事をするにもよい月)の令だという。これからは通年令月となるのだろうか。
 令の字には他にも、りっぱな(令名)や、敬称(令嬢)の意味もある。日本を表す和の文字と合わせ、立派で敬われるような時代が来るだろうか。
 東京五輪も近く、ますます世界から注目を浴びるであろう日本。国と同じ名の入った新しい包み紙は、外の国の人にどう映るだろう。

 令和。口に出すと、やはりまだどこか余所余所しい。これからゆっくり馴染んでいくとしよう。一年一年丁寧に包まれながら、少しずつ美味い国になるといい。


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