Thingsって何の会社なの?
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Thingsって何の会社なの?

鈴木敦也@Things | PRISM

12月3日に配信されたプレスリリースの通り、ThingsはANRIよりシード出資を受けて出発しました。

Thingsは製品開発プラットフォーム「PRISM」を開発する企業です。2021年の9月に設立したバリバリのスタートアップですが、今だからこそ、むしろ今でしか書けない事があるのではと思い、その熱量を記録しておくことにしました。

この会社でやっていきたい事や、アンカーになっている自分の原体験を言語化することで、将来の仲間や自分自身の拠り所になったら良いなと思います。

なんで会社を作ったのか

雑に言えば「良いハードウェアが沢山生まれる世界にしたいから」です。「製造業の負を解消する」とか色々カッコいい言葉を考えていたのですが、半分は自分の欲望のために起業します。

元々形のあるモノが好きで、物欲のままに色々買っていた時期があります。特に好きなモノは電子楽器で、人間のクリエイティビティをブーストする為に設計されたあの形状やユーザビリティが好きです。

名機OP-1。手に馴染む感じが良い

ロケットエンジンも「宇宙に飛翔体を飛ばす」というただ一点の為にこれだけ複雑な構造になっている点に美学を感じます。

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LE-7A(H-IIA/H-IIBロケット用第1段エンジン)。MHI製

挙げだすとキリが無いのですが、人類がメタバースに完全移植でもされない限りハードウェアは人々の生活を支え、彩を与えるものである事に間違いありません。そしてそれらを作る職人が存在します。

モノづくりの現場で感じた事

そんなハードウェア好きな自分は大学で機械工学科に進み、新卒入社した三菱商事では機械グループに配属されました。(尚、配属希望の際に第1〜第6希望全てに「機械グループ」と書き、人事の方に怒られました・・)

1) 三菱商事時代

ここではプラントEPCを担当していました。途中ドバイ駐在の機会に恵まれ、重工メーカーが砂漠にゼロから鉄道を敷く現場に身を置くことができました。そこで見たものは最大約2万人/日もの人が従事する工事はダイナミズムと、日々生み出される大量のドキュメントの整理に忙殺されるエンジニアの姿です。

インフラ案件はマイルストン方式で支払われることが多く、請求のためにエビデンスが必要です。きちんと証票を揃えないと支払いを受けられない為、契約者のキャッシュフロー悪化に直結します。大規模工事における正確なエビデンス作成は膨大な関係者からの正確かつタイムリーな情報収集を前提としており、日々ドキュメントの整理・共有と格闘する事になるのです。

2) Pioneer DJ時代(現AlphaTheta株式会社)

その後入社したPioneer DJではDX推進担当者として電子楽器の企画、設計、上市までの流れを俯瞰しながらデータの利活用を推進していました。企画が司令塔となってコンセプトを掲げ、そこから設計→開発→生産とバトンが渡されモノづくりが進んでいきます。特に上流の設計段階におけるミスは後の工程になればなるほど大きな規模で損失が顕在化し、最悪の場合リコールに発展します。長いサプライチェーンの中で情報を正確に受け渡す仕組みを整備する事で非効率な生産や、部品の共有化を図れるため原価低減に大きく寄与します。

情報管理の重要性は多くの職種に通ずる所ですが、ことハードウェアに関して特筆すべきはその量とフォーマットの多さです。3次元の形を持つもの関して関係者が同じ理解を得る為には、図面、CAD、部品リスト、原価、変更履歴、仕様、テキスト情報など、多くの情報を効率的に管理する必要があります。

特に製造業はここ2年コロナ禍による工場閉鎖、半導体不足、そして最近では部品不足などの深刻化により、製品が計画通りに作れない状態が続いています。こうした際に事態を迅速に把握し、代替案をスピーディに検討する為にはサプライチェーン全体で情報収集が行える仕組みを日頃から整備する事が求められる背景があります。

製造業DXを阻害するいくつかの要因

上記をデジタル技術を用いつつ実現する事が、広い意味で製造業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)と解釈しています。DXがバズワードになって久しいですが、この言葉の裏にはもっと素朴にして粗野な風景が広がっています。製造業DXではIndustry 4.0、デジタルツイン、IoTに関する欧米の成功事例が語られがちですが、こと国内に関しては以下のような歪さが存在します。

1)特定部署に閉じたデータベース(サイロ化問題)

日本企業には部門横断的に情報システムを統括するCIOが少なく、システムの要件定義は各事業部に委ねられます。各事業部が特定のベンダーと開発を進めた結果、事業部に最適化されたデータベースが沢山出来上がります。一方で近年はIoT機器の増加や情報技術の発展により、製造業が保有するデータ量は飛躍的に増加しています。この中でデータ連携ニーズは生まれますが、その開発を行う為の費用が高額で断念する事が多いのです。

2)複雑すぎるITガバナンス(と過度なSIer依存)

多くの国内メーカーはシステム開発をノンコア事業と捉え、業務システムの開発をSIerに依存してきました。以下の円グラフは日米のエンジニア内製化率の差です。

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出展:日本と米国の情報処理・通信に携わるICT人材 - 総務省を元に作成

メーカーの業務システムはSIerによって導入され、ソースコードもSIerの手元にあります。すると現場でデータの活用方法を思いついても、まずはIT部門に相談し、IT部門はSIerに見積もり依頼をし、見積もりを取得してから社内稟議を通す・・という悪夢の様なプロセスが待っています。現場の担当者はせっかく良いデータの使い途を思いついても「そんなに大変なら・・」と引き下がってしまいます。これがメーカーでDXが進まない典型的なパターンです。異なるSIerを束ねて一つのプロジェクトを完遂させるのは至難の業ですし、そもそも社内にその人材がいないから外注している訳です。

3) 技術的負債

製造業システムの多くは古くから(パッケージソフトが普及する前から)存在し、多くは自社に最適化されています。するとパッケージソフト導入の際は既存システムと整合を取るためにカスタマイズ対応が必要になります。こうしたカスタマイズはアップデート時に更なるレトロフィットを必要とし、雪だるま式にアップデートの対応工数が増加します。すると軽微な変更でも多額の開発費用がかかる事態となり、業務に合わせて進化していくべきシステムはアジリティを失い、已む無く手入力やエクセルによるデータ入力の補完が発生します。

色々思うことは尽きないですが、特に中小企業ではIndustry 4.0だのデジタルツインだの以前に、にっちもさっちも行かなくなった生産システムを刷新するのが先だと言う声も多く、メディアに登場するDX事例と現場の間に大きなギャップを感じます。

※尚、上記の様な問題は2025年の崖と呼ばれ、経産省が警鐘を鳴らしています。製造業に限った問題ではありませんが、オンプレのレガシーシステムをクラウドに乗り換えていく機運は2022年〜2025年にかけて更に高くなると考えています。

「あうんの呼吸」をアップデートする

この中でハードウェア版のSalesforceがあってもいいんじゃないの?という様な事を考えるようになりました。

ハードウェア開発は社内外含めた多くの関係者の、高度な連携の上で成り立っています。昔のように設計と生産が同じ工場で完結し、全ての情報伝達が紙で行われる世界ではあうんの呼吸でことが運びます。しかし、分業化や多拠点化が進んだ現代において離れた相手の機微を感じ取ることは難しく、人間の能力であうんの呼吸を維持することはもはや困難なほど複雑化した世の中です。

一方、ビジネス側ではSalesforceやGoogle Workspaceなどのクラウドサービスの登場で働き方が大きく変わりました。オフィスにいなくても必要な情報にアクセスでき、最新版のファイルを探して彷徨う回数も激減しました。何よりも関係者が同じ景色を共有しながらデータで会話をする機会が増えました。これこそモノづくりのプロセスにも必要なアップデートされたあうんの呼吸だと思うに至ったのです。

PRISMが目指す世界

PRISMはハードウェア開発における一元的なタッチポイントとして、部品表(BOM)や図面/CAD、設計諸元などの設計データから原価・在庫情報、受発注までをクラウドで一元管理できるプラットフォームを目指しています。

「モノのデータ」が各部署に最適化されて出ていく概念がプリズム

現時点ではステルス気味に開発しているため詳細は割愛させて頂きますが、PDMや生産管理システムと呼ばれる領域のプロダクトです。特徴としてはPRISMはこの2つの境界を限りなく曖昧に捉えている点です。業務フローの各ステージで生成されるデータは根っこでつながっているべきという思想でプロダクトを開発しています。

モノづくりに関わるあらゆるデータ(=私たちが「モノのデータ」と呼ぶもの)を誰もが自由に保管したり共有することで同じ景色を共有し、製造業が再びあうんの呼吸を取り戻す世界を目指しています。

誰のために作るのか

冒頭で良いハードウェアに囲まれたい自分の欲望について書きましたが、ここに残り半分の「それを作る人たちの負を解消できるかもしれない」が加わった時、起業を決意しました。

自分のキャリアを振り返ると、現場でエンジニアと喧々諤々言いながら最高のモノづくりを目指していた時が一番楽しく、印象に残っています。関わった方がバイネームで思いつくので、その人たちのためにプロダクトを作ろうとしている側面もあるかもしれません。

私自身はお弁当の配達からプラントEPCの契約交渉まで色んな仕事をしてきましたが、どこでも同じ位大変な思いをしました。職業関係なく、仕事をする以上は一定程度苦労が発生する仕組みになっているのだと思います。ならばその苦労が、より良いものを生み出す事につながる世の中であって欲しいと考えます。
製造業は構造的な要因から、個人の努力→結果の転換率が低い業界だと思っています。※諸説あります。

創業メンバー募集!

また、起業を後押ししたもう一つの嬉しい出来事が共同創業者との出会いです。結婚の僅か2カ月前に起業にジョインするという、人生の超重要タイミングにこの事業を選んでくれた中々のリスクテイカーです・・

ハスラーとエンジニアの組み合わせなのでお互いに出来る事がほぼ被っていない一方、製造業という広く深いドメインに対して真正面から真摯に向き合える小さなチームです。お互いに複雑な事象を前にしてもすっ飛ばさず、丁寧に解いていくカルチャーがあると思います。また副業メンバーも複数名おり、創業期のカオスを(良い意味で)共有しています。

製造業向けのSaaSは数多くありますがPRISMはモノづくりのプロセスそのものに影響を与えます。「製造業で働く人の時間=労務費」という極めて大きなリソースへアプローチする事業です。影響範囲が大きく当然一筋縄では行きませんが、製造業という巨大産業の、本質的な課題に正面から向き合う面白みのある事業だと思っています。

少しでも興味を持って頂けた方は、こちらからアプローチして頂ければ幸いです!

最後に

あまり普段長文を書かないので拙い文章になってしまいましたが、折を見てまたnote書きたいと思います!発信大事。

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鈴木敦也@Things | PRISM
Things代表 / 三菱商事→bentojp→Pioneer DJ→FOVE→Things。製造業向けのクラウド型製品開発プラットフォーム「PRISM」を提供。