今更しか書けない…遠い夏の日の思い出…
・#夏の想い出note
上記企画に参加させて頂きます。
・期限は8月31日いっぱいまで(夏休みの宿題と同じ)
宇宙RIRAさん企画?
スミマセン…どうも企画に弱い…さいとうT長
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今更しか書けない…遠い夏の思い出…
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「今度、花火大会行く?」別れ際に声をかけると「うん!」と笑顔の彼女が振り向いた…。
大学時代、プロポーズしてから入社し神戸へ引っ越した。
彼女とはマンドリンクラブで知り合って2年の付き合い。
違う大学だったが、同じギターで二人ともトップの役割。
合同演奏などで、しょっちゅう一緒。
しかも、家が近く。
大学一の美人。
町を歩くとみんな振り返るような子だった。
せめて長の役になってから結婚しようと思った。
休みのたびに行ったり来たりしていたが、さすがに仕事も忙しくなり手紙のやり取りが多くなっていった。
手紙は毎晩書いて翌朝出そうと読み返すと、とても恥ずかしい内容で出せない…。そのたびに書き直して結局なかなか出せない。
夜に書くと、どうも思いが募りすぎるのだ。
彼女が神戸に来た時などは、知り合いの店の子達に「今度、彼女を連れて来る」などと言ったもんだから、わざと店の前に店員が並んでお出迎え。恥ずかしいのなんのだったが、彼女はとても嬉しそうだった。
そして新幹線での行き帰りは、当時流行った…あの山下達郎の曲に乗ったテレビ宣伝そのままの情景を当たり前に広げていた。
六甲山へのドライブ…芦屋の美味しいパン屋…ぶらぶらと歩く芦屋川…。
全ての楽しい思い出が、そこかしこにばらまかれいった。
**
それが、
神戸へ行って2年後、突然来るという。
さいとうくんは寝てた。
部屋に入るなり彼女は言った。
「さいとうくんテニス好き?」
「するけど好きほどでもない」
何か決めてから来たようだった。
「会うの今日で最後にしようと思うの」「え…?どういうこと…」
「好きな人できたの…。さいとうくんがテニス好きならわかんなかったけど、もう決めたの」
ボーっとした頭ですぐに理解できなかった。
「…。結婚するって言ってたやん」
「もう待てないの」
彼女は「元気でね」と言い残し、振り向きもせず家を出て行った。
後を追いかけたが声はかけられなかった。ただ振り向くのを待ちながら遠く離れて歩いた。
振り向いたら話そうと思って歩いた。
芦屋川に沿った駅に続く一本道。
彼女はさいとうくんが後ろをついてくるのをわかって歩く…。ただ「来たらだめよ」というのは歩き方から十分感じられた。
そして15分後、芦屋駅に着いた。
彼女は切符を買い無言で振り向かずホームへ向かう。
その後はもう見なかった。見れなかった。
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次の日、行かなきゃいいのに仕事に行った。
落ち込みまくって仕事にならない。
会うみんなが、
「どうした?」と聞いてくる。
励ましてくれたり、慰めてくれたりしたのだろうが…、
なにも覚えてない。
誰かが上司に言ったんだろう。
仕事場で抜け殻のように死んだ目をして立っていた時、上長の吉沢さんに掠れた声で聞かれる。
「さいとう、どうした?」と、席を変えて話しを聞いてくれた。
「いや、結婚しようと思ってた子にフラれまして…。ま、しょうがないんですけど、こっちも優柔不断でした」
長々と、色々相談に乗ってもらった後…、
「よし!さいとう、少し休め。そのままじゃ仕事にならんやろ?」「一人旅…。 雨に打たれてこい…!」
なんか軽く言われたような…。
軽く言われたことですぐ決断出来た。
「はい」と長い休みをもらった。
自宅に帰り、2日間泣きとおし。
それで終わればいいのに、実家に帰ってしまった…。
。。。。。。。
実家編
。。。。。。。
実家へ帰り彼女の家に電話した。
今のように携帯すらない時代。
親を通し会う約束をする。
しかも彼女の家で。
行ったときはもちろん、彼女も彼女の親もどうするかは決めていたに違いない。
そんな家の中へ、ただ辛く必死の思いのさいとうが行く。
たわいない会話をした後、
「ちょっと話しよう」と彼女を夜の道へ連れ出す。親は、さいとうが何を言い始めるか当然わかる。
さいとうは、彼女にしつこいふりを見せまいと話をはじめた。
「早く結婚しようか?」
「うーん、もう無理なの」
「なんで?」
「好きな人いるの。同じ職場の人なの。その人とテニスして楽しいの。あの時、さいとうくんテニスしないって言ったから、
もう決めたの」
彼女は決めるときは、考えを変えないことは知っていた。
でも、「なにそれ、絶対?あの時の約束はどうなる…」
惨めなしつこさはわかっていた…。
。。。。。
暗闇から
。。。。。
そんな時、
暗い道からヤンキーらしき男が近づいて来た。
「おい、しつこいのぉ。アネキが嫌がっとろうが。おまえみたいなしつこい奴は嫌いなんや」と、拳をあげようとするのを「もう、やめて」と彼女が止めた。
「おまえんとこが、いきなり“釣書”送ってきたやろうが。どういうことや?」
わしらんとこと家柄が違ういうことか…?帰れや…!」
強い怒りにあふれた口調だった。返す言葉はない。
釣書…?どういうこと…?さいとうは知らなかった。
気まずさと怖さ、恥ずかしさで無理と諦めた。
「ごめん。元気でね…」
「うん…。さいとうくんも元気でね…」
どう帰ったか覚えてない…。
彼女とよく来た河原…。
デートもしょっちゅうここ…。
花火見たのもここ…。
自転車二人乗りもここ…。
全ての思い出がここにある…。
ふたたび頭は空洞となりながら、でも思い出しながら泣きながら帰った。
なんで親が“釣書”送ったか知らなかった…。
たしかに、急に彼女と結婚すると言い出し親とけんか。
彼女のことだけで、家のことなんかどうでもよかった。
親には良いようにしか言わなかったし…。
もちろん親は心配したのだろう。当たり前だと思う。
が、やはり理不尽に感じ帰って暴れた。
そしてまた、泣いた。
母親には謝られ、兄たちも急遽帰ってきた。
慰められても心には響かなかった。
もう仕事は無理かと思ったが、実家にいるわけにもいかず神戸へ戻る…。
。。。。。
死ぬ勇気はなかった
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思い出が…
。。。。。
そうだ…彼女のマンション踊り場で、ギターの二重奏もした。
その頃は上手だったにしても、住宅街のマンションなので今じゃありえないだろう。もう二度とない…目で呼吸を合わせる二重奏…。
どうしても…思い出してしまう…。
。。。。。。
神戸から京都…奈良
。。。。。
一人神戸にもどり、ちりばめられた色々な所に思い出ばかりさがす。
手紙なども当然捨てられなかった。
「もう少し休みください」
と伝え、気分切り替えるため京都へ行ったが…、京都は淋しさが募る。
ここは二人がいい。
奈良へ行った…。
一人でもいい街と感じる…。
なんか遠くまで見えそうで見渡せない街…。
ただただ…斑鳩の道をゆっくり一人歩く…。それだけで少しずつ心が落ちついてくる感じがした…。
自分を見つめることができるような…不思議な街。
まだあまり整備されていなかったので、
そんなに広い道ではなかったと思う。
一人の人が多かったと思うのは、ただ思うだけなんだろう。
「あの人も失恋したんかな」
「あの人も淋しいんかな」
など、勝手に思いながら歩く。
「たくさんつらい人おるなぁ」
一度彼女に言われたことがある…。
「さいとうくんは自分の思ったこと叶えていってるよねぇ」と…。
たかが、それだけなのに…
このほめ言葉を心の支えに「これからを生きよう…」と道を一人歩いた覚えがある…。
に参加…したつもり…
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