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23.03.12 子どもは意外と、話せばわかる

・農家さんから使わなくなったみかん山をお借りし、未就学児さんを預かってその敷地や周辺の山で遊ぶという活動を、「森のようちえん」という名前でやっている
みかんも自由に食べることができ、色づいた実はすぐに子どもたちの餌食になる

2歳の子が、みかんを取ろうとした
でもそこは、うちで借りている敷地ではなく、お隣の敷地
ここのみかんはダメだよ、あっち(借りている敷地)のにしようと言って止めたが、なんで!これがいい!と言う2歳児さん
そうだよなぁ、同じみかんなのに、この線からあっちはよくてこっち側はダメなんて、土地の所有者がどうとか、理解できないよなぁ
一応言うだけ言って、まぁ納得しないだろうから抱っこで強制連行しよう、と思いながら説明した

ここは幼稚園の畑じゃなくて、お隣のおじいちゃんの畑なの
これはおじいちゃんが、お店で売るために育てた大事なみかんなんだ
それを勝手に取っちゃったら、おじいちゃんは悲しいと思う

すると2歳児さんは真剣な表情で聴いてくれて、わかった、と言って、みかんを取らずに違う遊びへ走って行った

えっ!?ほんとに!?わかった!?!?なんで!?!?
私の方がパニックだった

・別の活動で、山の敷地をお借りし、親子対象の自然体験イベントをやっていたときのこと
牧場の前できーきーと甲高い大声を出している、小学校低学年くらいのちょっと多動な感じの男の子がいた
どうやら、大声を出すと羊が走り回るのがおもしろい様子
大声出したらダメだよ、静かにしてとお母さんが一生懸命伝えているのに、彼はテンションが上がってしまって全然言うことを聞かない

このままでは羊にストレスがかかってしまう
羊が弱ってしまったら、山を貸して下さっているオーナーさんに申し訳ない
私が注意しても子どもは聞かないかもしれないけど、お母さんが連れ出してくれるだろう
そう思って、彼に声をかけた

羊さんってね、とっても臆病な動物なんだよ
きみの大きい声って、きみは平気でも、羊さんにとってはすごく怖い音なの
今羊さん走り回ってるけど、楽しくて走ってるんじゃなくて、怖いよー助けてーって逃げてるの
だから、大きい声は出さずに静かに見てあげてほしいな

すると男の子は、えっ!そうなの!と目を丸くして、ねぇお母さん知ってる?と今聞いた話をお母さんに自慢げに披露し、すっと静かになった

えっ!?!?こんなすんなり!?!?!?
お母さんも感激されて、子どもにもわかるように説明してくださってありがとうございます…!さすが(子ども相手の仕事だから上手)ですね…!と言われた
いや、私もびっくりしています

・フリースクールで食事中にYouTubeを見る子がいた
食事中はやめようと伝えても、嫌だ!なんで!と言って聞いてくれない
私はやめさせたかったが、他のスタッフは、別にそこまでこだわらなくてもいいんじゃないですか、自分もよくやっちゃってるしと言う
いや、やっちゃうことはあるかもしれんけど、やって当然ではなくない…?

最初に思いついた理由は、みんなのタブレットが汚れるから
すると彼は次の日にマイタブレットを持参して、自分のだからいいでしょ!と言う
いや自分のでもダメだろ…となり、あっ、理由はそこじゃなかったのかと気付き、じゃあ私は何がこんなに気になるんだろうと改めて考えた

世の中には食事中のテレビもダメという家庭もあるが、私はテレビは気にならない
でもYouTubeは嫌だ
1人で食べているときにYouTubeを見るのはいい気がするけど、友達や恋人と一緒に食べているときに見るのはよくないと思う
でも、みんなにも見せるなら、内容(テレビ番組かYouTubeか)や端末(テレビかタブレットか)が何であれ、OKかなと思う
なぜだろう?

そうか、私はみんなで同じものを見られるなら気にならないんだ
みんなで食べているときに1人だけ違う世界に集中されるのが、こちらの存在を無視されているようで嫌なんだと、やっと自分の答えにたどり着いたのだった
そして、それを子どもに伝えたら、渋々ながらもやめてくれるようになった

・子どもに何かを注意するとき、理由を説明しようとすると、自然と自分との対話になる
私はなぜこれをやめさせたいのか
やめなかったら何が困るのか
何ならやってもいいのか
やってもいいこととやめさせたいことの違いは何なのか
なんだか哲学みたいだ

理由を言って反論されることもある
でも、そこで屁理屈言うなと突っぱねるのではなく、もう一度自分に問い直すことが大事だと思う

自分の感覚の根っこを辿っていく過程や、その先にある自分の思いを発見するのはけっこうおもしろい
思考停止で「ダメに決まってるでしょ!」と言い続けるより、ずっと

・子どもって、大人が思っているより、話せばわかる
でも大人はついつい、早くやめさせなきゃと焦ったり、どうせ言ってもわからないから、聞かないからと、諦めたりする
そして理由を言わずに「それはダメ」「こっちにしなさい」「あっちに行こう」とだけ伝える

そうすると子どもは「嫌だ!」「なんで!」「こっちがいい!」となる
そして大人は、やっぱり理由は説明せずに、「ダメなもんはダメ」「そういうルールなの」「いいから行くよ」と返す
確かに、なんでこれはダメであっちならいいのか、説明もなしに強制されるのは理不尽だよなぁ

もちろん1回わかったからと言って次から一切しなくなるわけではない
しばらくするとまた同じことをやる
でも、大人もまた同じことを説明して、何回も繰り返していけばいいと思う
繰り返すうちに、少しずつそれが「その子の感覚」として身に付いていくのだと思う


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