電子書籍アクセシビリティにおける頭字語(略称)の表記
こちらの記事は、私のサイト"#a11yTips: Webアクセシビリティ・情報バリアフリー " で2017年2月3日に公開済のものを転載しました。なお文末形式を整えるため一部修正しています。
なお文中に昨日とある部分は、noteでは2018年4月20日に公開済のページです。
過日発刊された『電子書籍アクセシビリティの研究』において、音声読み上げを優先させて本来の書き方までも変えてしまった話(平たく書くと、こうだよね?)を昨日(*)のblogに書いた。
合理的な配慮とは何か、を考えてみる~電子書籍のアクセシビリティ
twitter上での木達氏の公刊記念シンポジュウムに参加しての感想とか、blog「水底の血」を書かれているもんど氏とのやり取りは、木達氏がtogetterにまとめてくださっている。
『電子書籍アクセシビリティの研究』公刊記念シンポジウムに参加しての感想とか、 @momdo_ さんとのやりとりとか
その中で頭字語についての言及があり、私も『電子書籍アクセシビリティの研究』を拝読していて、もやった部分でもある。
確認: 頭字語について
学生時代に"NATO 北大西洋条約機構"とか"OPEC 石油輸出国機構"と社会科で覚えさせられた、あの略称を『頭字語(とうじご、英語ではacronym)』。
なお略語(abbreviation)は"IT"とか"WHO"といったもの。
頭字語には科学略語とかコンピューター略語とかいろいろある。
頭字語の説明については、もんど氏が2017年2月2日にエントリーされた
Re: 頭字語に空白文字を挿入することの是非とWebアクセシビリティ
で判りやすくまとめられている。
HTML4ではacronym要素とabbr要素というのがあって、某所でお仕事していた時はキッチリtitle属性に入れたりなんぞしていた。
なお、HTML5ではacronym要素は廃止され、abbr要素に一本化されたので(by wikipedia)先々リニューアルの時にはacronym要素を拾い集めて直さないとならなくなるのかな。ごめんね、後の人。予算の都合もあるし、実際はだいぶ先の事だと思う。
社会全体で共通認識されている表記を都度変えちゃうのかい?
もとい、頭字語とは読みが確定し、単語として定着しているものだ。だからこそ、ニュースなどでも使われ社会全体で共通認識されている。
ただ国によって読み方が違う頭字語もあって、NATOなんかは英語ニュースにチャレンジしていると"ネイトー"って聞こえてきて"はぁ?"と思ったりする。
これも慣れなんだろうけど。
因みにドイツ語圏はナトーでフランス語圏・スペイン語圏・ポルトガル語等圏では OTAN(オタン)と全く違う略になるそうだ。Wikipedia 北大西洋条約機構より
ただ、表記ではいずれもNATOもしくはOTANであり、"N A T O"とか"O T A N"とか書かないのは自明。
電子書籍ファイルの形式であるEPUB(イーパブ)は"Electronic PUBlication"の頭字語で、国際電子出版フォーラムのWebサイトでも視覚的にEPUBと表記されている。
頭字語であるEPUBを、音声読み上げがVoice Overでは正しく読み上げないからと"E PUB"(注 Eの後ろに、わざわざ半角スペースを入れている)と表記するのは社会全体で共通認識されている表記を一時的な都合で変更してしまうことになり、WebであればWCAG 2.0でいうところの原則・堅牢性にかかってくるのかと思ったのですがいかがなものか。
ガイドライン 4.1 互換性: 現在及び将来の、支援技術を含むユーザエージェントとの互換性を最大化すること。
Webアクセシビリティでの頭字語への空白文字
冒頭紹介した木達氏ともんど氏が、それぞれ頭字語に空白文字を挿入することについてblogで書かれているので、紹介する。
頭字語に空白文字を挿入することの是非とWebアクセシビリティ(木達氏「覚え書き」
Re: 頭字語に空白文字を挿入することの是非とWebアクセシビリティ(もんど氏「水底の血」)
木達氏も書かれているが、イニシャリズムは達成基準 1.3.2 の不適合事例に当たらないという認識は私にはなかった。例えばITで"I T"(注 IとTの間に半角スペース)という表記は避けてきたが、適合不適合だからでなくて、表記方法の慣習に依るところも大きいと思う。
小数点「.」を「,」と表記した時の視覚的問題点に関する追記
ところで、昨日(*1)書き忘れた。
このblogでも『電子書籍アクセシビリティの研究』でも、句読点は「、」「。」を使用しているが、横書きに関する句読点ってどういう表記法になっていましたかねという確認。
日本語の表記法による句読点、公文書では通達が出ている。
文化庁 国語施策「公用文に関する諸通知」 の中のPDFファイル公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕(昭和27年4月4日 内閣閣甲第16号依命通知)を確認すると以下のように記されている。
句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。(第3 書き方についての5-注2)
教科書も横書きの場合は「、」ではなく「,」を使用している。学術論文はそれに準じて「,」および「。」に統一していたり‥大学によっては「、」にしているところもあるようだが。
また、同じく「第3 書き方について」において「左横書きの場合は,特別の場合を除き,アラビア数字を使用する。」に続く注意書きとして
大きな数は,「5,000」「62,250 円」のように三けたごとにコンマでくぎる。
と記載されている。
一般的に「,」ではなく「、」を使うことが多いとしても、横書きの公用文や教科書は(大学によって違うと思いつつ、個人的には「論文」も)「,」および「。」に統一されているので(*2)、数字の区切り点との兼ね合いからもやはり小数点の表記に「.」ではなく「,」を使うのは誤解を避けるためにもNGではないだろうか。
今日の最後に
昨日(*)は「合理的な配慮」をフックにエントリーした。
この曖昧な「合理的な配慮」について、内閣府で事例集や障害者団体などで冊子を作るなどしているが、電子書籍のようなデジタルデータについて取り上げている事例を見つけられていない。
『電子書籍アクセシビリティの研究』公刊記念シンポジウムに参加しての感想とか、 @momdo_ さんとのやりとりとか を目にして、思うところがあった方は少なからずいらっしゃるのではないだろうか。それぞれのバックグラウンドによって見方や意見は当然あるはずで、(例え先々変わってもいいから現時点での)思うところがblog等で表されると、結果的には今後の電子書籍を含めたアクセシビリティの発展にも繋がると思う。この機にいろいろなご意見を拝見したいもの。ホント、今がチャンスだよ!!
[追記] 当初、『確認:頭字語について』でXHTML2.0でacronym要素がabbr要素に統一されると記載いたしましたが、 HTML5ではacronym要素は廃止されabbr要素に一本化されており、もんど氏が参考元のwikipediaを正してくださいました。それに伴い、私も修正させて頂きました。もんどさん、ありがとうございます!!
[追々記]もんど氏が「小数点『.』を『,』と表記した時の視覚的問題点に関する追記」について言及してくださいました。すごく為になりました。もんどさん、ありがとうございます(再び)!!
句読点とか小数点とかのメモ
言語によって小数点に使う記号が違うんですね。勉強になるなぁ。文中でご紹介頂いた、横書き句読点の謎(九州大学 渡部善隆先生)のお話しも面白い。なるほどなるほど。
*1 2017年に公開当時。なおnoteでは文頭にあるように2018年4月20日に公開済みの「合理的な配慮とは何か、を考えてみる~電子書籍のアクセシビリティ」をさしています
*2 横書き公用文でも「,」ではなく「、」もあり、混在していることは否定しません
(了)
ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド クライストチャーチ空港©moya
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