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色の見え方は"色々"

視覚障害を理解するために、昨日は視力のお話をしました。今日は色覚についてです。
なお昨日の冒頭にも書き記しました通り、私は医学の専門家ではございません。正確さに欠いている箇所がありましたら、ご指摘よろしくお願いいたします。

また医療関係の質問等にはお答えできませんので、例えば眼病等に関するご質問等は必ず、眼科医など専門家のかたの意見を伺ってくださいますようお願いいたします。

昨日のnoteで、"視覚"とは「ものを見る能力」のことで、視力、視野、色覚、光覚といった機能に障害があると視覚障害となると書いた。

日本生まれの色覚検査方法

「色覚」とは色を見分ける機能
この色覚機能(色覚特性の有無)を調べるために、健康診断等でカラフルな大小のドットの中に色や大きさを変えて数字が描かれた「色覚検査」をしたことがあるかと思う。

最も知られたこの方法は「石原式色覚検査表」といい、なんと検出率99%という。
1916年 (大正5年) に石原忍博士が徴兵検査用に開発したもので、いまだに改定され精度がアップしているという。株式会社半田屋商店が発行している。タイプがいくつかあり、国際版は平成25年に第38表版が出たそうだ。

(PDF)石原色覚検査表国際版 38表

蛇足だが、Amazonで色覚検査表石原氏色覚検査表Ⅱ国際版38表は18,596円でした。(何でもあるのね、Amazon‥)

海外でも使われていることを、石原氏ご自身が「色盲検査表の話」という短文の中で書かれている。なおこちらの短文は青空文庫にて、無料でインターネット上で読める。
※現在は色盲ではなく色覚と言いますが、一部色盲という表現が含まれています。元の文章そのままに引用していますのでご容赦ください。

色盲検査表の話 石原忍

石原式色覚検査表、または石原表とも呼ばれているこの方式には

・色覚異常がない人が読めて色覚異常がある人には読めない表
・色覚異常がある人と色覚異常がない人で違う数字が読める表
・色覚異常がない人には読めないが、色覚異常がある人には読める表

が含まれており陽性と陰性の両方が判断できる。これで色覚特性が一般型ではない(疑い)、となった場合は更に精密検査となる。

色覚の種類は5種類7タイプ

次に色覚の種類について。

人間の目の網膜には、2 種類の視細胞がある。

杆体(かんたい)‥暗いときだけ働く
錐体(すいたい)‥明るいところだけで働く

この錐体にはL (赤)、M (緑)、S (青)の3 種類があり分光感度(どのような波長の光を主に感じるか)が異なる。3 種類の錐体がすべて揃っている人がC型(一般型)の色覚だ。日本人男性の約95%、女性の99%以上を占めているとされている。このC型(一般型)以外には次のタイプがある。

P 型色覚(Protanope)
・3種の錐体のうち赤い光を主に感じるL 錐体が無い人(P型強度)
・L錐体の分光感度がずれてM錐体と似通ってしまっている人(P 型弱度)
D型色覚(Deuteranope)
・緑の光を主に感じるM 錐体が無い人(D 型強度)
・M 錐体の分光感度がずれてL 錐体と似通ってしまった人(D 型弱度)

色覚異常のほとんどはこの4 タイプなのだが、他にも次のタイプがある。

T型色覚(Tritanope)
・青い光を主に感じるS 錐体が無い人
A型色覚(Achromat)
・3 種の錐体のうち1 種類しか持たない人や、錐体が全く無く杆体しか持たない人

色の見え方は色々

このように一般型を含めて5種類7タイプの色覚があるのだけど、これ以外には目の疾患によっても色の見え方は変化する。また同じ型やタイプであっても、個人差がある。違う脳が、外界から受けた同じ刺激に対して、同じ活性が起こるとは限らない。

また、同じ人であっても違う見え方になることがある
例えば、明るい戸外でみたスマートフォンの画面と暗い室内でみた、スマートフォンの画面、また服やバッグなどの色の組み合わせ。朝は元気だった目も仕事で疲れて帰宅時には見えづらくなっているかも知れない‥。

色覚のタイプ別の色の見え方については、特定非営利活動法人 Color Universal Design Organizationのウェブサイトが詳しい。

労働安全衛生規則で労働者を雇入れたときには、雇入時健康診断をすることとなっている。かつてはこの項目に色覚検査があったが、今は廃止されている。仕事の内容によっては色覚が関わることから禁止ではないので、色覚検査を実施する場合は、本人に事前に仕事との関連を説明し了解を得る必要がある。

この厚生労働省 色覚検査廃止の周知用パンフレットに、色の見え方について判りやすい説明があるので引用したい。

ある色が「何色に見えるかは本人以外にはわかりません。
ある「色」について、多くの人はおそらく同じように見えているのでしょうが、他人の目で何色に見えているかは厳密にはわからないのです。
確実にわかることは、ある色を別の色と区別できるかどうか、ということです。
この観点から、区別のできない色の組み合わせがあるかどうかを知ることが、個々人の色覚の特徴について判断できる唯一の方法であり、限界でもあります。

カラーユニバーサルデザインという考え方

日本人男性の約95%、女性の99%以上が一般型のC型と前述した。P型・D型は、日本の場合で男性の約20人に1人、女性の約500人に1人。日本全体では320万人以上いるとされているが、ここに後天的な要因による人は含まれていないので、約500万人いると推測されている。(特定非営利活動法人 Color Universal Design Organizationのウェブサイトより)

自分の見え方=他人の見え方と思いがちだが、多様な色覚があることが判ると情報を伝えるときには、なるべく多くの人がその情報をとらえられるように利用者側の視点に立って使う色に配慮してつくることを意識できる。そのようにしてできたデザインをカラーユニバーサルデザインという。

またウェブアクセシビリティにおいては、色に頼った情報ではなくそれ以外の方法も提供することとなっている。(7.1.4.1 色の使用に関する達成基準)

一般的によくやりがちなのが、グラフの色わけだ。これについては長くなるので、また機会を改めてお話したい。今日は一番手っ取り早い「白黒で印刷して情報が正しく伝わるか考えてみる」というのだけお伝えしておく。
もし職場や学校など多数の人が目にする資料を作成する機会があれば、色だけで情報をつたえようとしていないか、カラー印刷ではなく白黒印刷にしたら意味が通らなくなるような箇所がないか、推敲時に見直してみることをお勧めしたい。

最後に、色覚補助ツール アプリ「色のめがね」を開発した浅田一憲博士の記事をご紹介する。色覚のタイプが一般型以外の人では色がどう見えるか、興味深い記事だ。

また、2013年のTEDxSapporoでの浅田氏講演へのリンクも併記する。(タイトルは英語ですが、講演は日本語です。)

明日は視野のお話をしたい。

(了)

ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド ダニーデン ©moya

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