自己紹介(+研究内容紹介)
研究者になりたい大学院生です。なかなかのモラトリアム人間です。
最近は研究の傍らでちまちまと絵を描いています。
専門は芸術工学になります。とはいっても、芸術の専門でも工学の専門でもありません。わかりやすい言葉でいうと、デザインになりますが、よく言われるような見た目に関する部分はほとんどやっていません(たまーにほんの少しはかじりますし趣味の範疇で妙な絵は描きます)。
技術をどうやって社会や人のために使うかみたいなことをやっています。なので、プログラミングはちょっとやります。簡単なwebサイトとかゲームとか、CGとかは作れますがどれも「できなくはない」レベルです。
「で? あなたは具体的に何やってるの?」という話になると思いますが、今は起立性調節障害という病気の子どものためのゲーム制作をしています。
これ、シリアスゲームとかExergameというものになります。
専門用語のオンパレードですね。すみません。では、順番にwikipediaでも載せときつつ、用語解説から入ります。おいおい研究者志望がそれでいいのかよって気がしますが、合ってるのでひとまず見逃してください。
用語解説
①起立性調節障害(OD)
簡単に言えば、中高生に多い自律神経系の病気です。朝起きられなくなってしまうので、不登校になってしまいがちです。ODと略します。
②シリアスゲーム
ここにある通りです。「問題解決にゲームを使おう!」みたいなことです。
ちなみに、Exergameはexerciseとgameを組み合わせた造語です。リングフィットアドベンチャーとかはこれにあたります。
研究紹介
論文を載せてしまえば良い気もしますが、それも風情がないのでかいつまんで説明します。
研究背景
近年、起立性調節障害によって不登校になる子どもが増えていると言われています。その背景にはこの病気が長期化しやすくなっていることが挙げられています。起立性調節障害になること自体は本人のせいではないのですが、長期化には長期間体を動かさないのことによる筋力の低下という生活習慣に起因する状態があります。
運動をすればいいのですが、やれと言われてやりたい子どもばかりではないのが現実です。そこで、何とか「運動に対するモチベーションを上げる手助けができないかなー」と思って研究を始めました。
研究方針
ということで、ゲームでモチベーションを維持しちゃおうぜと考えました。
突拍子もなく見えるかもしれませんが、「リハビリにゲームを使おう」っていうのは意外とメジャーな手法だったりします。1つ載せときますね。
また、長期間体を動かさないのことというのはずっと家にいることで起こります。この状態の子どもが増えた要因として、最近の屋内でできる娯楽の充実が指摘されています。ゲームはその代表格ですね。ゲーム好きなODの子どもはこの状態になりやすいわけです。
制作物紹介
これらを踏まえて、学部4年からゲーム制作をしつつ、最近は効果検証もしています。動画載せときますが、こんなもんかーってレベルだと思います。クオリティの高いゲームというより、最低限の機能を備えたものを作ってその効果を検証しています。これに関しては時間も有限なので仕方ない部分はあるのかなと思っています。折り合いをつけてやっています。
また、バリアのないゲームを目指しています。2Dで作っているのもそれが理由ですね。個人差は大きいですが、眩暈を起こしやすい病気なので、酔わないように気を付けています。
システムに関しては、足にセンサーを付けることで運動を検知しています。
この動画ではORPHE COREというセンサーでやってましたが、今はM5StickCでやってます。
実験したりもしてますが、長くなっちゃうのでこの辺にして、論文のリンクを張り付けておきます。
関連リンク
最新の論文はこちらから読めます。英語です。
研究を始めたばかりの頃の論文です。簡単なプロトタイプのみです。
この研究をしている理由
これ、びっくりするほどよく聞かれます。
「なんでこの病気を知ってるの?」とか「なんでこれにしたの?」みたいな感じです。どうでも良いんじゃないかなと思いますが、書いておきます。
比較的重いので、話すと大体引かれます。
ほんとに単純です。私、この病気で不登校やってました。
なのでこの病気のこと、めちゃくちゃ恨んでます。本当にこの世から消滅してほしい。もしくはすぐ治るものになってほしい。私怨ですね。
お医者さんは治ると言っていましたし、だいぶ良くなりましたが、普通の高校生の2年弱が奪われました。卒業するために最低限単位が取れる程度に吐きそうになりながら通っていましたが、気分が悪すぎて授業全く聞けませんでした。大好きだった弓(弓道部でした)も段々引けなくなりました。
誰かが思い出を作っているすぐ横で、私は吐き気や眩暈と闘っていました。
気を遣ってくれる友人と、私を白い目で見る友人だった何かの集合体がいました。大体そのどっちかでした。
他人が信用できなくなりました。気を遣わせて迷惑をかけることも本当に嫌でした。こんなことになるなら誰とも仲良くなりたくないと思いました。
仲良かった誰かが「あいつ今日は来てるね」みたいに珍獣でも見たように言っていることも、とてつもなく気持ち悪かったです。
布団でずっとBUMP聞いてました。『太陽』が一番好きでした。生きていたくなったです。名状し難い絵もたくさん描きました。
その時の二年間って、ずっと無くならないと思っています。
病気が治ったからそれでいいってことは無いと感じています。
私の心はそこでボロボロに砕けていて、砕けたけど何とか立っていました。
一番強く残ったのは、ODに対する恨みでした。
その時は、「運動で治る」みたいなことはあまり言われておらず、時間が経ったことで比較的良くなりました。
だけど、思うわけです。治れば良いわけがないだろうと。私の時間を返してくれよ、おかしくなった心を戻してくれよと。
でもそんな救いは絶対ないし、ついた傷が治ることはありません。
人は怖いものだと知ってしまったのだから、それは変わりません。
デザインの勉強を始めたのは、ささやかな抵抗です。
ODを取り巻く環境があまりにも許せず、何かしたいと思ったから学び始めたのですが、医学ではないという認識が強くありました。
私は、治すことよりも、ODを持つ人の心を守ることに興味があったからです。大層なことができるとは思わないけど、こんなにも心を砕かれなきゃいけない理由がわからなかったのです。
こんなぶっ壊れた人間がまた生産されると思うと、耐えられませんでした。
だから、運動で治るらしいという話が出たとき、「どうやって運動させるか」に興味が湧きました。上手くここを繋ぐものがあれば、私みたいに2年も奪われて不登校を拗らせて病むことはないからです。
そうして生まれたのがこの研究です。
道半ばですが、いつかもっと大きく育ってほしいと思っています。ODを知ってもらいたいとも思っています。その役に立つだけでも良いと思っています。
個人差はありますが、ODは中高生の10人に1人くらいはなると言われています。10人に1人の心がぶっ壊れる可能性があるのです。
このままではやっぱりダメなのです。
時間は結構経っていて、あの頃のことを詳細に思い出すことは少なくなりました。人間は忘れるようにできているんだな、と思います。食べ物もおいしいしゲームもします。人とも話せます。割と普通の大学院生です。だけど、その時得た感情は消えません。
同時に、好きになったものも忘れません。
助けてくれた人は今でも大事な人です。
守ってくれた音楽は今でも私を支えてくれています。
傷と一緒にそういうものも抱えているから、私は今も毎日何とか歩いていけるわけです。