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THE SECOND後からのマシンガンズ旋風「アイドル芸人」大喜利についてのいくつかの考察①

【蛇足】THE SECONDを観るまでの経緯

きっかけはバーの店長もとい、おたくらに程近い元後輩である。
芸歴16年以上の芸人が参加資格を持つ漫才賞レース「THE SECOND」について、そもそもの温度感としては勝ち上がった芸人の名前を追う程度だった。選考会段階で落ちた三拍子もそうだし、16→8でランジャタイが敗退した段階で、正直この賞レースにほぼ興味を失っていた。

おそらく決勝大会の前日とか、前々日だったように思う。
その日もお笑いの話をのんびりとしている中で
「THE SECONDはマシンガンズに是非とも勝って欲しいなあ」決勝進出者を見ながら、そんな話をした。

どんなお笑い好きに会っても「THE SECONDはマシンガンズ」という人は彼だけだった。

私はその日もビールを傾けながらぼんやり
「そうかあ、マシンガンズなのかあ」と心の中で思っていた。

大会後も彼は一貫してマシンガンズの結果に大喜びをしていた。ネタ以外の時間も全部が楽しかったので飛ばさず観て!俺、1秒も飛ばさず見た賞レース始めてだわ、と高揚感満載で語っていた。

リアタイもせず「まとまった時間が出来たらゆっくり決勝を観ようかな」程度の熱量だったが「そんなに言うなら、早めに観ておかねば」
そうしてまったく予想だにしない方向に着地するのである。

マシンガンズがTHE SECONDという大会そのものだった

先の話から、フィルターがかかっていたのは事実だ。
とはいえマシンガンズといえば、キレ漫才で口が悪いお笑いで、そもそもに良い印象がなかった。
覚えているのは全盛期のエンタやレッドカーペットでのダブルツッコミ。二人同時にキレて腕を上げるあのポーズ、その程度だった。

そしてどの芸人よりも漫才の予想がつかなかった。よしもとの芸人とは違ってライブに大して出てこないし、今を知らなかったからだ。素直に彼らに対して「無知識」だったから期待値が自然と低かったのかもしれない。

おじさんになっていたマシンガンズの漫才は「短気で勢いのある若者の文句」から「哀愁漂うおじさんの嘆き」に変わっていた。特に西堀さん。自分が大人になったんだろうなとも感じた。めちゃくちゃ面白かった。当時の自虐だってこんなに悲壮感のある笑いはなかったように思った。

何よりマシンガンズの芸風に、第一回大会で実験的要素もあったTHE SECONDという大会との相性が抜群に良かったなあと感じた。
どのような大会になるのか、トーナメントがどういう試合運びになるのか、視聴者も、審査員であるお客さんも、スタッフも、演者の芸人も、誰もが全貌は見えていなくって、そのドキドキは、結果を全て知る録画の私でさえ感じたのである。

マシンガンズがその「どうなっちゃうんだろう」とドキドキするその全員の心境をメタ的に、正直に愚直に率直に自虐的に、代弁してくれているみたいだった。さらば森田さんもおっしゃっていたが、場を受けて途中でチューニングをするようなスタイルだからこそ成しえるハンドリングだった。
なんだかそれがとても心地良かったのだ。他の7組はみんな間違いなく芸人だったけど、マシンガンズだけがちょっと私たち(客)寄りだった。立ち位置が、舞台と客席の間だった。

特にネタの域を思い切り突っ切った3本目の決勝戦西堀さんの「優勝させてくれ」に至っては最早ネタでもなんでもなく、どうしようもないおじさんの嘆きでしかなった。
ネタも無く、プライドを捨ててでもそれでも「笑い」をとりにいく捨て身の思いに拍手した。完全に生身のソルジャーだった。
「俺たちでなきゃ死んでるぜ」
西堀さんが続ける。本当にそうだと思った。
ただ、ネタで命を懸ける芸人とは、もはや違う何かだった。

忘れてはいけないのが、番組の目的は大前提一番面白い漫才師を決めることであり、どんな手段を使っても「笑い」をとることではない。
何度も何度も叩いて打った作品(ネタ)か、会場の空気の共感をつくったパフォーマンスかで行くと、それでもやっぱり審査基準はネタだった。
最終的に優勝は間違いなくギャロップだったなとは感じた。

私が観たものはアイドルオーディションじゃなくて芸人の賞レースだったよね?

すでに私がTHE SECONDを見た時には「ビジュ爆発」だとか「顔がいい」とかで滝沢さんがTwitterトレンド入りをし続け、ひとしきり祭り上げられていた後だった。

THE SECONDには、錦鯉がM-1を獲った時のような「芸歴の長いおじさんが賞レースで結果を残して売れる感動的なブレイク」みたいな盛り上がりを想定していたのだが、
準優勝のマシンガンズの騒ぎだけは「滝沢さん」の騒動が始まりで一線を画していた。もはや「新進気鋭のアイドルが彗星の如く現れたぞ!」とでも言うかのような騒ぎ立て方だった。
あれ、みんなが見たのって、芸歴16年以上の、ほぼ40を超えた芸人が漫才やる大会だったよね?ほんとにあってる?アンバサダーってもしかしてJ.Y.Parkだった?

なぜいきなり滝沢さんがバズったのか、原因は私もよくわからないのだが、ナイツのザ・ラジオショーで塙さんがおっしゃっていた「(晩年全然人気のない滝沢がTHE SECONDになって急にかっこいいと言われ始めたのは)他がおじさんすぎたのでは」と言う推測に少し納得した。おじさんのための大会でおじさん目当てに見たら男前が居たみたいな感覚なのだろうか。
出典:ニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』 6/21(水) 15:00-15:20 放送

そしてこれが、ただのオタク間でのバズり程度であれば「滝沢さん、一昨年のM-1後のモグライダー芝さんのような盛り上がりだね!」「今後はマシンガンズ、TVで観れるかなあ!」程度で一瞬で話題は消えただろう。ここからのひと展開が他の芸人とはマシンガンズの一味違うところだった。

特に滝沢さん(もはや一家)はやり手だった。彼は「ただバズった」程度でこの一世一代のビッグウェーブを終わらせる人じゃなかった。

②へつづく




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