Hier ist genug für mich

日本では全く使わなかったけれど、日本以外の国にいると良く使う言葉のひとつ、enough。

ここ1年ほど住んでいるまちケルンは、本当に「十分」で「ちょうどいい町」だと思う。生まれてこの方、引っ越し回数がそろそろ四捨五入したら20回になる自分が選ぶ、上位に入る「ちょうどいい町」。

まず、立地がちょうどいい。
ドイツの左上、NRW州に位置しており近隣にボンやデュッセルドルフ、ドルトムントなど大きい町に囲まれている。パリまで約500㎞、特急列車で片道約4時間。アムステルダムまで約270km、電車だと約4時間、車だと3時間かからないくらい(ケルン-アムステルダムは、大阪市から高知市へ行くくらいの距離と時間だと思っている)。チューリッヒへも特急列車ICEで行ける。ケルン-ボン空港があり、フランクフルト空港までドイツの特急列車ICEで小一時間、デュッセルドルフ空港へもローカルの電車で小一時間あれば着く。利用できる空港が少なくとも3つ。なにしろ交通の便が良い。もはや当たり前となっているDB(Deutsch Bahn=日本でいうJR)の遅延やキャンセル、ストライキは一旦割愛。

おまけにヨーロッパ屈指の日本人エリアであるDüsseldorfの隣町であり、ローカルの電車で片道30分もかからず行けるので、日本人美容師に髪を切ってもらうことも、日本食スーパーで食材や調味料を調達することも出来る。お子さん向けの日本語補習校も、デュッセルドルフ、ケルン、ボンと選択肢が複数校あるらしい。日本人コミュニティとは積極的には関わっていないけれど、この距離感がまたちょうどいい。おまけに、ケルンにもデュッセルドルフにも無印良品とユニクロがある。お値段は日本の倍くらいするので頻繁には買わないけれど、あるだけで心強い。

ふたつめ。町と緑のバランスがちょうどいい。
ドイツ国内で人口4位の大きな町でありながら、とにかく緑が多い。Google Mapでも見れば一目瞭然だが、大聖堂や旧市街など賑やかな部分から5㎞もいけば大きなStadtwald(森林公園)がある。ここだけ切り取れば、農場に居ると思われても自然なレベル(日本の実家はいまだに私が地方の山の中にいると思っている)。飲食店の多いエリアや観光どころ、大きい駅のある町の中心部へも路面電車で20分もあれば行ける、5㎞くらいなら飲みに行って歩いて帰ることも出来る。都会具合と自然のバランスがちょうどいい。

みっつめ。町の大きさがちょうどいい。
住んでいてそんなにせわしい都会感は感じないけれど、大手スーパーREWEの本社があり、ケルン-ボン空港はDHL及びDeutsch Post(郵便局)の拠点であり、Lufthansa航空のLCCであるEurowings(日本でいうANAとPeach)の拠点。大きい大学もあれば、大学病院もある。図書館も複数ある。サッカーのスタジアムもある(去年はビヨンセやONE OK ROCKがライブをしに来ていた)。動物園もあり、植物園もあり、一番は大聖堂とクリスマスマーケットがある。ケルンのクリスマスマーケットは3~4か所に分散しており、それぞれテーマが違って楽しい。加えて各地域ごとに地元民向けのクリスマスマーケットもある。2月にはカーニバルもある。みんなカラフルな衣装を着て、パレードを見たり、実際にパレードに混じって歩いたり、地元民も観光客もみんな参加して楽しめる。おまけに音楽はケルン出身のミュージシャンでまかなっている。なんという地産地消。地元民の地元愛もすごい。FCケルンへの愛もすごい。

よっつめ。人がちょうどいい。
今住んでいるエリアがかなり治安も住民の人柄も良いところという大前提だけれど。ケルンの中でも地元民に「絶対に行くな」と言われるエリアもあるので、あくまでも今の地域は、だけど。今のエリアは学生が少なく(家賃も高いエリアらしい)、小さいお子さんがいる共働きの若い夫婦や高齢の夫婦などが多い。いつも公園で会う顔ぶれも、なんとなく子どものお行儀が良いというか、品がある、気がする。身なりも綺麗。ホームレスや怖そうな人たちもあまり見ない(スーパーの前に一人いるかいないか)。みんなドイツ語初心者の私にもフレンドリーだし、敬意を持って接してくれる。見下してくるとか馬鹿にされたこと、嫌な思いをしたことは今のところ一度もない。

スーパーもドラッグストアもパン屋さんもカフェもクリーニング屋さんも、すべて1㎞どころか500m圏内くらいにはあるし、学校も保育園も病院も徒歩圏内かトラムで少し行けば通える。日本と違って広告やアナウンスも皆無だし、救急車も日本ほど頻繁に走っていないし、静かに穏やかに暮らせる。

日々、日本が恋しい瞬間はたくさんあるけれど、今のところ1年と2か月が経って、「なんてちょうどいい町なんだろう」という印象は変わらない。今まで住んだまちはそれぞれどこも愛着はあるけれど、高知とケルンが今のところ思い入れが強いかもしれない。次いで大阪と北陸。次点でシドニーと愛媛、香川、徳島、兵庫、あまり覚えていない横浜と江戸川区。ミャンマーもまた長期滞在してみたい。カンボジアは暑さで一度倒れたので雨期以外なら。

シドニーはなんとなく肌に合わない気がしていたけれど、ミュンヘンとケルンは文字通り肌に馴染んでいる気がする。夏のワルシャワも良かったな、ポーランドもいつか住んでみたい。

以上、今住んでいるまちの、独断と偏見に満ちた紹介でした。


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