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運動器リハ 1.0の教科書✏︎第4章【画像の読み方①】

第4章では『画像の読み方』特に単純X線の読み方についてまとめていきます。

ここでは「膝の〇〇疾患では,こういう所見があると〇〇である」みたいなHow toの知識は取り上げていません。
そういった知識が欲しい方は,申し訳ないですが,このnoteを読んで頂いてもご期待に添えません。

ここでお伝えしたいのは『画像を読む作法』です。
画像を読む前に押さえておくべき基礎知識(濃度分類,撮影肢位・条件 etc)や,実際に画像を読む順番(ABCs)を知っていることが重要です。

その上で,「膝の〇〇疾患の画像では,ここがこうで・・・」と勉強していくのがBetterだと思います。


運動器疾患に対する日常診療において,画像検査は診断に必要不可欠です。
医師はまず身体所見からある疾患を疑い,単純X線撮影でスクリーニングを行うのが一般的で,必要に応じてCTやMRI,超音波検査,核医学検査などを追加で施行し確定診断を行います。

一方,療法士にとっても画像検査から得られる所見は非常に重要であることは言うまでもありません。

運動器疾患に携わる療法士は「安静が必要か」,はたまた「早期運動療法の良い適応か」,「どの範囲で可動域練習を行うのが安全か」,医師とともに判断しなければならない場面が多いと思います。その決定に画像所見が大いに役立つのです。

しかし,画像を読むには多くのトレーニングと時間が必要です。
始めは分からなくてもよいので,焦らずに興味を持って画像を見続ければ知らず知らずのうちに読む力がついてきますので,まずはここで画像読影の基本を押さえてもらえると幸いです。


それではいきましょう!


☑︎ 単純X線の基礎

 単純X線像はX線を身体に照射し通過したX線を可視化した画像であり,濃度とコントラストによって構成される。
 
 X線は身体を通過する間に部位によって異なる減弱を受ける。この減弱の程度は物質の密度,原子番号,X線の波長,物質の厚さに依存する。X線の透過度が高い(黒く写る)組織の順に,空気,脂肪,水,骨,金属と5段階の減弱程度が判断でき,これが色調変化して現れる。

 CTのように水成分と軟部組織が区別されることはなく,関節液も筋と同等の濃度となってみえてくる。また,骨や関節に何の変化も認められない場合でも,罹患肢が肥大していれば全体に白く写る。圧倒的なX線減弱差をもつ空気と重金属以外,脂肪・石灰化は軟部組織の影響により,判断が困難となることも多い。

☑︎ 読影の前に

 単純X線像の読影の前提として,性別や年齢, 部位ごとの正確な解剖学的知識に裏付けられた正常像の理解が不可欠である。

 特に乳児期から成長期までの骨化が未熟な期間は注意が必要である。出生時の骨は「一次骨化核」とよばれ,その後成長に伴って「二次骨化核」が現れ,それらが癒合することで骨が完成する。成長期の四肢長管骨では,骨端と骨幹端の間に成長軟骨板が存在するが,これはX線像では線状の骨透亮像としてみえるため,骨折と見間違えやすい。これらの時期に骨折や骨端線損傷を判断するためには,健側と患側を比較することが重要とされる。

 また,実際にX線を目の前にして読影する前にそのX線がどういった肢位,条件で撮影されたものかを知っておかなければ,適切に所見を拾えない可能性がある。



・撮影肢位と方向

 X線像は仰臥位であるか立位であるかによって,また関節が少し内旋したり外旋したりするだけでも見え方が変わってくる。どのようで肢位でどの方向から撮影されたものかを判断し読影しなければならない。

 撮影時は目的とする検査部位をなるべくフィルムに近付け,2方向以上から撮影することが原則である。正面像では正常にみえても,側面像で異常がみつかることは実際の臨床ではよく経験する。例えば,脊椎(頚椎,腰椎)では4方向,骨盤では前後一方向に目的とする部位の斜位や側面を組み合わせることが多い。また,それぞれの骨・関節面の部位ごとによく使用されている特殊な撮影法がある。


・撮影条件

 通常のX線では仰臥位で撮影することが多いが,動態に伴う関節の異常や不安定を評価したい際には機能撮影やストレス撮影,荷重条件下撮影などが行われる。

 機能撮影では,動態に伴う関節の異常可動性や不安定性の確認に重要な役割を果たす。ストレス撮影は,靱帯損傷や偽関節,変形矯正を目的とする手術前などに行われ,不安定性の有無や矯正量の確認に用いられる。立位での撮影は,荷重条件下での脊椎や骨盤,重錘を保持させることによる肩甲上腕関節や肩鎖関節の不安定性,下肢関節の荷重アライメントや病態を確認することが可能となる。

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