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運動器リハ 1.0の教科書✏︎第3章【組織の治癒過程を知る①】

第3章では『組織の治癒過程』を勉強していきます。

“組織治癒の理解なくして正しい運動器リハビリテーションはできない” と言っても過言ではないぐらい,組織の治癒過程を知ることは大切です。

組織がいつから・どのように・どの程度修復していくのか,を大まかに知っていれば患部の安静が必要か,運動していっても良いかなどを判断できるようになってきます。医師の指示があればそれに準じて行いますが,いつも細かい指示をもらえるわけではありません。医師とコミュニケーションを取ってリハビリを進めることは大前提ですが,現場では療法士がある程度病態を判断しなければなりません。安全で適切なリハビリを提供するためにここで組織の治癒について確認していきましょう。

いくつかの論文を見ると、組織の治癒過程の時期が論文ごとに異なることもありますが,ここで学ぶポイントとしては,治癒の大まかな流れを捉えることです。
『〇〇の治癒が完成するのが5週か6週のどっちなんだ?』と細かい差異の追求は一旦置いておいて、『なるほど,〇〇は5週から6週ぐらいで治癒するのか!』と理解することが重要です。


例えば,,
1週間前に足首の靭帯を損傷した患者さんのリハビリを今日から担当することになりました。5分後には患者さんを治療しなければなりません。
さあどうしましょう。
足関節の可動域練習はいつからする?どの範囲で行う?自動運動は?生活や活動は制限する?
とっさに判断するのは意外と難しいですよね。

こんな時に組織の治癒についてある程度の知識があれば,損傷の程度をおさえて上で,ざっくりと『〇〇は〇週間ぐらいは控えた方がいいな、〇〇は痛み少ない範囲ならやってもらっても大丈夫だな。』といった判断ができるようになります。


そんな風に役立ててもらえれば幸いです。
第3章【組織の治癒過程を知る①】では組織の王道,皮膚・骨・筋についてまとめていきます。

それではいきましょう!


☑︎ 組織修復と炎症反応

 あらゆる種類の損傷が生きている組織に加わると,生体の基本的機構である局所的反応,すなわち炎症が起る。生体はこの反応によって損傷による有害産物を処理し,局所の修復と再生への過程をとりはじめる。修復機構を主に担当する因子は組織内の基質とコラーゲンを産生する線維芽細胞と新生される血管であり,この機構はすでに炎症過程の初期に始動している。炎症と修復はともに損傷に対する生組織の反応であり,両者を区別することは難しい。言い換えると,炎症は損傷局所に初発するが,損傷組織治癒過程の一部を構成すると考えた方が理解しやすい。

 炎症反応は一連の過程であり,連続する現象として理解される。その反応は組織学的,生化学的,生物学的な観点から解析されているが,線合的な解釈が必要である。組織の修復過程はこの反応の初期よりはじまり,炎症反応の終末期は創傷治療反応が主体を占める。その主な反応は,1)血管透過性亢進,2)血管内皮への白血球膠着,3)白血球の血管外遊出と炎症巣への遊走,4)白血球の貪喰,5)白血球よりの酵素放出に要約される。

☑︎ 皮膚の治癒過程

・創傷と治癒過程

 創傷とは体表面や体内臓器組織の損傷または欠損のことであり,創傷の治癒には大きく2つの過程がある。形態的にも機能的にも失われた組織と同等に復元されることを“再生”といい,欠損組織が肉芽組織とコラーゲン線維によって置換されることを“瘢痕”という。また,創傷治癒の形式は一次治癒,二次治癒,三次治癒に大別される。

・創傷治癒の形式

 創傷治癒の形式は以下の3種類に大別される。

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