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つなぐ。
ずっとやりたかったことがあります。
日本の伝統工芸「金継ぎ」です。
金継ぎとの出会いは、10年前に遡ります。
お義母さんが、夫婦(めおと)茶碗を買ってくれました。間もなくして私のお茶碗が真っ二つに割れてしまいました。夫との険悪ムードが飛び火したのでしょうか。
この時、人生で初めて金継ぎのお直しをお願いしました。時間がかかることを了承し、お茶碗の修復を待ちました。しかし、待てど暮らせど何の音沙汰もありません。
気長に待とう。
気長にね。
長…
…。
とうとう、お茶碗は返ってきませんでした。私の方からも連絡する気が不思議と起こらず、新しく自分のお茶碗を買うことにしました。
去るもの追わず。
月日が経ち、世間がコロナウイルスで騒がれていた2020年。私は娘とバリ島で暮らしていました。日本にいる夫との関係は、修羅場と化していました。この時ばかりはWi-Fiを憎みました。海を越えてくるな、とね。
夫婦関係も、娘の子育ても終盤に近づいていること、人生の折り返し地点ということもあり、自分自身のこれからを考えては答えを見い出せずにいました。
私の好きなことって何?
やってみたいことはある?
これからの人生の目標は?
まさしく、アラフォーあるあるシンドロームです。あなたも?同志ですね。いつか吹っ切れることを共に願いましょう。
海外にいると、日本人として日本ならではの一芸を期待されます。子供向けに、巻き寿司や折り紙のワークショップを任されることもありました。海外生活は、良い意味で「I am Japanese.」を意識するきっかけになりました。
いつだったか。SNSで、金継ぎを生業にしている方の作品を、憧れの眼差しで眺めている自分がいました。
壊れたものを単に直して元に戻すのではなく、漆と金によって、痛々しいひびや欠けに美を見出す。なんて粋で美しいの。
日本へ帰国したら金継ぎを習得しよう。
10年前に出会ってフェードアウトした金継ぎへの思いが、再び燻り始めました。金継ぎは、人生の主役を自分に取り戻す、再出発点となることでしょう。かけらとかけらを繋ぎ合わせ、生まれ変わった器を慈しむ様子を、近い将来、お見せできればと思います。
さて、帰国して半年が経ちました。文中たびたび匂わせていた夫婦関係のその後も追記します。夫とは落ち着きを取り戻し、以前とは違う関係性を築き始めているように感じます。
覆水盆に返らず。
壊れたものは元の姿には戻りません。同じ形に戻そうとも思いません。
でもね、想像力というのは偉大で、独自の姿に作り変えることができると思います。
夫婦という関係性に執着せず、自然の流れに任せてみよう。行雲流水。あの流れゆく雲のように。なるようになれ。
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