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金色日記〈第1話〉夢の扉を開けたら思いのほか地味で淡々としていた
誰しも人生に幾つか用意されている夢の扉。そのひとつをノックしたのは10年前だったが、開けるのをすっかり忘れていたお馬鹿さんはどこの誰ぞや!タイミングってのがあってね、と言い訳を前置きに、長年やってみたかった金継ぎにようやく着手した。事始めに宜しい一粒万倍日だった。
器をひとつ直すのに1〜2ヶ月も要する金継ぎ。その間の工程も多く、地味な作業が淡々と続く。
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金継ぎの初心者向けに、短時間で仕上がる「合成うるし」があるのだけど、乾燥に時間が長くかかって肌かぶれ要注意の「本漆」を使うことにした。金継ぎしかり、人生も苦労する方を選んでしまうのは運命かしら。占い師の友人いわく、しょーこさんはそういう星だから、だって。なんてこと。
食器へ金継ぎする場合は、安全面を考慮して本物の漆を選びたい。金継ぎ赤ちゃんなのに、職人気質をぷんぷん匂わせるのが特技なようね。ソナタ第8番「悲愴」を弾く時も、なりきるの、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンに。後から技術は付いてくる(はず)。
おしゃべりはここまで。
第一工程にいきましょう!
『割れたパーツ同士をくっつける』
微量の水で練った小麦粉を漆と混ぜ、これを接着剤代わりにする。
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ガムを踏んずけた時みたいに、ねちょーんとしている。離れ離れになったパーツ断面に、ねちょーんを薄ーく塗って、ずれないようにぴったりくっつける。もう二度と離れないように。ああ、まるで仲人のさじ加減を試されているよう。
完全に接着するまで1週間以上もかかる。うへえええ!時間のロスに敏感なお年頃なのよ。パックリ逝った傷が癒えるまで、しばらくお眠りなさいね。湿らせたタオルも同梱させるのは、湿度を保つため。ゆっくりじっくり、しっかりと固まるのを待つ。
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第2話へとつづく。
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