第三十話「五十肩」2024年7月12日金曜日 雨
猛暑、酷暑も雨には敵わないらしい。気温は上がらずやや過ごしやすい。涼しい風が吹いている。
しかし、九州や中国地方の大雨は災害クラスだったそうだ。このあと関東も警戒が必要という。何事もないといいのだが。
小雨の中、近所のリハビリクリニックに来ている。
何週間か前から右肩に痛みが走るようになっていた。可動域も狭くなったように感じる。なんということはない動きで悶絶してしまうこともあれば、なんの違和感もなく普通通り動くこともある。原因は思い当たらない。
五十肩。
まあ、そうなんだろう。
51年この身体を使っている。関節も内臓も毎日無休で働いてくれている。油を差したことなければ、パーツ交換をしたこともない。錆びつくのもガタつくのも不思議ではない。
大事をとってクリニックに来たのだ。レントゲン検査から、腫瘍や骨折、ヒビなどの外傷ではないことが確認された。
「筋肉の炎症が考えられますが、何か同じ動作を繰り返されたりしますか?スポーツとか作業とか?」と医師が訊ねる。
週二回程度の軽い筋トレをやっている。メニューには腕立てもあるが、膝をついての軽い腕立てだ。故障するような大仰なものではない。そう言った。
ふと、思い当たった。
同じ動作。
ドリップの動作とラテアートの動作か。
ドリップケトルとお湯の重さを合わせて1キロ程度。
それを1日に何回も上げ下げしていた。
わずか1キロ。たった半年だが。
ラテアートは6〜7年か。そんなに繁盛店ではなかったが40過ぎの身体には疲労が蓄積していたということか。
それが炎症を起こし、五十肩へと。
「とりあえず湿布を処方します。一週間様子を見ましょう」
調剤薬局で湿布を受け取り、帰路に着く。
その間も右肩が疼いている。雨が冷たい空気を運んでくる。気温が下がると痛みは強くなるそうだ。
お前、よく頑張ったんだなぁ。
40過ぎで初めてコーヒーに触れて、たくさん練習したもんな。お疲れさん。ありがとう。
もっと上手くラテを描ける人なんてたくさんいるし、ドリップだって神業みたいに美味いコーヒーを淹れる人もいる。敵わない。
でも、もう少しお前とコーヒーを淹れたいと思うよ。帰ったら湿布を貼ろう。
お互いもう少し頑張ろう。
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