第三十六話「未来から現在を観るーーInstagram悪戦苦闘」2024年7月25日木曜日 晴れのち夕立
ワークショップが終わり、次はシェアリングコーヒーショップの出店が控えている。8月の第1週と2週の昼の部を1日ずつ抑えてある。
コーヒー豆は購入済み。クッキーは船長から。ワインの選定はできている。メニューも作った。機器はショップの貸し出しのものを使う。当日、現場に行きOpenの看板を出すだけだ。
とは、ならない。
告知、広告、宣伝作業である。
自分の幸せとお客様の幸せを到達すべき山頂とするならば、そのルートはどう選ぶべきか。
普通なら1合目から2合目のルートを検討し、2合目についたら次の3合目のルートを検討する。
実は、先輩起業家や起業セミナーの講師、独立起業の指南書は、このやり方を強く否定する。
10合目の山頂に到達するには『どのような形で9合目に到達するのか?』そして、『その9合目に到達するために、どのルートで8合目に到着していなくてはいけないのか?』を考えろ、と。
経営のゴールは『自分と他者を幸せにし続けること』という。ゴールに居続けることがゴールという矛盾した言葉である。
となれば、ポイントごとで地図を広げて検討していたのではロスが大きいと考えるのだ。幸せになるのに(幸せにするのに)最善なルートを選べ、と。
また一見優しそうなルートが実は危険なルートであったり、下山ルートであったりすることもある。
ひとつ上の高さから下を見る。未来から現在を見下ろしてルートを判断する。そうすれば今選ぶべきルートが、遠回りに見えたり困難で険しい道が最善な道であることが見える、と。
では、それに倣ってゴールからひとつずつ下りながら今の自分を見てみよう。
ゴールはコーヒースタンドだ。従業員は私一人。カジュアルワインとビールくらいのアルコールは置きたい。椅子、テーブルは無く、角打ちのような形にしたい。
この資金は?自己資金と融資であろう。融資を受けるにはある程度の経験と実績が必要だ。
実績をこのシェアリングコーヒーショップで作る。
シェアリングコーヒーショップでしっかりとした売上を作らなくてはいけない。提供商品に間違いはない。喜んでもらえる自信はある。
しかし、並べただけではお客様は来ない。
告知と広告、宣伝が必要だ。
しかも魅力的なものを。
いま、私の通るべきルートはここだ。
シェアリングコーヒーショップはInstagramを推奨している。ショップのメンションをつけて投稿すれば自動的にショップ側のストーリーズに投稿される。その広告効果は大きい。
正直、苦手だ。
私はセンスというものを持ち合わせていない。最も無難なTシャツとチノパンとスニーカーという出立ちのはずなのに、「なんかチグハグしてるね?」とよく言われる。キラキラとしたInstagramの世界には最もそぐわない種類の人間だ。
そんな私が、スマホの小さな画面を睨みつけながら、タグをつけ、キャッチーな文言を作っていく。
色味は?言葉のセレクトは?
堅苦しくないか?
おじさん構文? え?ダメなの?それ?
保存したと思ったら消えた!
消えたと思ったら、カメラロールにあった!
あったけど編集できない!
なんじゃそりゃ?!
ぐぬぬぬ。
悪戦苦闘、四苦八苦、七転八倒を繰り返しながらなんとかストーリーズを投稿した。
あまりにもタップしすぎたせいで、右手人差し指の指紋がなくなった。手首は腱鞘炎だ。肩凝りが背中まで広がっている。
その成果が初回の投稿。
告知、広告、宣伝は一回では終わらない。
私の1合目の一歩目だ。
これまでの私なら、避けてきたルートだろう。それでも私はこのルートを選んだ。
2合目から見下ろした時、このルートが正しいと思ったからだ。
ルートが決まったからには、顔を上げて景色を楽しみながら歩こう。
Instagramのキラキラした景色は、この年寄りにもきっと楽しいに違いない。
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