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読書感想文「東京百景」又吉直樹さん

『東京』という言葉は、一言では言い表せない多様性に満ちていると思う。
僕は東京近郊(東京都ではない)に住んでいて、東京に来たことがない人がどんなイメージをもつかは想像するしかできないのだけれど、東京には魅力的な街がたくさんある。

又吉直樹さんの「東京百景」は、太宰治の「東京八景」をオマージュにした作品らしい。
大阪から上京して過ごしたさまざまな街の情景が、ぎっしりと百篇つめこまれている。

この本を購入したとき、百景の「景」は景色または景観のことだと思っていた。
読み進めながら、「景」は情景なのだとわかった。

その場所の記憶は、目でとらえた景色だけではなく、聴こえた音楽や感じた匂いやそのときの天気や一緒にいた人と結びついて脳にインプットされる。
どうやらそれを「情景」というらしい。
たしかに、僕自身も音楽や匂いで記憶が呼び覚まされたことが何度もある。

そして、又吉直樹さんはやっぱり芸人なんだなと感じた本だった。
視点、感じ方、表現の仕方などの『解像度』が違う印象で、「へぇ~」と感じる一方、容易に共感できないものもいくつかあった。
(生き方や感じ方という使い方での、解像度という言葉はあまり好きではないのですが、他によい表現が見つかりません。)
もちろん読書家であることも間違いはなく、そこかしこに読書の跡(というか拘り)が散りばめられていたのが素敵でした。

僕も自分なりの「情景」を文字に書き起こしたくなる良い読書体験ができたことに感謝!

書店は「買う予定のないものを買いに行くところ」という、スピードワゴン小沢さんの言葉も実感できた1冊。
本好きにとって、書店をフラフラと物色するのは至福の時間ですね♪


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