masaya

学生時代に創った同人誌「para」に載せた作品をここに載せていきたいと思います。

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学生時代に創った同人誌「para」に載せた作品をここに載せていきたいと思います。

最近の記事

夢 (2018)

1年前、こんな夢を見ていたようです。 なにしろ夢のことですから、辻褄が合わないところもあると思います。 よく笑う猫がいました。 子猫ぐらいの大きさで、両手の平の上に仰向けに載せて指でお腹を撫でると、ケラケラとよく笑う猫。 夢の最初にこの猫がいました。 男の子と女の子。小学校に上がったか、まだ上がらないかぐらいの男の子と女の子が、長い長い階段で遊んでしました。 神社に続く階段のような、古い石造りの階段で、周りには大きな木立が茂っていました。 何が起きたのかわかりませんで

    • 夏至祭の夜

      夏至祭りの夜 月の光に切り取られた、砂丘の影の中から、砂丘の民がすがたを現す。 遠くからやってきた商隊の運ぶ、珍しいも品々が市場を飾り、 遠くの砂丘に住む人々と挨拶を交わす。 賑やかにざわめく市場のなかで、思い出の中にのみ住む人たちの名前が呼ばれ、 思い出話に花を咲かせる。 夜半過ぎに打ち上げられた花火も終わり、 東の空がうっすらと紫色に染まり始めると、 人々はまた砂丘の中の千年都市へと戻っていく。 市場は店をたたみ、 商隊は遠くの砂丘の作る山の端

      • 誕生日/12月4日

        「近くまで来たので、寄ってみました」 男は、読んでいた本から目をあげて、メガネを外して部屋の隅の暗がりに目をやった。 スタンドの明かりに慣れた目には、部屋の片隅は暗すぎた。 「覚えていらっしゃいますか」 男には、それが誰だか心当たりがなかったが、どことなく懐かしい思い出のような気がした。 「いや、目がだいぶ弱ってきたので、暗い所が見えにくくてね。」 「姿はお見せできないのですが。お元気そうな姿を見て安心しました」 そういうと、部屋の隅から人の気配が消えた。 鳥の声が聞こえた

        • 幻相3

           うみひこ、うみひこ、目をお覚まし。もうすぐ冷たい水がやってくるよ。いつまでも暖かい海の底で眠っているわけにはいかないから。うみひこ、うみひこ、もうすぐ冷たい水がやってくるよ。おまえのいた、陸へおかえり。

        夢 (2018)

          幻相2/老い水(太古の水辺で)

          森の中では100年という時間が静かな寝息をたてている 均一な光の粒が森の中を充たしている。 和人は残してきた影を探しに街へと出てゆく 街にかかるもやは、様々な形をした小さな粒でできている 街はもやの中でその姿を変えてゆく 一時も同じ姿を留めず 幻の様相を呈す 小さな粒が街の風景を少しずつけずりとり 風が運び去る 様々な形をした小さな粒は街にかかるもやとなる 和人は、もやの中に、同じように歩いている人々の姿を見る みな、おしだまり、あてのない探し物をしてい

          幻相2/老い水(太古の水辺で)

          幻相

          和人は目を醒ました。やわらかい朝日が和人をつつむ。 和人は目を醒ました。やわらかなベッドで朝が戯れる。 しだいにぬくもりを失くしてゆくベッドの中で、和人は目を醒ます。 正体のないもやは、今日は襲ってこない。    和人、和人、何を夢みた。 和人は森を夢みた。緑あふれる木々の中で人々が集い、語らう。 和人は森を夢みた。 和人は目を醒ました。彼を見守もる街並みが、今日はいつもと違って見えた。和人は目を醒ました。もやは街並に渦巻いている。 失われた街並に、和人は涙を

          誕生日/10月3日

           台風の雲が雨を降らす。雨は街路灯に照らされてつやつやと光るアスファルトの道路をたたきつける。蛙は雨につられてはいだして、車はそれを石と間違え踏みつける。  台風の雨が窓をたたきつける夜、僕はアパートの部屋で一人本を読んでいた。部屋の中は雨を避けるために逃げ込んで来た夜のせいで少し薄暗かった。最後の曲が止んだレコードはフルオートのプレーヤーが演奏を終わらせていた。わざわざ立ち上がってレコードを換えに行く必要もない。窓の外の雨と風の音が心地よく聞こえてくる。風が吹いていくたび

          誕生日/10月3日

          誕生日/10月3日

           台風の雲が雨を降らす。雨は街路灯に照らされたアスファルトの道路をたたきつける。蛙は雨につられてはいだして、車はそれを石と間違え踏みつける。  台風の雨が窓をたたきつける夜、僕はアパートの部屋で一人本を読んでいた。  気配を感じて振り向くと部屋の隅の薄暗がりに宇宙飛行士がいた。  「私の国を知りませんか。石と金属とで作られた私たちの国を。  「私たちはこの星にやってきてその国で暮らしていました。  「その国からは、私達の星に宇宙船が行き来していました。  「私の船

          誕生日/10月3日

          小さな白いにわとり

           小さな白いにわとりは、みんなに向かっていいました。 「ぼくはパンを作るんだ。それには小麦をまかなくちゃ。だれか手伝ってくれないか。」 とらはいやだといいました。おおかみもいやだといいました。らいおんは少しだけ考えてやっぱりいやだといいました。小さな白いにわとりは、一人で種をまきました。  小さな白いにわとりは、みんなに向かっていいました。 「これから畑の草むしり。だれか手伝ってくれないか。」 とらはいやだといいました。おおかみもいやだといいました。らいおんは少しだ

          小さな白いにわとり

          まぐくんのくりすます

          1.まぐくん と もりいさん  まぐくんは、すうぱあまあけっとではたらいていました。  もおりいさんは、ばんどのかしゅでした。  もおりいさんのばんどは、あるひ、すうぱあまーけっとでえんそうしました。まぐくんがはたらいているすうぱあまあけっとです。まぐくんは、ひとめみるなり、もおりいさんのことを、きにいってしまいました。  もおりいさん、もおりいさん、ぼくはあなたのことがすきです そしてふたりは、けっこんしました。  やがて、ふたりは、おうちをたてました。まちのはずれにある、

          まぐくんのくりすます

          北村家へ向かう

           冬の終わりに降る雪は、この地方ではそれほどめずらしいものではない。しかし、今年のようにそれが3日も止まずに続くなどということはまれである。雪は四日目の朝も降り続いていたが、午後になるととたんに雲がきれて、青空がのぞいた。あっけない止み方だった。どこもかしこもが雪でうめつくされた中で、ただ川だけは、そこがひとすじの帯となって流れていた。しかしその面にはもやがかかり、遠くの方は雪と区別がつかなくなっていた。雪の下では、春にはい出す地虫たちがうごめき、それが柔らかな雪の表面を波立

          北村家へ向かう

          _para

          学生時代に創った同人誌「para」に載せた作品をここに載せていきたいと思います。