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君の色彩

朝露にこぼした涙が乾いてしまう頃に
君も消えてしまいそうで
怖さを抱いたまま往路を重ねた初(うい)の夏


春がこぼした落とし物
君と出会えたきっかけだった

雨に舞う花びらが通りすぎた
あの瞬間を切り取れられれば
どれだけよかっただろう

時間が流れるなか
風に隠れた小さな胸騒ぎ


戻ることを知らないまま
僕らは大人になっていくんだって
無垢だった頃の夢なんて捨ててしまう
そんな人世に溺れたくなんてない、なんて
それすら "なかったモノ" に溶けていくんだろうな




風に揺れる風鈴を目にうつす度に思い出す
君は揺らす風みたいな人だったこと、
僕は君がいないと音すらならないガラス玉なんだ


"いつかまた、同じ世界線で季節を分けあえたら…"
そう願ってやまないよ
知らないことが多すぎた
傍にいたこと、傍にいることが壊れること、君のこと、
分からないまま溶けていったんだ



「ひと夏」なんて言葉で終わりにしないで 
何処までも何時までも揺られていたいんだって
あの頃が通りすぎてしまう前に

「またね」がいつかくる世界でも
生涯かけて絶えず愛を伝える世界でも
幾つかの別れのなかに君とのサヨナラがあるならいらない





"いつかまた、同じ世界線で季節を分けあえたら…"
そう願ってやまないよ
知らないことがあまりに多すぎた

戻ることを知らないまま
僕らは大人になっていくんだって
無垢だった頃の夢なんて捨ててしまう
そんな人世に溺れたくなんてない、なんて
それすら "なかったモノ" に溶けていくんだろうな


哀しいだけの人生に彩りを
君がくれた色だけ頼りに人世に溺れよう