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模様替えがしたいのです

‘’いますぐ’’に何かを変えなければならない、という観念に襲われ、見慣れた目の前の景色に、じっとしていられなくなる。

模様替えの始まりは、いつもこんな感じだ。

1秒前まで、そこそこ気に入っていた部屋が、いきなり反旗を翻す。ストを起こす。

そういえば、カナダの田舎の大学にいた時に、バスがストライキを起こしたことがあった。いつも通り味気のない蛍光灯の学食で、美味しくもないコーヒーを買っていると、今日バスは使えないから気をつけてね、とレジのお姉さんに教えられた。なんてカジュアルにストを起こすのだ、と文化の違いに驚いた記憶がある。

山手線がストライキを起こしたら、東京はどうなるだろう。

ストを起こした目の前の部屋は、従兄弟のお下がりのような違和感を放つ。上から下まで小花が散らされたパフスリーブのワンピース。パフスリーブも小花柄も好きだが、この組み合わせはお世辞にも私の趣味ではない。そんな、違和感である。

かくして、家具の大移動がはじまる。夜だろうが朝だろうが関係ない。音が立たないように気をつけつつ、気が済むまで、あちらをこちらへ動かしていく。

模様替えのよいところは、手軽に変化と進歩を得られることだ。座る場所が変わるだけで、ああ、変わった、進歩したと根拠なく思える。何一つ本質的には変わっていないとしても。

逆を返せば、変化と進歩に飢えている時に模様替えの衝動が起きる。模様替えをすることで、過去の自分を否定し、脱却したいのかもしれない。



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