見出し画像

Apple Vision Proに見るこれからの音のあり方

これはMESONで実施中のApple Vision Pro 1ヶ月記事投稿チャレンジ2/15の記事となります💪

前日2/14の記事はこちら:visionOS App “SunnyTune” のデザイン小話



はじめに

こんにちは!MESONでディレクターおよびサウンドデザインをしている原島です!

この記事では2024年2月2日に米国で発売されたApple Vision Proの中でも特に空間オーディオに注目します。デジタル情報やアプリが2Dで画面に並ぶのではなく、空間と調和する形で"存在する"時代における音の役割について感じていることを書いていきたいと思います。


そもそも空間オーディオってなに?

私たちは、2つの耳で取得した音を空間の反響などを交えて脳内で空間を再構築するという非常に優れた感覚を持っています。

これに対してこれまでのデジタルオーディオ体験は、いわゆるステレオで左右のスピーカーから出る音に差異をつけたり、スピーカーの位置(=音の発生源)を異なる場所にして音を流すことで空間を擬似的に認識させるものでした。この方法はテレビやパソコン、スマートフォンなど画面の中でアプリや機能が完結するものにとってはさほど問題なく、自分が見ている画面や物から音が出るのことに何ら違和感はなかったと思います。

その体験をさらにリッチにしたのが映画館で定番のサラウンドです。
5.1chや7.1chなど複数のスピーカーを設置することで、画面で話しているヒーローの方からセリフが聴こえてきたり、ヘリコプターが飛んでいく動きに合わせて左右や後ろからプロペラ音が聴こえたりと物語の中にいるかのようなサウンド体験ができます。

しかし、サラウンド体験はスピーカーの数や設置する位置などからコストがかかり自宅などで体験できるのは一部のお金持ちというのが普通の世界だったように思います。

そのような中でソフトウェアの性能が飛躍的に向上し、2つのスピーカーだけでサラウンドのように音の発生源が変わったように聴かせることができる技術が誕生しました。デジタルオーディオで、動的に音の位置や響きが変化しているように感じさせる、これが空間オーディオです。この技術はAppleのAirPodsやVision Proにも搭載されています。

空間オーディオが体験に与える影響とは

一般的なステレオとサラウンドの差は、音の発生している位置を体験に応じて変えることができる点です。これはスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したプレゼンテーションで言っていた、「これまでのスマートフォンとiPhoneの違いは体験に応じてボタンの位置を変えられる点だ」ということによく似ています。

体験や環境に応じて本来、音の発生する位置や響きは動的に変わっても良いのにスピーカーが物理的に固定されているせいで、ハードウェア的にそれを実現することが難しかった。それをソフトウェアで解決し体験や環境に応じて変えられるようにしたのが空間オーディオの驚異的な点です。

とはいえ、私たちが今日常的に使っているスマートフォンは小さな画面の中に全てのアプリが集約されているので、音の位置や響きを変える必要はそこまでありませんでした。

そこに登場したのがVision Proです。Vison Proのアプリは画面の制約を受けず、空間のどこにでも置くことができます。またアプリだけでなく、もはや自分が今いる場所も自由に変化させることができるようになりました。

空間オーディオの出番です。
アプリがある場所から音が流れてくる、湖畔にいるときは音が反響しない。山にいるときはやまびこのように音が返ってくる。視覚的な情報だけでなく、音によって空間コンピューティング時代の体験がより良いものに昇華されています。

空間オーディオはアプリがある位置をわかりやすくしたり、今いる環境を変化させることに寄与するだけではありません。

例えば、窓を壁につくるアプリで気が向いたら外の微風や鳥の鳴き声を楽しみに行くという体験や、枕元に猫の眠る音を置いて安らぐ、など音を使って自由に生活空間をデザインすることができます。

Vision Proの実力

Vision Proの音の良さには驚きます。これまで音楽制作のために高級機材を揃えてきましたが、視聴用はVision Proだけで良いのではないかと思うほどです。

Vision Proに内蔵されているスピーカーはデュアルドライバーのようで、詳細な構成は不明ですが、おそらく高音に繊細な表現が得意なバランスドアーマチュア、低音に迫力ある表現が得意なダイナミック型を搭載したハイブリット型ではないかと思われます。

また、空間オーディオについてはAirPodsでも体験可能ですが、Vision Proならではなのが、内蔵カメラによって空間をスキャンし、部屋の様子に応じて音の反響などを変化させる高度な音響体験ができる点です。

AirPodsが耳や頭部にパーソナライズされたオーディオ空間を提供するのと同様に、Vision Proはさらに一歩進めて、生活環境のコンテクストをも考慮に入れ、音を動的に変化させる能力を持ちます。これは、これまでのデジタルオーディオにはなかった新しいアプローチです。

耳元の小さな膨らみがめっちゃいい音を鳴らす

(ただ、完全な開放型ですので、音漏れには注意が必要です。指向性が高いとはいえ、結構漏れます。)

音がインテリアになる時代へ

これまで音楽や環境音は、私たちが意図的に選択し聴きたいと思った時にのみ聴くものでした。しかし、Vision Proと空間オーディオの革新により、音空間はもはや私たちの選択を待たずに、場所や状況に合わせて自然に現れるようになります。たくさんの音を部屋のインテリアとして置いておくことが、当たり前の未来が来るかもしれません。

Vision Proは、エリック・サティやブライアン・イーノが目指した「家具の音楽」や「環境音楽」のように、音のあり方を本当の意味で"そこにある"、インテリアのように生活環境を構成するための要素に昇華させた、初めてのデジタルデバイスではないでしょうか。

音が聴覚体験を超え、感情や記憶、そして場所の感覚にまで影響を及ぼし、音楽や音響が単なる背景や装飾ではなく、私たちの環境と深く結びつき、個人の体験を形成する大切な要素としての役割を果たすことになるでしょう。

気持ちに寄り添ってきた音楽達が、場所性や環境にも寄り添うようになるのはとても感慨深く、空間コンピューティング時代の音体験を設計していけることにワクワクが止まりません。

MESONが生み出した新しい概念「情報雑貨」

MESONは空間コンピュータと空間オーディオが生み出す可能性にいち早く着目し、インテリアのように振る舞うデジタル情報そして音空間、「SunnyTune」をリリースしました。

生活空間に佇む、情報雑貨

スノードームのような小さな佇まいの中に、場所と連動した天気が現れます。「今日はちょっと風が強いけどいい陽気だね」「寒いから雨が夜更け過ぎに雪へと変わるかもね」というように、天気を情報として見るのではなく天気を体感することができます。アプリを雑貨やインテリアのように置く時が来ました。

空間オーディオにもこだわり、20種類以上の環境音をブレンドして天気の予感を部屋に持ち込めるようにサウンドを設計しました。折々の天気を是非耳でも体感してみてください。

小話:PV内で流れている曲はパルムグレンというフィンランドの作曲家が作曲した「粉雪」という天気にちなんだピアノ小品です。フィンランドの音楽はシベリウスしかり、自然に満ちた作品が多いですね。

Vision Proのオーディオをぜひ体験しませんか?

MESONでは、オフィスなどでのVision Pro体験会実施や企業向けの研修プログラムの提供を行ってます。是非、未来の生活を体験頂き、私たちと一緒に思考しましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?