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雨上がりの追憶

朝からしとしとと降り続けた雨もやみ
ようやく空が白みはじめたころ
まだ湿って、少しもやのかかった道で
赤や黄に変わった木々の葉が
鮮やかに浮かび上がる
それまで等閑視してきた街並みが
ふいに一枚の絵画のように
記憶のなかに刻まれてゆく

わたしはこの現象をどこかで覚えている
そう
君とであったときだ
きみだけに焦点が当てられ、その場所に浮かび上がった
きみ以外のすべてのものはぼやけて
わたしの記憶のなかに深く刻み込まれた

なるほど恋とは盲目なのだな。
それまで見えていなかったものが見えるようになる一方で
それまで見えていたその他すべてのものが見えなくなってしまうのだから。
それでもあの美しさを手にする前と後とで
わたしの世界は反転した
それがよかったのか悪かったのかは分からない
だけど1つだけ確かなことは、それを知らずに生きることは
酒の味を知らずに一生を終えるのと同じだということ。

今日もわたしはほろ酔いのなかで あの時のきみを夢みるだろう
涙はとっくの昔に枯れたというのに
深く記憶に刻み込まれたきみの姿は、いまも美しく、だけど朧気で
もの哀しく わたしの胸を締め付ける


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