少女Aと少年Q
「お前の気持ちはようわかった」
後ろを振り返ると鬼の形相をした先生が立っていた。
少女が生徒たちに向かって聞かせた大演説は
10代の少女の やり場を失ったいらだちの吐露でしかなく
理屈をこねた大層なものでもなんでもなかった
知らない言葉を知ったふりをして
周囲がそれをありがたそうに味わってくれるものだから
そのナルシシズムに突き動かされて
うそぶいていたのである
当の本人は、自ら発する言葉の空虚さを知りながら
きみたちにはその精神が行くつく先も分からないだろうと
たかをくくっていた
生徒のなかの1人の少年がいった
「そこの嘘つき
おまえにいっている。そこの大嘘つき。お前が並べた言葉は
シャワーのよう心地いいが すべて流されて あとには何も残らない」
少女は笑いもせず少年の目をみて、さらに言葉を加速させていく
少年の目は、後ろから近づく先生の気配ににんまりと笑う少女の顔を逃さなかった。
「お前の気持ちはようわかった」
少女のいらだちは最高潮に達した。それと同時にあわれな法悦に浸る。
いまや少女を完全に理解するのは少年だけであった。
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