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ぼくたちはそこまでいうほど

ぼくたちはそこまでいうほど
愛し合ってったわけじゃないけど
君のいない世界は
どこか物足りなくて
ありふれた毎日にうんざりして
電車からビルの蛍光灯を眺めた夜
月灯りはどこかに消えて
ざわつくのは人込みだから
真実の愛だとか偽物の恋だとか
そんなことはどうだっていい
この胸騒ぎを止めれるのなら

ぼくたちはそこまでいうほど
仲が悪かったってわけじゃないけど
ふたりでいる世界は
どこまでも平凡で
ありふれた毎日は愛しかったはずで
浮足立って駅まで走った夜もあった
月灯りふんわり降って
ざわついたのは君のせい
ぼくらの関係をどう呼ぶかなんて
そんなことはどうだってよかった
この時間が続くのなら

ぼくたちにはロマンスなんて
似合わないと思っていた
あわてふためいた夜には
すべてが終わっていて
取り繕うこともせずに
かっこつけた
涙がでないことにほっとして
目覚めた朝は
いつもよりも早い電車に乗った
後ろから呼びかけられた気がして
振り返っても 
そこにはもうなにもなくて
空っぽの乾いた夜
見上げた月灯りがにじんだ


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