届かない蛍光灯と心の距離
好きな人と、同棲をしている。
1LDKの充分すぎる広い部屋で、必要最低限のモノたちと共に暮らす。収納はほとんど趣味に使うものたちで埋め尽くされ、それ以外の荷物はほぼない。
小さな観葉植物を買って少しずつ育てる。
そんな穏やかな生活が落ち着く毎日。
実は、以前も同棲をしていたことがある。
その時は今よりもうんと狭く小さな部屋で
慎ましやかに暮らしていた。
当時、ある日突然別れを告げられ、家を解約する日まで相手は実家に帰った。
その間、私は2人の家に1人だった。
タイミング悪く体調を崩して寝込み、
さらにタイミングが悪く、蛍光灯が切れた。
当時の家は、狭いわりに天井だけは高く、蛍光灯は、到底届かない高さにある。けれどその時の相手に、私はそれを報告して頼ることすらできなかった。正確には、頼む勇気もなく、連絡する気も起きなかった。
3.4日、電気すらつかない家で過ごしたまま、別れの日を迎えた。そんな状況で3日も過ごすと、「こんなことすら言えない関係だったのか」と、呆れて笑えて、一気に冷めた。
蛍光灯に届かないのと同じくらい、2人の心には距離があったように思う。
つい先日、私は今の家でも体調を崩した。
私は同棲している彼に、何かいる?と聞かれ、「ゼリーとか食べたい。」と言って、スーパーに買いに行ってもらった。
今なら、たとえ喧嘩して一緒にいなくても、
蛍光灯が切れたら連絡して言えるだろう。
「届かないから、替えてくれる?」と。
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