見出し画像

人生で初めて映画館で号泣した話

先日、映画『東京リベンジャーズ2 -決戦-』を観に行った。


鑑賞後、様々な感情が湧き上がってきて、感想を書かずにはいられなかったのでここに記そうと思う。

出演俳優の不祥事に関しては様々な見解があるけれど、映画そのものはそれとは切り離して考えたい。
永山さんも含め、出演者やスタッフのみなさんのこれまでの努力がなかったことになってしまうのが、私としては一番つらかったので、無事に上映されて本当に良かったと思っている。



※以下ネタバレを含む表現あり


映画『東京リベンジャーズ』(以下東リベ)シリーズは、1・2 -運命- に続いて、今回で3作目である。
2は前編の -運命- と、後編の -決戦- の2部作となっている。

人気漫画が実写化、と聞いて初めは「どうせまた大コケするのでは?」と思ってしまった人も少なくないように思う。
元々東リベの原作ファンである私も、正直に言うとそちら側の人間だった。


ところがどっこい。
前作、前々作ともに映画館に足を運んだが、どちらも大満足の内容だった。
なんといっても原作の再現度がかなり高い。

キャラクターの見た目もそうだし、どの役者さんたちも一人ひとり、原作キャラクターの人間性や中身まで大事にしてくれているのが分かる。
そしてどう演じきればいいのか悩み抜いた結果、このような素晴らしいお芝居が完成されているのだということがひしひしと伝わってきた。


特に「東リベ2」で重要キャラとして描かれている、永山絢斗さん演じる場地圭介、高杉真宙さん演じる松野千冬。

まずお二人の容姿がぴったりすぎて、本当に原作の世界から飛び出してきたかのようである。
キャラクタービジュアルが発表された時点で私はすでに感動してしまった。

見た目だけでなく演技も秀逸だった。
それを語る前に、東リベをご存知でない方に向けて、あらすじを簡単にご紹介。



【超ざっくりあらすじ】
冴えないフリーター生活を送る主人公の花垣武道。ある日、中学時代に恋人だった橘日向が、犯罪組織「東京卍會」(以下東卍)の抗争に巻き込まれて死亡したと知る。
そしてとあるきっかけからタイムリープの能力を手にした武道は、日向を助けるために過去に戻る。そこで日向の死の原因である、東卍の抗争をなくすため、自ら東卍に入り、未来を変えようとする。

そんな武道と日向の運命を握る東卍を、誰がどのようにして創設したのか。なぜ犯罪組織になってしまったのか。
それが今回の東リベ2で明らかになる。
東卍創設メンバーたちの複雑すぎる人間模様により、徐々に変化していく東卍。果たして武道の運命やいかに…。



序盤から非常に濃いストーリーなので、あらすじをなるべく短くまとめるのがこんなにも難しいとは…。
続いて、今作で鍵を握るキャラたちがこちら。



【東リベ2・重要キャラ超ざっくり紹介】
●場地圭介(永山絢斗)
東卍の創設メンバーで、元東卍壱番隊隊長。
突然東卍を抜け、敵対組織へと移ってしまうが、それは仲間を思ってのやむを得ない行動だとのちに明らかになる。一虎とある事件を起こしてしまい、以降ずっと一虎を気にかけている。

●松野千冬(高杉真宙)
東卍壱番隊副隊長。場地を尊敬している。
場地が敵対組織に移ったのは、場地なりに何か考えがあるからだと気づいている。ボコボコにされようがひどい言葉を投げかけられようが場地をずっと信じている。

●羽宮一虎(村上虹郎)
東卍の創設メンバー。場地とともに起こした事件により少年院に入っていた。
ある理由から、東卍総長の佐野万次郎(通称:マイキー)を憎んでいる。今は東卍の敵対組織のNo.3で、東卍との抗争でマイキーを殺そうとする。



至極簡潔に紹介したが、彼らの魅力をお伝えするには、この説明だけでは不十分なので、ご存じでない方は、ぜひ原作や映画を見ていただきたい。

東京リベンジャーズという作品は、一人ひとりのキャラクターの人間性や背景がとにかくよく出来ている。


今回は、以上で紹介した3名の演技について感じたことを書いていきたい。


まずは永山絢斗さん。
永山さん演じる場地は、一見すると東卍を裏切ったかのように見える。
しかし実際は稀咲鉄太という、参番隊隊長として東卍に潜り込みながら敵対組織とも通じている本当の裏切り者を、場地自らが敵対組織の人間として討つことで東卍を守ろうとしていたのである。

その場地の、裏切り者を演じながらも仲間思いで優しい、本来の人間性が滲み出ているような演技が本当に素晴らしかった。

私が最もそう感じたシーン、それは東卍と敵対組織との抗争が始まる場面だ。
東卍副隊長のドラケンが「場地を返してもらう」と一虎に言い放ったときの場地の表情。

視線を斜め下に向けて、少しの戸惑いを感じさせる、それでいて場地の内面に未だ蔓延る、憂いを映したかのような絶妙な表情だった。

原作ではここで場地の表情は描かれていなかったため、あの象徴的なシーンが補完されたようで胸が締め付けられた。


そして松野千冬を演じる高杉真宙さん。
やはり圧巻だったのが、場地さんのお墓参りの場面。
生前の場地さんを思い返し、途中で堪えきれなくなって涙するあの高杉さんの演技は紛れもない千冬だった。
あのシーンで最も涙腺が持っていかれてしまった。

羽宮一虎を演じる村上虹郎さんも凄まじかった。
このキャラクターも、様々なバックグラウンドがあり、その人間性は掴みきれない。
複雑な家庭環境で育ち、ある理由から殺人を犯して少年院に入った経験がある一虎は、精神的に非常に繊細で脆い一面を持つ。
村上さんは、その危うさを見事に演じきっている。


ただ心配なのが、原作は読んでおらず映画のみを観た人にとっては、一虎がただただ未熟で最低な人間に見えているのではないか、ということである。

抗争が終結を迎えるシーン。
原作では、近づいてくるパトカーのサイレン音に、その場にいたみんなが引き上げていく中、一虎はその場に残り、場地を殺めてしまった責任を取ることをマイキーに告げる。
けれど映画ではその場面がなかった。

その後、留置所にいる一虎と、面会に訪れたドラケンとの会話シーンが流れる。
ここでも一虎の「懲役10年は覚悟しろって言われたよ。短いくらいだよな…」「もう逃げねぇ」「今度こそちゃんと更生するつもりだ」などのセリフが軒並みカットされていた。
したがって抗争後の、一虎の内面の変化を感じづらいような気がした。


とは言え、原作でも屈指の人気を誇るこの濃いエピソードが、映画としてここまでまとめ上げられているのは本当にすごい。
その上で、ものすごく贅沢な意見を言ってしまっていることは重々承知である。


なので映画を見て、そのあたりに疑問を感じた方は原作を読むことを強くおすすめする。
そしてその後にもう一度映画を観てみてほしい。

私は最低でもあと3回は観に行くつもりだ。
あまりにも怒涛の展開だったので、見落としていた部分をきちんと見直したいのもあるし、何度だって見たいシーンが山のようにある。

原作再現度の高さについては先に触れたが、所々の、原作にはないオリジナルのシーンも魅力の一つである。
新たに別の解釈での、東リベの物語を垣間見ることができたような気がして、いち原作ファンとしても嬉しかった。



【余談】
人生で初めて映画館で号泣した、となにやら大仰なタイトルをつけたが、社会人になって急に涙腺が緩くなってきたというのは否めない。

テレビで流れる見ず知らずの人の感動エピソードでは、ほぼ毎回泣いてしまうようになった。
また、アニメやドラマを見ていると、感動シーンでもないのに、登場人物がちょっと良いことを言っただけでウルッとくる。

けれど人前では別だ。
映画は決まって一人で鑑賞するようにしているけれど、席を一つ空けた隣には他の人もいる。
号泣なんてした日には、映画が終わって劇場が明るくなったとき、ずぶ濡れマスク女が露わになってしまう。

まさか今回こんなにも泣くとは思わなかったので、ティッシュもハンカチも用意していなかった。

友人曰く潔癖症の私は、普段ほとんど商業施設のトイレを使うことはないけれど、この日ばかりは一目散に駆け込んだ。

この記事が参加している募集

今こそ読みたい神マンガ

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?