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坂元裕二さんの作品には美しさが溢れている。『初恋の悪魔』を何度でも見返す

わたしは坂元裕二さんの作品が好きだ。

そのなかでも、昨年放送されていたドラマ『初恋の悪魔』が
群を抜いて大好きだ。


警察署に勤める4人の主人公は、それぞれ捜査権を持たない役職である。

そんな4人が自宅で勝手に捜査会議をするというストーリーから始まるが、ミステリーもコメディもラブストーリーも織り交ぜた内容で、回を追うごとに引き込まれていく。

そして、やはり坂元裕二さんの作品には欠かせない名言の数々。日常的な会話で、これほどさりげなく名言を散りばめられる坂元裕二さんのセンスに、わたしは心を奪われている。


なかでも第5話がお気に入りで、録画を消せないでいる。

ひときわクセの強い主人公は、林遣都さん演じる鹿浜鈴之介。

子どものころから周囲に馴染めない鈴之介は、大人になっても職場では浮いた存在だった。

人生で友達と呼べる人は、1人もいない。


困っていたご婦人を手助けしたことから、そのご婦人の家で食事をしたり他愛もない会話をしたりと、友達と過ごすような日々を送るようになった鈴之介。

鈴之介は、そのご婦人と一緒にいるときは「やさしい気持ちになれる」と密かに思っているのだ。

そのご婦人もまた、人生に嫌気がさしていたタイミングで鈴之介と出会い、憎んでいた世の中に対する思いが徐々に消えていく。そして自分自身がこの世を恨んで生きていたことは棚に上げて、鈴之介に人生についての話をする。

「世の中を恨む悪魔になっちゃだめ。自分らしくいれば、いつかきっと未来の自分が褒めてくれる。僕を守ってくれてありがとうって」

そんなご婦人との時間も、不幸に見舞われ長くは続かなかった。

また孤独を経験する鈴之介だが、自宅で捜査会議をするようになって、鈴之介には3人の仲間とも呼べる存在と出会うことができた。

その4人の関係性が、友達へと変化していく過程が切なく、いとしく、そしておもしろい(坂元裕二さんの作品は感動だけじゃなく、おもしろさのセンスにも溢れているので目が離せない)。

鈴之介がご婦人から受け取った言葉に納得ができたとき、子どもの頃の自分に向けて言うのだ。

「大丈夫。自分らしくいれば、いつか未来の自分が褒めてくれる。僕を守ってくれてありがとう」




いまの自分に折り合いをつけて、長いものに巻かれて、本当の気持ちを我慢して生活したほうが、正直ラクなのではないかと思うことはあるのだけど、それでもやっぱり自分らしさを大切にしたいと思うわたしには、とても刺さる言葉だった。

わたしらしく生きることは、単なる強情でも身勝手でも何でもない。わたしを守ることなのだ。


#やさしさに救われて

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