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Mission/Visionの重要性がやっと腹落ちした

A1Aを創業して1年ほどは「Mission/Visionが意思決定の指針になる」という言葉がどうしても腹落ちしていませんでした。
しかし、様々な課題が発生するにつれ「これらの課題は意味のあるMission/Visionがないことに起因するのではないか?」との考えに至るようになりました。

この記事ではどのような過程でMission/Visionの重要性が腹落ちしたか、そしてなぜ1年間その重要性に気づかなかったかをまとめたいと思います。

簡単に自己紹介

A1AでCTOをしている佐々木です。
創業から2年近くが経過し、ここ数ヶ月は戦略解像度をあげることやプロダクトコンセプト策定など思考に割く時間が長くなってきました。

その過程で自分なりに「こういうことか!」と腹落ちしたことがでてきているので、せっかくなら言語化しアウトプットしていこうとnoteを始めることにしました。

最初の記事はMission/Visionについてです。(注意:A1AのMission/Visionは再定義中です。)

Mission/Visionの重要性がどうしても腹落ちしなかった


「Missionはあらゆる意思決定の指針になる」

そんな話はよく聞くし、会社経営するならそれが重要だというのはなんとなく同意だったので、いろんな会社のMission/Visionを見ながら自分たちも考え始めました。

こうして「Visionらしきもの」は出来上がったものの、いまいちピンとこないし、キレイだがパワーを感じない、そんな感覚がありました。

そして案の定、日々の意思決定に役立つこともなく、誰かをひきつけることもなく、社員のエンゲージメントを高めることもなく、あるのかないのかわからない状態で会社は進んでいきました。

売上が立ちだした頃、会社で色々な問題が顕在化しはじめました。特に大きかったのがプロダクト開発の意思決定速度の低下という問題です。

これに対し、都度議論に時間をかけて合意形成し進めていきましたが、「これはなにか深いところに課題がありそうだ」という感覚を強く持ち始め、最終的に「意味のあるMission/Visionが存在しない」という課題に行き着きました。

それによってMission/Visionの重要性や役割というものが腹落ちしたと同時にこれまでなぜ重要性が腹落ちしなかったのかが分かってきました。


Mission/Visionが役に立つほど大きな意思決定をしていなかった

すべての原因はここにありました。よく「Mission/Visionは意思決定の指針になる」と言われるため、我々も「意思決定の役に立つMission/Visionってなんだろう?」と考えながら策定していました。

しかし、どう考えても役に立ちそうに思えない。

例えば、顧客の要望をもとに機能開発をするときに「果たしてこの機能はMission/Visionにつながるかな?」なんて言うイメージが全然わかない。

サイバーエージェントさんだと21世紀を代表する会社を創るというVisionを掲げていますが、「果たして一括でインポートできる機能は21世紀を代表する会社を創ることにつながるかな?」なんて言うイメージが全くわかないわけです。

それもそのはずで、こういうVisionやMissionはもっと大きな、最終的に合理では決めきれない意思決定において役立つものだからです。
(サイバーエージェントさんだと新規事業を数多く起こしているため、このVisionが役立つシーンは非常に多いのだと思います。)

言い換えると僕らは大きな絵を描いていなかったわけです。
創業初期は、MVPを作って仮説検証し売上を立てる、ということを優先していたため、「売るためにはどういう機能をつければ良いか」程度の意思決定しかしていませんでした。

しかし、売上が立ち始め、その先の事業・プロダクトの未来を大きく描こうとしたときに「そもそもこの事業領域で行くんだっけ?」「Vertical SaaSで行くの?Horizontal SaaSで行くの?」など、改めて問い直さないといけない意思決定が多くありました。

合理で決められない意思決定の指針になる

例えば、以下の意思決定は合理だけで決められるとは限らないと思います。

・100社でARR100億を目指すのか
・10000社でARR100億を目指すのか

ARR100億を100社で目指す場合にかかる時間と10000社で目指す場合にかかる時間が異なれば、それぞれが与える市場へのインパクトも異なる。そもそもARR100億を目指すんだっけ?という話もありますよね。

こういう意思決定に対し「WHY?」と深ぼっていくと、どうやら合理で決めきれない部分があるぞということに気がついてきました。

それとともに、これが決まっていない中でプロダクトマネジメントのような未来を描く仕事はまともにできないということも分かってきました。(前提条件がなにも決まっていない状態でプロダクトの未来を描いたらなんでもありになっちゃいますよね)

そうしてMission/Visionの役割を以下のように理解できました。

合理で決めきれない意思決定の指針 = Mission/Vision

また、これこそが創業メンバーや会社という人格が持つ「意思」を表すものだとわかりました。うーん、いままで視座が低かった。

振り返るとこれまでは漠然とした何かに向けて「うまくいくためにどうすればよいか」と議論をしており、そこに揺らがない「意思」や「思い」が存在していませんでした。
逆にこれらを表現できると、メンバーの議論の前提が揃うためより質の高い議論ができるようになります。

形にとらわれない

MissionやVisionの重要性が理解でき、それらを定義しようとしたときに世の企業はそれぞれがそれぞれの整理の仕方をしていることに気がつきます。

例えば企業理念・Mission・Vision・ブランドステートメントなど。
さらにMissionぽいものがVisionになっていたり、VisionぽいものがMissionになっていたり。

これもしばし混乱しましたが、形にとらわれないようにしようという結論になりました。

MissionやVisionは合理で決めきれないことを決めるときに正しく意思を反映させられるものであれば良い。
それができるのであれば、自分たちなりのMission/Visionの役割が定義できれば良い。

そうして僕が整理した良いMission/Visionの条件は以下です。

1. 創業者(およびボードメンバー)が本心で強くやりたいと言える
2. 本心と異なる耳障りの良い綺麗事やカッコつけではない
3. これからもその本質が変わらない(揺らがない)


これらが満たされることが重要だと考えました。

おそらくスタートアップを始めた人ならなにかしら強い思いはあると思います。それがたとえ「大儲けして大金持ちになりたい」であっても、一番強い思いなのであれば臆せず出すべきです。(表現は工夫するにしても)

そうでないと、その世界を本気で実現する会社だと考え入社した社員に対し、いざという局面で経営者の意思決定が乖離してしまうことになると思います。

MissionとVisionどっちも作る?

Mission/Visionで大事なのは、これまで述べてきた良いMission/Visionの条件を満たし、より変わらないものが上位に来るということだと考えています。
(変わらないものに依存するというシステム設計の大原則と同じですね。)

そのため、MissionとVisionは両方を掲げてもよいし片方だけでもよい、と今のところ整理しています。

Visionを上位に掲げるとき
ピボットしても複数事業を展開しても変わらずに実現したいと思える世界がある場合。
Missionを上位に掲げるとき
ピボットしたら実現したい世界も変わるが、逆にピボットしても変わらないやりたいことがある場合。

※ここではVisionを「実現したい世界」、Missionを「すること」と定義しています。

そして、この考えはMission/Visionだけでなく他のあらゆる意思決定においてもあてはまるはずで、より上段の変わらないものから何らかの枠組みで整理し、自社なりの言葉で掲げればよいのだと思います。(例えばプロダクトビジョンなど)

A1AはVisionありきの起業ではなかった

A1Aではどうだったかというと、Missionが先にくる会社だということがわかりました。

A1AはVisionありきでの起業ではなく「こういう方向性の事業をやりたい」というやりたいことの似たメンバーが集まって起業した会社です。

このことは最初、事業領域において原体験があるようなビジョナリーな会社に対するいくばくかのコンプレックスにつながっていましたが、上記の通り整理するとやりたいこと(=Mission)に関しては実は強い思いがあり、良いMission/Visionになり得ることがわかってきました。

そしてこの揺らがないMissionをもとに事業の大きな意思決定を行うことで、事業に対してのVisionができあがってきました。つまり、Missionが先に来てVisionが事業ごとに作られるという順番です。

(ちなみに個人的にとても好きなラクスルさんのVision「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる。」は、ラクスル・ハコベル・ノバセルと複数事業を作りそれぞれに事業のVisionを描いていることから、会社のVisionの性質はA1Aと近いのかな?と勝手ながら思っています。)

こうしてできたMissionはボードメンバーの強烈な意思を反映しており、良いMission/Visionの条件とも一致しているため、言葉では表現しきれないパワーのようなものを感じることができています。

採用面談でも「A1Aはこんな会社だ」というメッセージを分かりやすく熱く強く伝えることができるようになりました。

おわりに

Missionおよび事業のVisionの正式発表は代表の松原から出しますので、上記経緯を踏まえた上でどんなMissionになったのかご覧いただけたら嬉しいです。(ハードルをあげましたが、松原なら軽く超えてくれるでしょう)


かなり長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。

今回は大上段の話になりましたが、今後は「経営者としてのCTO」という役割からどのような意思決定や考えをしているか、そして実行しているかを書いていこうと思います。

それではまた!

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