見出し画像

あなたを知らない時に戻りたい


「友達と遊んでくる」

そう言って私は出掛けた。

久しぶりの外出。
久しぶりのお洒落。
久しぶりの街。

すごく気合いを入れた。

いつもの私より可愛い。

気合いを入れるためにスカートを履いた。
いつも以上に保湿ケアもした。


電車に揺られながら待ち合わせ場所に向かう。
この時間なら間に合う。
凄く楽しみ、ドキドキしている。
こんなにドキドキしているのはいつぶりだろうか。


数年ぶりに辿り着いた駅は工事中で、
方向音痴な私は迷子になってしまった。

すぐに私は連絡した。
「ここがどこか分からない。」

地上に出ることに成功した私は何通かやりとりをして
合流することに成功した。


「確かに分かりやすい髪色だ。」

私だとすぐ分かるように染めたチェリーレッド。
あなたは会ってすぐに褒めてくれた。


「どこに行く?」
「とりあえず歩こうか。」

私たちは歩き出した。


手を繋いでくれた。

ドキドキした。

身長差がある私に歩幅を合わせてくれた。

緊張して上手く喋れない私の話をゆっくり聞いてくれた。


コンビニに寄って飲み物を買って。


私たちはホテルへ向かった。


凄く緊張した。
緊張をほぐしてくるかのように沢山抱きしめてくれた。

ねぇ、なんでそんなに抱きしめてくれるの?

大事にしないでほしいのにな。


今まで感じたことのない圧迫感。
それでいてずっと優しかった。
優しく包み込むように、私の様子を見ながら。

楽しんでるあなたの姿。
ゆっくり、優しく微笑んでくれる。

私たちは微笑み合った。


ねぇ、今だけはあなただけの夢を見させて。
あなたに夢中になりたいの。
もうあなたの手で私の音を止めてほしい。


私はまだあなたに腹の内を見せれない。
全てを知られたくなくて私はお腹を隠した。


もうずっとここままでいたい。


あなたに伝えたらダメな気持ち。
言ったら終わり。

ねぇ、どうしてなのかな。

私はあなたの事を知らない時に戻りたい。

ごめんね。


やっぱり会わなければよかった。

会うんじゃなかった。

ごめんね。

ごめんなさい。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?