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願わくば大物に

年少になる息子初の学芸会。それは俺にとっても親として初の学芸会。
前回の運動会同様、俺は撮影者としての責務に震え上がっていた。


会場は市内にある市民ホール。サイズ感はZeppクラスの大箱である。
ステージまで距離がある事を事前に知らされていたので、レンタルで4Kビデオカメラを借りた。
なんとも便利な世の中だ。

しかしそんなオーバースペックな物をレンタルしてしまったがゆえ、余計にプレッシャーが掛かる。


会場入りすると慌ただしく動き回る先生方にも緊張感が垣間見える。
息子もさぞ緊張しているかと心配するも、全くもってマイペース。
いつも通り友達とハードに絡みながら楽屋へと消えていった。
「こりゃ将来大物になるぞ‥(親バカ)」
そんな事を思いながら見送った。

席に着き三脚を立て、ビデオをセット。
前日に操作方法は一通りチェックしておいた。
撮影の予行練習として、開会の挨拶をする副園長先生を30倍ズームで撮ってみる。
「あぁこの先生ってこんな顔してたんだな」
と再発見しちゃうくらいズーム出来るし画質劣化もほぼ無し。
4K30倍ズームハンパねぇ。


遂に息子のプログラムが始まる。
頭をよぎるのは、
「一生に一度の学芸会‥一生に一度の学芸会‥」
言わずもがな武者震いしていた。

1つ目はお遊戯。
幕が開いた瞬間、息子を探すもステージまでの距離が遠すぎて肉眼では捜索に難儀した。
己の近視をひどく呪った。
なんとか発見し、自慢のズームでガッチガチに寄りの絵を納める。
が、先ほど覚えたてのズームなのでスキルが追いついてなく、手ブレ補正が効かないレベルの揺れが発生してしまう。

大勢の大人と大量のカメラレンズを向けられているにも関わらず曲に合わせて堂々とした踊りを見せる息子。
その姿を目の当たりにして思わず、
「こりゃ将来大物に‥(2回目)」
親バカに拍車が掛かる。

毎日のように幼稚園で練習していたらしいので度々その成果を見せてとお願いしていた。
しかし何故だか一節しか見せてくれないので、こんなに踊れるようになっていたなんてビックリしてしまった。
親にサプライズしようと箝口令でも敷かれたのだろうか。


午後になり2つ目のプログラムが始まる。
次は合唱【線路は続くよどこまでも】だ。

ズッチャズッチャズッチャズッチャ♫ 
ズッチャズッチャズッチャズッチャ♫
幕が上がりイントロが始まるも、先ほどのプログラムより人数が多いために息子が見つからない!
お上と2人で、
「どこ?どこどこどこ??いないいない!!」
小声で焦っている様子が録画した動画にも収められていた。

ご自慢のズームで端から探して歌い出し直前でなんとか発見。あぶねぇあぶねぇ。
しっかりと顔が映るようにズームアップして歌い出しを待つ。

「歌くるぞ‥」
満を持して始まる歌。
『せぇんろはつづくぅよぉ!どぉこぉまぁでぇもぉーー!!』

息子は歌に合わせて体を揺らし、まるで歌詞を顔で表現するがごとくエモい顔で歌っている。さながら激情系のボーカリストのようだ。
歌声は遠すぎて聴こえるはずはないのだが、確実に聴こえた気がした。なんたる表現力。
「こりゃ将来大物‥(3回目)」
止まらない妄想。

無事に出演プログラムが終わり息子が観覧席に帰ってくる。
労をねぎらい感想を聞いてみる。
初の大舞台で満員御礼の観衆の中さぞ緊張しただろうと聞くと、
『全然緊張しなかったー!むしろ楽しかった〜!!』
なんて飄々と言ってのける。
「こりゃ将来‥(n回目)」
なんかもうすんません。


年少1年間の集大成としての学芸会。
普段の生活からは見えない成長した姿を大舞台で観られたのはとても感動的だったし、先生方のご指導にあらためて感謝出来た素晴らしい学芸会だった。

そして願わくば息子には俺のような平凡な人間より、なにかしらの大物になっておくれ!という親のエゴが滲み出てしまった1日だった。

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