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虚弱体質の肉体労働

「すっかり朝が冷えてきたな‥」
そう呟きながら仕事で使う機械の始業点検をしていた。

すると機械から異音が鳴り響いてきた。機械で使う材料が足りなくなった事を伝える音だ。
その材料は米袋のような形状で重さが25kgあり、これを胸元まで上げて機械の投入口へと補充する。これがまた持ちどころが無くて、やけに重く感じてバランスが取りにくい。

いつもの様に持ち上げながら体を捻った瞬間、『クキッ!』と腰の奥の方から音が鳴った。

「ん?なんか変な音がしたな‥」
そう感じながら背筋を伸ばしてみると、腰周辺の痛みで背筋が縮こまる。
「あっ!これギックリ腰やっちまった!」
すぐに察した。
なぜなら5年ぶり3度目のギックリ腰だったからだ。甲子園の出場回数みたいだな。

忘れもしない2回目(セカンドインパクト)のギックリ腰。
その日は仕事の疲れから腰に疲労感がある状態だったが、お上とディズニーランドへ行く予定があった。平日が空いてるからって、有給まで取得してのインパだった。

久々のディズニーランド、高まる気持ちで開園を待っている時に、
「そういや腰に疲労感あるから、ちょっとストレッチしておこうっ!」
そう思い腰回りを思い切り伸ばすストレッチをその場でおっ始めた。
その刹那、伸ばした腰が『グギッッ!』と悲鳴を上げ、そのまま立ち上がれなくなった。
そして歩くのもままならなくなり、お上の肩をギュッと握り締めながらヨタヨタとしか進めない。
せっかく平日でのインパだったが、泣く泣くオープン直前に帰る羽目になった。
ハイテンションで入園する人並みに、逆行する様に駅へ戻った時の切なさを今でもよーく覚えてる。

しかし今回の3回目(サードインパクト)はそれほど痛くないし、軽いギックリ腰だった。と思ったのも束の間、みるみる痛みが増幅してきた。

何とか周りに助けられながら仕事をしていたが、あまりの痛みにほとんど仕事にならなくなってきた。
ゴリゴリの肉体労働なのに同僚の女性社員に助けてもらい、感謝の反面情けなくなってきてしまった。

結果的にセカンドインパクト同様、歩く事すらままならない程になってしまった。
仲の良い同僚には、
『スゲェ!上半身が全く動かないで歩いてる!ASIMOみてぇ!』
と笑われたが、
「こちとら微動だにすら出来ない位にイテェんだよ!」
と言いたくても言い返せない程に痛かった。

座っていればなんて事ないのだが、立ち上がって動く動作の全てに痛みが走る。人間ってのは動作の中に腰を使う運動が多く入っているのを今更ながら思い知らされる。
ちょうど週末だったので翌日が休みで本当に良かった。

しかし翌朝起きるのに15分位掛かってしまった。どの体勢にしても痛みが走り、起き上がり方の正解を見出すまでその時間を要した。

なんとかベッドに腰掛ける所までは起きたものの、今度は立ち上がる事が出来ない。中腰がほんっっっとうに痛いのだ。
しかしここはギックリ腰経験者、この中腰さえ乗り越えれば立てる事を俺は知っていた。

「ぃやあ゛あ゛あ゛あ゛ああああっ!」
って叫びで痛みを誤魔化すように、中腰から勢いで背筋伸ばした。
何とか無事に立ち上がる事に成功したが、朝イチの時点で疲れきってしまった。体の中でも腰という部位の大切さをひしひしと感じる。

どうしてもこの工場現場の職業柄、かなり気を付けていても腰痛がつきまとう。先輩たちもみんな腰痛持ちが多かった。

元々頑丈とは言い難い虚弱体質にも関わらず、肉体労働をしていると、子供の頃に何度も何度も聞かせれた、
『ちゃんと勉強しないと将来大変な事になるよ!』
って言葉がやけに骨身に染みる。

当時はモヤっと話半分にしか聞いてなかったが、やはり親は子供の特性を見抜き、しっかり的を得た助言をしていたんだと今更になって思い知らされている。

嗚呼‥‥腰がイテェなぁ‥‥。

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