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風景画とわたし②



そう思ってから2年が経った。

色々な絵に挑戦していた。

人は変わっていくけれど
なかなか変わらないものでもあって

私は変わらず人物ばかりをかいていた。



2023年

ひょんなきっかけで美大の教授に
絵を見てもらう機会があった。

私の絵を一通り見終わった後。

手元に作品として残せるものがあることは
とても良いことだなと思います。
色々な絵が描けることは良いことですが
うーん、あなたは何を描いていると
1番自分らしいなと感じますか?
何を描きたいのかもっと考えてみると良いですよ。

言葉を選んでくれて伝えてくれたのは
とてもよくわかったけど
グサッと何かが刺さった痛さが残った。

だけど、しばらくしてから
今一度自分らしさについて
真剣に考えてみるのは良いのかも
と思うようになった。


けれど自分の中にある
向き合う方法や模索だけでは
もう限界を感じていた。
どうやったら私をもっと引き出せるのか
私らしい表現が生まれるのか
今までとは違う心へのアプローチ方法や
ワークのようなものを知りたかった。

そう思っていたら


keito hirakawaさんの
ART of teling という
自分らしさの概念が変わる
世界観の作り方という
ワークショップを行うという
案内を見てなんてタイミング!
探していたのはこれだと思い
すぐに申し込んだ。


私はこれをすれば変われるとか
これを買えば変われるとか
そういうワークや商品は苦手。

その学びに対する深い愛と
強い信念と意図がある人のもとでしか
学びたくないと決めている。

自分の頭で考え自己対話をすること
自分で何かを感じること
自分で自分を知ること
自分に体験させることでしか
深い部分で自分に変化をもたらすことは
出来ないと思っているから。


ケイトさんのワークは
想像以上にとても細かくて
苦戦しながらも一生懸命考えた。
ずっと使えるワークばかりで
本当に面白かった。


自分らしさを探す心の旅というのは
やってみる、探す、模索するに尽きる。
トライアンドエラーの繰り返し。


それでも見つからなければ
立ち止まる、失敗するも受け入れる。
その失敗すらもいつか形を変え
私だけのストーリーになるのだと学んだ。

自分と向き合う方法は様々だから
色々と知っていると色々な方向から
試せたり考えることが出来て良い。

今までの方法や
自分だけの模索では行き詰まりを
感じていたからとても助かった。


なにかを表現したり仕事するためには
自分らしさのようなもの
そのエッセンスをみつけるのは
必須なのだと今は思う。
方向性ともいうのかもしれない。

・すきなこと、やりたいこと。
・きらいなこと、やりたくないこと。
・出来ること、出来ないこと。

自分の軸を大切に生きるために
ここらへんを丁寧に整理する感じ。

自分の心の動きに繊細になるということ。
自分の意見を持つということ。
それが唯一無二の自分らしさに、世界観に繋がる。



その後も相変わらず
細かい模索を繰り返し、試行錯誤を経て
ある日突然絵は生まれた。


飲み終わったコーヒーのコップの
ふちをぼーっと眺めていたら
やわらかな西日がさしてきて
綺麗だなぁと思った。
しばらくその光を眺めていた。

なぜかその瞬間
この今私だけが見ている風景を
描きたいと思った。

なんてことない
どこにでもあるような
室内の静物画を描いた。

なんてことない
ただの日常の一コマを。


ああ、これは
私が描きたかったものかもしれない。
自分らしいものにとても近いと感じた。
描き続けたい作品だと思った。

そしてそれをインスタにのせた。
16:47とタイトルをつけて。



すると、デザイン事務所の
石渡さんから連絡がきた。

eimiさん、こんな絵が描けるのですね、と。
このシリーズを作り続ける
お気持ちがあれば
ポストカードやカレンダーを作りませんかと。

そうして紙雑貨の制作が始まった。


カレンダーを作り始めようと
打ち合わせが始まって

eimiさんの作品の良さや
伝えたいメッセージは
今全然伝わっていません。と告げられた。
今一度全て白紙にして立ち止まって
深く自分と向き合って考えませんか
これからのために、というお話だった。


色々な作家さんの
アートディレクション、デザインを
行なっている石渡さんからの真剣な意見。
今までの私の中にはなかった考えを
教えてもらった。

2023年色んな人から同じようなことを
言われている。

本当に何かを変えなくてはいけない
メッセージのようだ。そう思った。

まだまだどこか浅いのだ。
もっと深く潜らなくては。

自分を変えるって痛い。とても痛い。

今まで信じていたこと
これが良いと思っていたこと
自分だと思っていたもの
それが全部、幻だったみたいに
消えてなくなる可能性を秘めている。

あまりの痛さに、怖さに、未熟さに
悔しくて泣いた。

その後私は殻に篭り、自分ととことん
対話することに決めた。

深海に底つくまで潜ってやる、と。

私にとって絵とは?
詩とは、言葉とは、作る意味とは
アートとは、大切なものとは
幸せとは、自分らしいとは
本当にやりたいこととは

そう掘り進めていくうちに
あまりにも考えすぎて
哲学的になりすぎてしまい
鬱状態になっていた。

大切に育てていた植物たちに
水すらあげられなくなり
ほとんど枯れてしまった。

あまりにも答えがみつからなくて
苦しくて友人たちに連絡し
助けを求めたりして。

3週間ほどそんな状況が続き
すこし自分なりの答えのようなものが
集まってきて深海から海面へと浮上した。

デザイナーの石渡さんに
戻ってきましたと連絡をした。
考えたことを伝え話し合った。

そしてカレンダー制作は再スタートを切った。

12ヶ月の絵をラフに描き
軽く色をつけたものを
どんどん描き進めた。

5月の絵と8月の絵を見た
石渡さんから

eimiさんがこんな風景を
描く方だったなんて知りませんでした。
これ…思い切って
全部風景画にしてみませんか?
と、提案があり

もう他の絵は違うもので描き始めていたが
私もその方がワクワクした。
だからあっさり描いた絵を手放した。

12ヶ月風景画のカレンダーなんて…
今まで風景は苦手だと逃げて逃げて
全然風景なんて描いてきてないし
本当に私に描けるのかなと
一瞬不安になったけど

ワクワクする、見てみたい気持ちに
乗っかってみたかった。
どんなものが出来上がるのか
未知すぎて私自身が知りたかった。


では、風景画のカレンダーにしましょうとなった。

石渡さんとのものづくりの楽しさは
こういうところにある。

より良いものになると見えたら
2人でワクワクしながら
出来るかわからないけど
きっと出来る。と頷き合いながら
舵を思いきり切る感じ。

あと、言葉に嘘がない。
良いものは良い。
何かが違うズレている時は違うと
的確な意見で軌道修正してくれる。

それが本当に心地よく楽しい。


そして描いては描いてを繰り返し

12ヶ月分の絵が揃い

紆余曲折がありながらも

それぞれに詩が降りるのを待ち

タイトルが決まった。


出来上がったカレンダーをみて
静かにはしゃいだ。

これは良いカレンダーが出来た気がする。
と、早く見てもらいたくてワクワクした。



結果、カレンダーは
委託販売分もネット販売分も
ありがたいことに完売となった。



誰かのもとへ届けられたこと

気に入っている、何度も眺めている

と感想をもらえたこと

大切にしますと言ってくれる方がいること

もうこの出会いや体験が

何100倍も私にとって本当に大切なことで。



また、自分自身が

これは良いのが出来たかもと

納得できるまでに

迷うこと試行錯誤することの

尊さと大切さを知った。


自分が納得出来るものを

精一杯作る、やる

ってとても大切なこと。



2023年とても心が痛かった。

だけどたくさん削いで

より私は、私らしくなった。


そして今までとは違う

新しい絵と表現に出会った。


ずっと人物に熱を注いだ私にとって

思わぬ方向からの出会いに

私自身が驚いた。



今は逆に、人物をどう描いたら

納得したものになるのか

わからなくなった。

日常マンガの絵以外

何を描いてもあまりピンときていない。

だからまた模索している。

新しい何かがこちらもまた

きっと生まれるのだと思う。



すべてがつながっていった時

私は一体どんな絵を描いているのだろう。

その日がふと訪れるのを

楽しみに待ちながら

日々をいつくしみ、

今自分に出来ることを重ね、淡々と歩みたい。



「 eimiさん、これからも
たくさん絵を描いてください。

eimiさんの心の中の風景に、
eimiさんと同じように
心が動いたり、癒されたりする人たちが
いらっしゃいます。

その人たちがいる限り
eimiさんはひとりじゃないし
世界ははてしなく広がって
素敵な出会いが待っています。」

とまっすぐな石渡さんの

愛ある言葉が届いた。

2023年の終わりに。

記憶のかなた 2024年カレンダー

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