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【絶対写真論】Chapter5 トランス・ディメンション

本章では、写真における「次元」について考察している。これは、M1のときに研究していた次元を踏襲した内容となっている。


芸術と次元との関係性。ルネサンス期における正確な線遠近法による3次元空間の2次元(平面)化から、キュビスム・未来派による4次元の表現。絵画のキャンバスという平面上で、いかに次元表現を拡張できるかが、これまで追求されてきた。

この芸術と次元とのコンテクストを踏襲し、さらなる高次である5次元(余剰次元)に着目して制作したのが《Extra Dimension》であった。


さらに本章では、表現としての次元だけではなく、概念、および物質性について着目している。


まず物質性。すなわち写真のプリントや表示(投影など)においては、2次元もしくは3次元しかなり得ない。3次元世界の住人であるわれわれ人間は、どうあがいても4次元以上の高次な世界をみることはできず、人間が認識可能な3次元以下でしか認識することはできない。

2.5次元といった表現も2次元のものを3次元的に、もしくは3次元のものを2次元的に表現するその中間、といった「言葉」の概念を拡張したにすぎず、物質的には2次元、もしくは3次元でしかない。

物質的な次元は、なにをどうあがいても2次元もしくは3次元にとどまるのである。


となると、写真において次元を拡張しようと思うと、概念的な次元の拡張しか残されてはいない。そもそも、写真=2次元(平面)的な表現であると信じられているが、はたして本当に「2次元」しか存在し得ないのであろうか。

次元の考え方には数学的な次元と物理学的な次元がある。3次元(XYZ方向)までは両者とも同義であるが、4次元目になると扱いが変わってくる。

数学における4次元目は、XYZにもうひとつ別の「軸」が加わる。

一方で物理学における4次元目は「時間」、すなわち空間軸に別のパラメータである時間軸が加わり4次元となる。

物理学的な次元に即すると、基準となる次元(実空間なら3, 平面なら2)に、独立したパラメータが加わることによって、次元を増加させることを意味する。

こうした点に着目すると、写真の「次元」とは本来「12次元」としての表現方法であることを本書では提唱した。

一方で、デジタル写真における画像データ配列に着目すると、写真とは「1次元」であるとみなすこともできる。


写真表現における次元的な「拡張」は、物質的な観点からすると将来革新的な技術が確立されようとも、拡張されることはあり得ない。それは、われわれ人間は3次元世界の住人であり、3次元以上の高次を垣間見ることは不可能だからである。

拡張可能な領域は「概念」としての次元の拡張であり、新たな視点によって写真=2次元から拡張する可能性のみが残されている。本章もまた、ステレオタイプな写真の次元の拡張を試みた。




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