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【絶対写真論】Chapter4 マルチ・レイヤー

写真におけるレイヤーとは。馴染みがあるのは、Photoshopなどを用いる際、元画像の上にトーンカーブやレベル補正といった調整レイヤーを重ねていき、最終的にレイヤーを結合することによって1枚の「写真となる」。

銀塩写真におけるフィルムは、フィルムベース層を基底に、ハレーション防止層、乳剤層、保護層といった複数の層によって構成されている。

印画紙も同様に、ベース材(紙)の上に吸着層や光沢層などの層構造によって成り立っている。

写真に表象するイメージはどうであろうか。手前の被写体と奥側の被写体とが存在することによって、レイヤー的な配置が見てとれるであろう。

画像データを表示するモニターは、偏光板、液晶層、ガラス基板などによって構成されている。


このように、記録媒体、表示媒体、および表象するイメージなど、写真に関するものは「複層構造=レイヤー」によって構成されていることがみてとれる。

これは、実世界において厳密には平面の物質は存在せず、立体的な物質をある一方向からみることによって、それを「平面」として捉えていることを意味する。

逆説的にいえば、平面を積層させることによって、それを立体として認識することが可能なのである。

こうした複層構造に関する状態を「写真」として提示したとき、どのような表象となるのかと考え、制作を実施した。


これは、Chapter2で触れた「構造異性体」と同様に、本Chapterで制作した作品もまた、元データと制作した写真とは化学式(各ピクセルの色情報)は同一である一方で、示性式(ピクセルの配置)が異なっている。

しかし、最終的なイメージはChapter2とは明らかに異なっている。


私は提示したいテーマに応じて写真となるためのアルゴリズムそのものを構築しており、根本的にその仕組みが異なっているためである。しかし、あくまでアルゴリズムは写真を生成するための「手段」にしかすぎない。ただし、この「手段」の違いによって、最終的なイメージが変容するのである。

新たな写真とは、撮影という行為によって生成されるのではなく、新たなアルゴリズムがその本質的な役割を担っているのである。




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