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愛さえなくなる前に

呼吸ができなくなった夕方に。全てが終わったとホッとした。

『もう何も気にすることはないよ』『もう自分をあいしていいよ』と。

時代は豊かなもんで、遠く離れていても見たい人や会いたい人に会える。それで気をあやしていた。

またその逆も然り。それで崩れ落ちることも。

知りたくないことまで強制的に目に入れる始末。

その奴隷になったワタシも惡で。

四角の光に呑まれてしまった。

どうでもいいことばかり気になってしまう。

かと言って自分のことは知ってほしくないと矛盾。

''愛されたくない''そう思った。

貪欲なものでどんどん深みに沼っていく。

彼女の姿から性格、話す言葉や好きなものまで目に入れていく。食べていく。

そして知ってしまう。

''彼女のアザを''

彼女の歴史の痛い部分を。それは否にもワタシには分かってしまうことで、同時に彼女もワタシの深みを見れば分かることで。

ワタシは禁断の果実に手をつけてしまったのだと、自分の指を止めた。

『ごめんなさい』

そう確かに心で伝えた。

なんの罪もない彼女のことまで恨んでしまうのではないかと、おっかなかった。

あまりに強情な自分がおっかなかった。

その愛さえなくなる前に、そっとワタシは四角い光を閉じた。

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