見出し画像

帰り道

貴方とあたし、ぎこちない下り坂を別の歩幅で下る
貴方はあたしを待つことはない。
いつだって自分の歩幅で、いつだって前を見ている。

ふと、淋しくなって声をかける。
貴方は下らない世話話をあたしにする。

歩幅が同じになっていく。

去年の冬は横に他の人がいて
あたしにも貴方にも別の視野があって。

四季が終わりに差し掛かり、ようやく話が合うようになり、初めのぎこちない話はなくなり、口数も必要な時だけになった。

あたしは真っ直ぐを行こうとしたが、貴方が曲がろうというものですから一緒になって横断した。

『冬好きなんだよね』と、貴方は前を見ながらいう。
あたしも好きだ。鼻に通る冷たくて甘い空気と
肌に当たる少し痛い感覚がたまらなく好きだ。
なのに、あたしったら
『あたしは好きではないです。』と、貴方をみて言った。

春になっても夏になってもこの下り坂で歩幅を合わせて仕様もない話をする事は出来るだろうか。
あたしは素直ではないから。

あたしの少し前を歩く後ろ姿を少しだけ眺めながら、
今日も下り坂を下る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?