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はじめは戦争の顔をしていない「戦争」。私たちは火種のうちに気付くことができるか

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

加藤陽子著

今年の夏、今の社会を理解するには近代史の流れを理解しないといけないなと思い、本や映画をいくつか見ました。
高校の先輩がオススメ本の一つとして挙げていたのがこの本。
高校生への講義をまとめたものなので読みやすい。
読みやすいけど、私の頭の中はパンパンで消化不良、咀嚼中のところもたくさんです。

今年は戦後74年であると同時に、明治に元号が改元されてからちょうど150年なのだそうです。
つまり、終戦の1945年あたりを折り返し地点として倍の年月が流れたということになります。

この本は、近代の日本が行ってきた日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、太平洋戦争当時の世界の情勢などを俯瞰しながら、日本が戦争を選んできた歴史を解説したものです。
これを読むと、明治〜1945年まで、10年に1度くらいの頻度で戦争に明け暮れてきた前半75年だったことがわかります。
帝国主義が幅を利かせ、韓国や満州を抑えておかねばいつ侵攻されるか分からない、という時代背景があったとはいえ、「戦争」が普通に選択肢の一つになり得た時代でした。
全身ハリネズミ状態で、少しでも侵攻の不安を打ち消せるように領地を広げるために戦争を繰り返す。そして勝ってると欲が出る。
結果は310万人が死んで焼け野原……。

1945年の敗戦後、後半74年間は(一応)憲法9条を盾に戦争はせずに済んできているわけですが……

これからも戦争はしないで済むならその方がいいと思うけれど、香港でのデモ、ホルムズ海峡への駆逐艦派遣、日本と韓国の関係、表現の不自由展への公権力の介入や脅迫(暴力を振りかざして要求を飲ませることを成功させ、それにいちゃもんをつけて補助金を出さない)……
今この時だって、いろんな戦争の火種になりそうなものがそこら中にゴロゴロしています。
戦争は、はじめは戦争の顔をしてないこともある。

「もう戦争しかない」となる前に、小さな火種のうちに気付いて消火できる注意力が現代の私たちにあるだろうか、と考えさせられます。

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