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「できる」の自信。



できないこと

 しんどい期2回目、大学の図書館に行けなくなりました。正確には、図書館に行きたくなくなった。試験期間以外は人がほとんどいない大学の図書館は、私にとって落ち着ける場所でした。長期休暇中も通って、作業スペースとして重宝していました。ほとんど毎日いるので、図書館まで用事のある友人が探しに来ていたくらいです。座る場所は、廊下が見えるひとり掛けの席。先客がいなければ、いつも同じ席に座っていました。
 大学図書館ヘビーユーザーだったのに行けなくなったのは、人に会うのがつらくなったからでした。年明けから、国家試験の勉強のために図書館を使う同級生が増えていました。勉強に身が入らない状態で淡い緊張感が漂う場所へ入る気になれなくて、足が遠のいていました。それに、同級生と会うと自然と国家試験の話になってしまう。うまく笑って話せる自信がなくて、みんなができていることを自分はできていないのが悔しくて、誰にも会いたくないと思っていました。
 みんなは国家試験が終わったら自由になる。私は国家試験が終わってからが、本当の闘い。私以外のみんなが輝いているように見えて、そんな風に感じてしまう自分のことが嫌で。自分を守るために、人を避けるようになっていました。

できること

 反対にできるようになったことは、読書。幼いときは本が大好きでしたが、大人になるにつれて読むことが減っていました。今でも本屋さんに行くとつい文庫本を買ってしまうけれど、一気に読みたい派なので読み始めるまでに時間がかかります。まとまった時間が確実に取れるときでなければ、読む気にならないのです。そんな理由で、年々本から遠ざかっていました。
 ところが年末に大学の図書館で小説を借りてみると、あっさり読めました。図書館の冬休み企画に惹かれたのが、本を借りるきっかけでした。重い腰を上げて読み始めた理由はすごく単純で、借りた本は返す必要があるから。せっかく借りたのなら読まないともったいないから。本を読んでいる間は、現実から離れて違う世界にいられる。つい考え事を始められない環境に身を置くことができる。つらいときはいつも、本の世界へ逃げ込んでいたことを思い出しました。読書に没頭できるときとそうでないときがありましたが、小説の中に広がる別世界が私を救ってくれました。
 本を読めることが、小さな自信になりました。病気になってからでも、できることが増えた。気持ちのしんどさゆえにできないことが増えた中で、「できること」が新たに見つけられたことは私に希望を与えました。小説なら読める。何とかひとり暮らしができている。夜なら動ける。「できていること」を見つけられて、少しずつ前向きになることができました。


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▽ まとめ


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