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自分で決めるしかない。



 手術前最後の受診が終わって家で泣いたあの日、長い夢から覚めたようでした。心の奥底に押し込めていたつらさが、出てきてしまったのです。一度蓋を開けてしまった。気づいてしまった。心を少し落ち着かせるのには時間がかかりました。

就職のこと

 しんどい期2回目には、たくさんの心配事がありました。そのなかで最も大きかったのは就職のこと。術後の体調によって、4月から働けるかが変わってきます。就職活動が終わり内定をいただいている時期に病気が見つかって治療をするケースは、かなり稀なのでしょう。大学にも採用先にも、前例がない。本やインターネットでも、同じような境遇の人を見つけることができませんでした。参考にできる人が誰もいませんでした。まさに、「いち香の場合」となったのです。
 それに、相談に乗ってもらうことや、選択肢を挙げてもらうことはできても「こうしなさい。」と決めてくれる人はいません。私の人生だから最終的には自分で決めるしかない。「長い目で見たら数か月や1年休職するのは、そんなに大きなことではないよ。」と言う人。「手術してみたら思ったより元気かもしれないし、とりあえず4月から頑張って働く方向で今は進めたら?」と言う人。提案される休職期間の長さもまちまち。色々な人に色々なことを言われて、混乱していました。正解はどこにもありません。何がよかったのかは、後になってみないと分からない。理解することはできても、混乱している状態で何かを決断するのはとても難しいことでした。誰かに話せば話すほど、自分のことが分からなくなってしまうのがつらくて。自分のことなのに分からないのが悔しくて。底のない沼に沈んでいくような感覚でした。

一旦保留にしてみたけれど

 そして私は、就職に関することは手術後に考えようと決めました。術後の体調がどうなるかは誰にも分かりません。主治医にもはっきりと言えないことを考え続けてもしょうがない。一般論として話せても、私の手術後の体調はそのときにならないと分かりません。そう考えて、一旦保留にしてみました。何も解決していませんが、不透明なことを考える労力は減らせてほんの少し楽になりました。
 就職問題は解決していないので、ここでまた答えのない問いに苦しめられます。「何で今?」と、つい考えてしまうのです。そういう運命なんだと割り切ることなんてできません。人生の大切な時期に、どうしてこんなに大きな選択をしなければならないのか。まだ22歳なんだけれど、と怒りが湧いてくることもありました。重すぎる選択を前にして動けなくなっていました。いつか、「そんなつらいこともあったなぁ。」と思えるときが来るのかもしれません。でも、苦しいのは今。今、苦しくてつらいんです。

 私だけの人生。私が選ぶしかない。今の選択が正しいかは、後になってみないと分からない。自分の選択が、私の「こうしたい。」が、それでいいのか。誰にも分からない、私自身にも分からないことがつらかったです。


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▽ まとめ


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