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私の「好き」に、やっと居場所ができた。


いつかの私を否定しない今があるとするなら。
救ってあげられるのはきっと、自分の知識と言葉だけだ。


あの感情に今、名前をつけるなら。

わたしは、恋をしていたんだと思う。

高校時代、わたしはチアリーディング部に所属していた。
それはもう辛くて、楽しい毎日だった。

毎日朝7時に学校に来て朝練をして、授業を受けて、昼休みまでにお弁当を食べて、昼休みに練習をした。午後の授業を受けて、ホールに集まって、学校が閉まるまで練習をした。

辞めたいと思うことは不思議となかった。

そんな努力はいつしか日常になっていたし、目標に向かってみんなで頑張る毎日は充実していた。


そんな毎日に、少し輝きを増してくれた人がいた。


一つ歳上の女の先輩だった。
その人は、すごくかっこよかった。
キャプテンでもエースでもなかったけど、その人の熱い想いにはいつもみんなが動かされていた。

面白くて、あたたかくて、綺麗な人。

私はなぜだか少しだけ、練習に行くことが楽しくなった。
それはいつものアレとはちょっと違って。理由もなくウキウキする、そんな予感。

理由がわからなくてもよかった。
その方が幸せだとも思った。

少しだけ輝きを増した私の毎日は、不思議と良い方へ進んだ。

セレクションを勝ち取り、先輩と同じAチームになった。

先輩の熱い想いに触れられることが、一緒になって喜べることが、心から嬉しかった。

私は、本当にただ、人として先輩が好きだった。

好きに、浅いも深いもあるだろうか。



先輩は、引退した。


まとまりがなく心配されていた私たちの代が、最上学年となった。

私は必死に、あの先輩に近づけるよう頑張った。
キャプテンじゃない自分に何ができるだろう。
熱い想いを、熱い瞳を、みんなに向けるにはどうすればいいだろう。

引退して数ヶ月、先輩への想いはだんだん薄れていった。
というより、浸透して私の一部になっていった。

「こういう時、先輩だったら…」

なんて考えたりもして。


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知ることで、私の「好き」に居場所ができた。


あの時から、5年。

私はいろんなことを知った。


「LGBTQ」

「LGBTQ(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Questioning)」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア・クエスチョニングの頭文字をとって作られた性的少数(セクシュアルマイノリティ)の人たちの総称。

今まで知っていたようで、他人事だった言葉。

大学に入りちゃんと勉強して知った時、私は忘れかけていた先輩の顔を思い出した。


ああ、そうか、わたしはあの時、好きだったんだ。


「人として好き」

という表現もきっと間違ってはいないけど、やはりあの時の「好き」を他のそれと一緒にしたくはない。そう思っていた。



一緒になんてしなくていいんだ。


セクシュアリティについて知って、初めて自分の気持ちをちゃんと自分で認めてあげることができた。

あの時の「好き」に、ちゃんと居場所ができた。

自分で自分の気持ちを、仲間はずれにしないでおくことができた。


純粋に、ただまっすぐな目で見つめていたあの時の優しい記憶。

否定しなくていいんだ。



女の恋は「上書き保存」?

…そんなことをいう人もいるが、私は違う。今までの恋に名前をつけて、それはもう大切に心の中に保存してある。


2人でいる時間があんなにも楽しいと教えてくれた人。芯のある私が好きだと言ってくれた人。
私が知らない音楽の魅力をたくさん教えてくれた人。
私の目が好きだと言ってくれた人。・・・

そして先輩は、
本気でやれば楽しいと、みんなに対して平等な愛で教えてくれた人。
誰かをまっすぐに見つめる横顔が、教えてくれた。


全部大事に「名前をつけて保存」


私はそんな風に、好きになった人・思い出・その時の感情全てを大事にとっておきたいと思っている。

今まで好きになった人を、私の人生からきれいさっぱり無くすことなんてできない。

一人一人から知ったこと学んだことを私の一部にして、明日も生きていくんだ。


私にとっては全部、違う「好き」だから。



あのね、

今年の2月、Twitterで「anone,」というセクシュアリティ分析ができるサイトを見つけた。

https://anone.me/
anone, では 2,000通りのセクシュアリティの組み合わせから、あなたに「もっとも近い」パターンを分析します。あなたが普段感じている、性に関する疑問や不安が解消されるきっかけになるだけでなく、これまで性に触れてこなかった人でも、潜在的に気づけなかった自分を見つけることができます。

(少しでも関心がある人は、やってみてほしい。)

2020年2月23日。この時の私の結果がこれだ。

並べられている言葉を見て、心がすっと軽くなった。
複雑だと思っていた自分の性に名前があったこと。私にとってはかけがえのない一歩だった。


表現したい性:男性でも女性でもないアイデンティティ ノンバイナリー

服装や使う言葉に「性別のこだわりがない」
中性的な服装が好きだったり、どんな性別であっても、セクシュアリティの枠に囚われず、いいと思った言葉を使ってみたり。

性的指向:知性を愛する サピオセクシュアル

「この人頭がいい!好き!」ではなく、いろんな経緯があってその人の知性がつくられてきたのだとわかって初めて恋に落ちていくことはありませんか?

わかる……ある!めっちゃわかる!


そして、最近。また受け直してみた。
2020年9月27日。

少しだけ結果が違った。

セクシュアリティはうつりかわっていくものなんだ。

いろんな気持ちの変化、環境の変化があって、変わっていくもの。何も不思議なことじゃない。また、知ることができた。


男とか、女とかじゃなく、人間としてその人が好きならそれでいい。

そういう認識をみんなが持てば、きっと幸せになれる。
私はそう思っていたけど、この価値観を押し付けることもまた、人のセクシュアリティを否定することになるのかもしれない。

私はまた一つ、大人になった。



あわよくば、誰かを救えたら。

私も大好きな恋バナ。
でも恋バナは、時に人を傷つけることがあるかもしれないということを知ってほしい。

「実は、好きな人ができて…」

「え〜〜!どんな人!?かっこいい?身長高い?彼女いるの?」

自然と発してしまう言葉。わかる、わかるんだけど。
好きな人=異性
これがその人にとって、普通じゃないとしたら?

「え〜!なんでそんな一途に好きになれないの?」
「恋してる方が絶対楽しいよ!もったいない!」
「付き合ってるのにセックスしないなんてありえない!」

セクシュアリティはグラデーション。
全く同じセクシュアリティなんて存在しない。

だから決めつけちゃいけないし、否定しちゃいけない。
相手がどんな価値観を持っているのか、知ろうとするところから始まる。
もちろんその前に、自分自身で知って認めてあげることが大事なんだけど。


このnoteであわよくば、誰かを救えたら。

居場所を無くした「好き」を救えたら。
否定されない恋愛が一つでも増えたら。

いいな。

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