ボンジュール、辻仁成の春ごはん

今の体温 36.0

コロナ禍に入った昨年2月ごろから、私は辻仁成のブログを読むようになった。
感染爆発が起こり、ロックダウンの最中だったフランスの様子を、日本人が、しかも作家が、その豊かな感性と筆致で毎日伝えているというライブ性に注目せずにいられなかった。
あんなに大変なフランスでもパニックは起こらず、人々は日々の生活を続けているという情報は貴重だった。希望でもあった。
ロックダウン中においてもシングルファーザーとして子供に提供する食事にこだわり、健康に留意し、奮闘する辻仁成の姿はたいそう魅力的だった。

もともと私は辻仁成をよく知らなかった。
特に中山美穂と離婚するまでは、作家でミュージシャンだってことも知らなかったぐらい、私にとって縁のない人だった。
コロナになって初めて、彼の存在がリアルになった。

その辻仁成がドキュメンタリーを撮ることになったと知ったのが春先だったかな?
ずっと撮っていて、ようやく形になり、つい先日NHKBSで放送された。

全体的に明るいトーンで、出来上がりは軽快。ロックダウン、感染拡大という恐怖の片りんはほとんど見当たらない。
どんな状況でも人の営みは続くし、食事は必要だし、美味しいものが幸せを作る。こんな状況だからと打ちのめされるのではなく、前向きに尊厳をもって生きなければならないと思えた。
たった1時間ではもったいない。たくさんの映像があるはずなのになあ。

毎朝10分ぐらい見たい。
毎週30分でもいい。
朝の短いレギュラー番組にしてくれないかな。

辻さんが、
「えー今日のメニューは、マルシェで適当に決めます」
とかラフにつぶやいて、ふらっと買い物に出たマルシェで店主とやりとり(これが一番面白かったかも)。色とりどりの野菜と珍しいお肉を買う姿は日本の人々の食卓に影響を与えるだろう。
季節おりおりのフランスの風景に心を癒され、けっこう焦がしちゃってる調理タイムを楽しみ、大胆な盛り付けをして、「できたよー」と息子君を呼ぶまでをコンパクトにまとめた番組。
オシャレで旬だわー。

若いタレントのほうがいいって?
わかってないなー

若い人じゃないってところがイイのだ。
若い人が元気なのはあたりまえだから。
61歳でミュージシャンで、芥川賞作家で、シングルファーザーの辻仁成だからこそ見たいのだ。

つらい毎日の記録