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ゴジラとの再会

私にとってゴジラ映画は戦争映画だ。
初めて見たのは伊万里市の古くてあやしい映画館だったと思う。
里帰りした親が、娯楽のない田舎生活を強いられる幼児に気を使って連れて行ってくれたのだろう。
まだ映画が理解できる年齢でもなく(出て来る言葉のほとんどがわからない)この時のゴジラは何やら恐ろしい風景が映し出されるばかりの恐怖体験となっている。
シリーズ中のどれだったのかさえわからないし、詮索することへの興味もない。
当時は封切り映画だけではなく映画館での再演も多かったので、年度からの推理も難しい。

その後、私は色々なゴジラ映画を見た。
中でもいちばん気に入っているのは「ゴジラ対キングギドラ」。
調べるまでタイトルもストーリーも忘れちゃってましたが(笑)。
この作品のどこが私の琴線に触れたのかというと、それはもうハッキリしている。

戦時中の孤島でのゴジラとの邂逅、そして摩天楼での一瞬の再会。
ここがたまらないんですよ。

第二次世界大戦下、南の孤島で壊滅寸前のところを偶然ゴジラに救われる日本軍の小隊。
しかしゴジラは米軍の射撃によって瀕死の重体。
撤退を前に、小隊は倒れ伏したゴジラと相対する。

「助けてくれてありがとな。
手当してあげたいけど、自分たちにはもう薬も資材もない。
ほんとごめんな。
なんとか助かってくれることを祈ってる」


そんで全員で敬礼して撤退するのね。
ここがほんとにいいのよ~。
南の島の日本軍ってだけでワクワクするので、一本の映画にしてほしいぐらい。
で、隊長だったおじさんは帰国後、出世して日本を動かす存在になるわけ。
気になる人はぜひ見てください。

あとはさ、ザ・ピーナッツ以来の小美人ポジションなのか何なのか、デュオアイドルみたいなのが続けて出てきたり、特撮ヒロイン風の釈由美子がしゃしゃり出て来て辛かったり、謎のプッシュを感じる沢口靖子に閉口させられたりなど、ダメダメなところが目立つんよね。
お祭り映画にしちゃって、「映画のクオリティ」以外のことを気にしてるんだよ。
私はと言えばその時々でお祭りに乗りたい時には見に行ったし、あまりにひどい時はスルーした。

久しぶりに見たのが「シン・ゴジラ」。
各省庁が揃っての作戦会議の場面が近代ゴジラの見どころですよね。
そこはバッチリだったと思います。
庵野さんはアレを描きたかったんでしょうね。
女の防衛大臣、研究者の姉ちゃんがちょっと面白かった。

でも全体的になんか違うと思った。

あれがもう7年前とは驚きです。
私はこの7年なにをしていたのでしょうか。
で、近代の最適解ではないかと思えるゴジラが今回の「ゴジラ-0.1」です。

今までに劇場で見た映画の中でいちばん良かった。
あなたも見るべき。
2番目はジュラシックパーク。一作目ね。
ちなみに最低だった映画は「トゥームレイダー」。ありゃゴミです。
ちょっと前まで「チャーリーズ・エンジェル」もひどいと思っていましたが、今はストリップをはじめとするキャメロン・ディアスのサービスシーンが気に入っているので浮上しました。ファン必見(笑)。

さて「ゴジラ-0.1」についてのメモ。

主人公は神木隆之介演じる敷島浩一。
戦地での敷島は最低野郎です。同情の余地がないぐらい。
せめて「やろうとしたけどできなかった」という設定ならどれほどよかったか。。。
ともかく敷島は二度までも責務を放棄して生き残った人間でした。
なんとか帰国するも日本は焦土と化しており、実家は焼け落ち、家族も隣人も亡くなっていた。
なんのために生き残ったのかと思い悩む中、孤児を養う女性と出会い、2人の面倒をみることになる。
お金のために機雷を除去する危険な仕事に就き、懸命に働いて家を再建。
なんとか人生をやり直そうとするが、過去の罪悪感から悪夢に悩まされる。
彼の戦争はまだ終わっていない。
日本は復興を目指してもがき苦しんでおり、彼もまたもがいている1人であった。
しかし、復興の最中に無情にもゴジラが現れ、東京に上陸。
戦火を耐えて焼け残った街はがれきの山となり、日本は「ゼロ」よりも大きな打撃を受けることになるのだった。

彼と彼らには戦後数年たってもなお終わらない戦争がありました。
「ゴジラ-0.1」は、その「終わっていない戦争」を終わらせる人々を描いた作品です。
同時にこの作品は、監督を含む「戦争を知らない世代にとっての戦後処理」の物語であったのではないかと思います。
これまでは戦争で生き残った人々が戦争と戦後を描いてきました。
世代は変わっても、この悲惨な経験は新しい世代に語り継がれなければならない。
ゴジラ映画はその装置の1つであると思うのです。
単なるお祭り映画ととらえるのはもったいなさすぎるし、間違いです。

見終わった時には涙と鼻水でマスクもできず、顔を覆いながらトイレに向かいました。
ハンカチ、ティッシュを忘れたのは大きなミステイク。せめてどっちか持っておこうよ、自分。
一年の終わりに良い作品と出会えて幸せでした。
水曜日サービスで1300円という料金は安いとは思えませんでしたが、見終わったらタダみたいなもんでした。

素晴らしい作品に感謝。


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