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響いてくれ。

ユーフォニアム3期の9話と10話が良すぎて、すげ〜泣いたので、好みシーンをピックアップして感想などを雑に書き連ねるなどする。

ネット上では麗奈がどうだ、滝先生がどうだ、真由がどうだ、賛否両論様々飛び交っているが、私はどのキャラクターにも共感できるし、結論から言うと、みんな大好き。





ツーフォーパーティ前にて

まずは第9話、コンビニ前での4人の会話シーン。
ちなみにこのコンビニの名前は「ツーフォーパーティ」らしい。絶対24時間営業。

葉月:風が生温〜い…
緑輝:まだまだ暑いですよね。

立ち位置と目線がズレている4人。

葉月:にしてもさ〜、はしもっちゃんいなくなって、練習さらにピリピリしてるよね。終わるとドッと疲れが出るっていうか…
久美子:ま、まぁ!関西大会も近いし。
葉月:それは分かるけどさ、上手く出来なくて辛いっていうんじゃなくてさ。
緑輝:分かります。
久美子:あ゛〜、今はそういう話はいいんじゃないかな〜…
葉月:どうして?

緑輝:久美子ちゃんから見てどうなんです?今の北宇治って。
久美子:え?あぁ…うん。まぁ、いろいろあるのは把握してるよ?ただ、初めてのことだからね、この形式のオーディション。
葉月:思ったより、大変だったってこと?
久美子:…それはちょっと…思うかも…
緑輝:でも、一番の原因は滝先生な気もします。

「滝先生」のワードで足のカット。黒ソックスで麗奈と分かります。

この緑輝のセリフをキッカケに、麗奈は帰路につく。

麗奈と緑輝の関係もおもしろい。
二人とも演奏が上手い点は同じなんだけど、人気楽器のトランペットで周りを巻き込み我道を進む麗奈と、ライバルのいないコントラバスで波風を立てないよう過ごす緑輝。
麗奈にとっての香織のような、緑輝にとってのライバルがいたら、緑輝は譲っていたんだろうか。
緑輝に「白ヘビ」と例えられてショックを受けていたけど、麗奈はきっとヘビ嫌いだよね。
緑輝に対して少なくともネガティブな印象を持っていそう。

久美子:え?
緑輝:府大会から、いろいろ変えすぎじゃないでしょうか。
久美子:まぁ、滝先生がそれがいいって判断したんだから、考えはあるんだと思うけど…
緑輝:でも、真由ちゃんと久美子ちゃんは実力は同じだと思うんです。だったら、久美子ちゃんの方が良かったって、緑輝は思います…

葉月:ん、緑輝はそっち派なんだ。
緑輝:派というか、その方が部が落ち着くと思うんです。部員みんな不安になるし、代わりに入った真由ちゃんだって、困るだろうし…
久美子:…困るのかな?やっぱり。
緑輝:直接聞いたわけではないですけど…

人によってはストレスを感じるほどにしつこくソリの辞退を提案する真由。
北宇治のルールに反発しているようにも見えるのだが、そんなことないと思う。

真由の立場になって整理したい。
私の考えは以下の通り。

・北宇治は全国金を目指している
・真由は全国金経験者
・真由は演奏の上手さだけが全てではないことを知っている
・“合奏”とは、みんなで合わせて音を奏でること
・部内の空気が悪くなる=良い合奏ができない

真由は部内の空気が悪くなることを避けたがっており、部員の関係性を良好にする方向で全国金を目指してくれているとも言える。
同じく合奏が好きな緑輝も同じ気持ちだよね。
「演奏が上手いだけでは勝てないから、更に特別に上手くなる必要がある」と考えている麗奈との違いがそこにある。

気持ちが孤立し合う。

葉月:でもさ、それ気にしてたらそもそもオーディションって成り立たない気もするよ?
緑輝:それは…分かりますけど…

手に力が入る葉月。

葉月:少なくとも、私はシンプルに実力で選ばれていると思ってた。だから去年も納得したし、今年目指して頑張れた。

よくぞ言ってくれた。

葉月は滝先生の采配と実力主義に「賛成派」。
緑輝は「反対派」とまでは言わないが、部内の空気を大事にしている。
実は、この二人の違いは1期のオーディションのシーンからも読み取れる。


部内関係を気にする人、しない人

1期の11話。
香織の希望により行われた再オーディションは、みんなの拍手の数で決まることになった。

ほとんどの部員が、部内の空気や関係性が悪くなるのを恐れ、拍手をしなかった。
その中で香織に拍手を送ったのは、優子と晴香部長の二人。

そして、麗奈に拍手を送ったのは、

久美子
葉月

この二人だった。

同票となり香織が譲ることで終わったが、香織が「高坂さんの方がソロに相応しい」と言わなかったら、どうなっていただろう。

久美子は直前に麗奈と約束をしていたためこの拍手は当然ともいえるが、葉月はどうだ。
中学時代にテニス部で実力主義を体感させられていたからこそ、良い音は良いと言わざるを得なかったのではないだろうか。

音楽というのは良いですね。嘘をつけない。良い音は良いと言わざるを得ない。

松本 美知恵
1期10話より

秀一への告白シーンもさることながら葉月はずっとハッキリした性格なのである。
一年からずっと「賛成派」であった葉月が、ここへきて北宇治のルール上で活きている。

対して緑輝は、ずっと周りの関係性を気にしている。
葉月の失恋に誰よりも落ち込んだり、後輩の言い争いに口を出したり…。
中学時代は強豪校にいたことから、部内のドロドロした関係にうんざりしていたのかもしれない。

一方の久美子はというと、あくまで部長として会話を進め、自分の気持ちを隠したがっている
そんなこと、自分でダメだと分かっているハズなのに。


ちゃんと話せばなんとかなる久美子

久美子!思い出せ!今までどうやって問題を解決してきた!?

吹奏楽部ってさ、人多いし、初心者も経験者もいて、考え方もいろいろあって、
「どれか一つだけが正解」って見つけるのはすごく難しいなって。

3期3話より

久美子:…そうなんだよね。だから、部長って多分、そんな、みんなのいろんな気持ち、まとめるためにいるんじゃないかって、思う。だから、そう!全部、私のところに持ってきて!
沙里:先輩のところに…

久美子:うん。サリーちゃん個人の悩みでも、他の一年生の問題でも、ぜんぶ話してよ。きっとみんな、どこか似たような悩み、抱えてると思うから。…って、これじゃ何一つ解決になってないよね。でも、ちゃんと話せばなんとかなるんじゃないかって私は思ってる。だって…

目指してる場所は、同じだから。

そう。みんな目指してる場所は同じ。
誰も悪くない!ちゃんと話せば分かってくれるよ!

久美子が部長(主人公)たらしめる要因は、思っていることを相手にぶつけられる愚直さにある。
現実世界でそれができる人は意外と少ないと思う。
だって誰も、わざわざ他人とぶつかりたくないでしょ。

1期3話より

久美子:私きっとどこかで自分は悪くないって思ってるんだよ。だから謝るのも嫌で、だったら気にしなきゃいいのに、それも嫌で。
葵:高坂さんに、私悪くないって言いたいんだ?
久美子:え?
葵:違う?
久美子:んー…そうかも。

葵:気持ちはわかるよ。うちの部だって、去年も一昨年も目標は全国大会って書いてあったけど、本気で目指している人なんていなかったんじゃないかな。
久美子:だよね、でも今日みたいに聞かれたら全国大会目指すっていう方に手上げるでしょ?
葵:そりゃあ、ねえ。
久美子:だからややこしくなるんだよ。大人はずるいよ。

葵:それ言ったら、どっちにも手を上げなかった誰かさんが一番ずるいんじゃない?
久美子:それは…そうだけど。
葵:きっとそうするしかないんだよ。みんななんとなく本音を見せないようにしながら、一番問題のない方向を探ってまとまっていく。学校も吹部も、先生も生徒も。

久美子:どうして?
葵:そうしないとぶつかっちゃうからだよ。ぶつかってみんな傷ついちゃう。

ずっとぶつかってたら社会は成り立たないかもね。
でも、バカ正直に気持ちをぶつけられたら、多分、誰だって響いてしまうんだよね。

2期10話より

久美子:だったら何だって言うんですか!?先輩は正しいです!部のこともコンクールのことも全部正しい!でもそんなのはどうでもいいです。あすか先輩と本番に出たい。私が出たいんです!

あすか:そんな子どもみたいなこと言っ…
久美子:子どもで何が悪いんです!先輩こそなんで大人振るんですか?全部分かってるみたいに振る舞って、自分だけが特別だと思い込んで…先輩だってただの高校生なのに!

今や久美子は部長となり、「久美子の気持ち」と「部長の気持ち」でどっちつかずになっている。
とりあえずそのモヤモヤを、10話で、誰かが晴らしてくれるらしいよ。


響かされた人

あすか:なるほどねぇ。転校生にオーディションかぁ。
久美子:はい。

相変わらずですね。

あすか:なぁ〜んだぁ。もっと痴話喧嘩っぽいものを期待してたのに〜。
久美子:痴話喧嘩?
あすか:「私、大学は海外に留学することにしたの。別れたくない!」とか?
久美子:なんですか、それ?
香織:辞退したがる転校生か。たしかに難しいね。

辞退する後輩を止めようと頑張っていた人が、そう云うております。

あすか:答えは簡単でしょ〜?受け入れて黄前ちゃんがソリ吹けばいいだけじゃん。他のパートはともかく、その子に関してはそれで万事解決!

画角よ。

香織:いじめないの。
あすか:いじめてないよ〜?客観的かつ論理的に話をしているつもりだけど?

オレオ分けるの、やるよね。

久美子:でも…
あすか:でも?
久美子:それじゃあオーディションの意味ないじゃないですか。北宇治は実力主義。私が入った年の麗奈と香織先輩のオーディションのときに…あ。
香織:続けて?
久美子:すみません…。とにかく、そうやってきたのに私がそれを破るようなこと…

クッキーとクリームに挟まる久美子。

久美子のモヤモヤも、あすかの目線からは白黒ハッキリすることを示唆している。
あすか先輩の洞察力と問題解決能力を侮るなかれ。

あすか:はいはい、ご高説ありがとう。変わってないなぁ黄前ちゃん。偉そうなこと言ってるけどさぁ、結局、黄前ちゃんのワガママなんだよ。
久美子:…ワガママ
あすか:オーディションやって一番上手い人が吹いてほしい。選ばれないなら、ちゃんと理由を滝さんに説明してほしい。それって全部、黄前ちゃんがスッキリしたいからでしょ?

見守る香織の存在も良いんだよな。

「滝さん」という呼び方。
先生と生徒という特別な関係でなくなり、一人の人間として対等に滝先生を評価している。

久美子:それは…!
あすか:でもさ、答え出してから行動しているとは限らないんだよ?
久美子:…どういう意味ですか?
あすか:迷ってるんじゃない?滝さんも、その子も。
久美子:え。

お見通しのあすか。

冷静になれば当たり前だけど、久美子がそうであるように、滝先生も、真由も、どっちつかずで迷っている。
これって、かなり普遍的な不満のタネだよね。相手もいろいろ考えてて、いろんな悩みを抱えてるんだけど、自分はそんなこと気にせず「なんでこの人はいつもこうなの?」「なんでそんなことするの?」って思っちゃうことあるよね。我々は皆ワガママだ。
そりゃあ視聴者だってモヤモヤするわ。

あすか:それだけ部の中から賛否が出るってことは、黄前ちゃんとその転校生の優劣に大きな差はない。だから、どちらかを選んで堂々としている他ない。滝さんも部の空気には気付いていると思うよ?でも、迷ってるところを見せたら終わりだとも思ってる。だから何も言わない。

何かが久美子の中で繋がる。

久美子:じゃあ…でも、どうしたらいいんです!?次の日曜なんですよ、関西大会!
あすか:知らな〜い。ただ、黄前ちゃんの良いところは、無責任に言いたいこと好き勝手に言っちゃうところでしょ?私のときみたいに。言っとくけど、あのとき言われたこと、今でも一つも正しいなんて思ってないよ?でも、ワガママを無責任に言われたから折れるしかなかった。
久美子:あすか先輩…!
あすか:ギリギリにならないと動かないのは、いつものことでしょ?シャワー浴びてくる〜。

香織:…羨ましいなぁ。
久美子:…?
香織:響いたんだよ。

お見通しの香織。

久美子:…お邪魔しました。
香織:ううん。
久美子:あすか先輩に伝えてください。「響きました」って。
香織:うん。がんばってね。黄前さん!

「響かされた人」、黄前久美子。
あすかに気付かされた自分の良いところ。
後先考えずに、無責任に言いたいこと好き勝手に言っちゃえよ!

私の…思ってること…!

そうだ!走れ〜!!

滝先生も、部員みんなも、変わらず同じだって思ってる…!

走るんだ〜〜!!!

正直に…!

叫べ〜〜〜〜!!!!!

言葉にしてっ…!

行け〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!

全部っ…!

久美子〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!

ぶつける!!

お前がナンバーワンだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

思い返せば、新しい久美子に生まれ変わるとき、いつも彼女は橋の上だった。
橋とは、何かと何かを繋ぐためのもの。
橋がかかっているのなら、向こう側へ走ればいいんだよ!
まっすぐ走ればええねんやねんやんねんな〜〜〜!!


次の曲が始まるのです

関西大会当日。
普段からピリピリしているが、普段以上に緊張感が漂う。

恐ろしい空気の中で、思ってることを全部ぶつける久美子。
このシーンの素晴らしいところは、「考えていることが口に出てしまう」という1期1話からの久美子のランニングギャグが、久美子の「思ってることを全部言う意志」と、「緊張感を和ませる」という2つの役目を果たすところ。
なんと美しい設定の回収。

私は、一年生も三年生も同じ土俵で競い合えて、一つの目標に向かって進める北宇治が大好きです。
その北宇治で全国金を取りたい

二年間ずっと思ってきたけど、でも、どうしてもそこに届かなかった。
ここにいる二年と三年、そしてきっと、滝先生も思ってる。
なんでだよ」って。

だから何かを変えなきゃいけないって、幹部でそう考えて、今年はこのオーディション形式を提案しました。それが間違っていたとは思いません。より北宇治らしい方法だとも思いました。
ただ、そのことで戸惑いを感じた人がいたことも事実です。部長として、この場で謝らせてください。すみませんでした!

今更謝られても納得できない人だっていると思います。
でも、それでも私は北宇治で全国金を取りたい

ワガママかもしれない。
でも、ここにいるメンバーと、不満も戸惑いも全部吹き飛ばす、最高の演奏をして全国に行きたいんです!

一年間、みんなを見ていて思いました。

こんなに練習しているのに上手くならないハズがない。

こんなに真剣に向き合っているのに響かないハズない

北宇治なら取れる!

私達ならできるはず!

だから自信を持って!

今までやってきたことを信じて!

口々に「全国行こう!」と鼓舞する部員たち。
久美子の"思ってること"は、確実にみんなに響いた。
こんなことできるの、久美子だけやで!
このシーンが熱すぎて、これ書いてる途中でも泣いてます。

「はい出た出た、久美子のお得意のやつ。私は経験済みですよ」みたいな奏の笑顔も良い。

今さら気付いたんだけど、自由曲の『一年の詩 〜吹奏楽のための』とかいう楽曲、10話まで観てるのにまだちゃんと聴けてないんだよね。
曲自体は各配信プラットフォームで聴けるらしいので、気になる人は是非。
私は来たる本番の日のために、聴かずに待っていようと思います。

大会結果と、久美子の演説を聞いた真由の心境はいかに。
響いてくれたらうれしいな。

そして、次の曲が始まるのです。


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