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#28 誰よりもHACHI

【前回の内容】↓

朝日が差し込んできた。
今日はいつもより目覚めるのが早い。

ボナムをしつけ教室へ預ける日が来たのだ。

目は覚めているものの、体が動かない。
ぐにゃぐにゃになった感情が私を包む。
改めて、これでよいのだろうか。
あんな幼い子を1ヵ月も預けてトレーニングさせるって
私、とても酷なことしているのではないだろうか。

目の奥の奥からじんわりと
熱いものが込み上げてくる。


離れたくない。


あんなにう○こを喰おうとしていても
声量がデカすぎても、やはりとても愛おしい
心も体も成長している瞬間を
そばで見守れないのが辛い。

ボロボロと溢れてくる涙を拭おうとすると
横で天井をぼーっと見ている旦那が居た。

「起きていたの?」
「うん、なんかあまり眠れなくて…寂しくてさ

命を育てる難しさと
命が与える喜びを同時に経験した1ヵ月。
なにかが大きく変わった1ヵ月。
ボナムが私たちに色々与えてくれた1ヵ月。

「起こしに行こうか」
「そうだね」

いつも通りの日常のように
ボナムを起こしてトイレをさせた。
いつも通りにご飯を食べさせて
またいつも通りにクレートに入れて
ボナムに悟られまいと明るく振舞う。

しかし、ワンちゃんって不思議なもので
全部見透かされているような気がした。

こころなしかボナムの表情も
せつなそうな顔をしている。

しつけ教室にはワンちゃんが沢山いて
ボナムも友達が出来て、寂しくないはずだ。
これはとっても良い経験になるんだと思って
奮い立たせた5分後には、
いやだいやだいやだ離れたくないと
メンタルの再生と崩壊を繰り返していると
しつけ教室へ向かう時間となった。

「ボナム、ハウス!」

何かを察しているのか
いつもなら入るハウスに入らないボナム。

「どうしたの?ハウスは?」

お座りをして一向に、微動だにしない。

その姿が渋谷の忠犬ハチ公の姿に見えてきて
また泣かせにかかってくる。
ああ、リチャード・ギアってこんな気持ちだったんだ

「私だって辛いんだよ、ボナム、、、」と
心に中で思いながら見つめていると

これ以上は困らせまいと思ったのか
そっとクレートに入っていた。

ワンちゃんって気持ちを汲み取ってくれるとは
聞いていたが、まさにその通りだ。

そのままクレートを車に乗せる。
いつもはキュンキュンと鳴くのに
この日ばかりは鳴かずの
私を強い眼差しで見つめてくる。

”いってくるよ”と言われている気がした。

しつけ教室に無事につき
現在の状況と今後のことを話し合う。
ふと足元に置いているクレートを見ると
スヤスヤ寝ているボナムがいる。
私たちに心配かけないようにと
寝てくれたのだろうか。

安心した私たちは、寝ているボナムを起こさずに
そっと教室を出ていった。
振り返ったら悲しすぎる。
だから、前へ前へと足を蹴り出す。

帰りの車内は、とても静かで
旦那もくすんだ目の色をしていた。

これから、1ヵ月ボナムがいない。

家に帰ってボナムの居ないサークルを片付けた。
サークルなんて1ヵ月前はなかったのに。
今では無い部屋がとても広く感じる。

片付けたサークルの位置にポツんと座る。

「Bonam…」

ボナムを想いながら佇む私の姿が
実は、誰よりもハチ公なのかもしれないーーー。

サポートしていただきありがとうございます!サポートは全てボナム(愛犬)に還元しようと思います^^