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新木場の木場。

新木場。
東京メトロ有楽町線やJR京葉線、りんかい線で「新木場行き」とか「新木場方面」は目にしたことはあっても目にするだけで終わりという方が大多数を占めるんじゃないだろうか。「あ、新木場ね、たまに買い物に行くよ」とか「そういえば昔の彼女が住んでたわ」といったような会話を聞くことは殆ど無い。ところが東京メトロ東西線の「木場」となると、モンナカの近く、富岡八幡宮に行く時に通る、深川丼の美味しい店に行った、など途端に知名度が上がるのはさすがの歴史の重み。
新木場。読んで字のごとく材木関連の街だ。江戸時代は日本橋の材木河岸に始まり深川→木場→現在の新木場と、街整備や埋め立てがあるたびに転々としてきた貯木場が、1969年からはこの新木場に着地安定しているのだ。湾岸道路を渡ると少々の排気ガスに混ざって材木の香りが途端に漂ってくる。もちろん昔に比べたら減少しているのは致し方ないが、それでも多くの材木工場、材木問屋などが集結している。そんな新木場に数多ある材木会社のひとつ、昭和10年創業の老舗材木問屋である梶本銘木店さんの工場にお邪魔した。

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主に天然無垢一枚板をはじめとする10,000種類ほどの銘木を扱っておられるそうだ。材木に関しては全くのド素人の自分にも「一枚板」を使った家具や調度品が贅沢で価値が高いことは想像できるが、そんなシロモノが所狭しと並ぶ。

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広い工場内をくまなく案内していただき、どうぞ自由に見てまわってくださいね、とのお言葉に甘えてかなり自由に嗅ぎ回ってしまった。

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色々な「木目」。なるほどこういうことだったのか。

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工場内には数々の乾燥中のお品が。乾燥に5年の歳月をかけることもあるそうだ。「最高のその時」が来るまでじっくりゆっくりスタンバイ。

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「木」が放つ味わいに陶酔してしまう。

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こんな木の良い香りに包まれてお仕事ができるなんていいですね〜などという稚拙な感想にもにこやかに対応いただいた。すみませんアンドありがとうございました。でも本当に芳しいのだ。

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個人向けに端材も販売されていて、なかなか手に入らない天然モノ木材を物色しに来ている方の姿も見られた。天然素材と触れ合う心地よさに後ろ髪ひかれつつ工場をあとにした。

大方が持つ新木場への僻地感とは裏腹に「マイエリア」として頻繁に足を運ぶ諸兄諸姉がいる。ここに用があるからだ。

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と、かなり強引に言い切ってしまったがまあいいか。もうひとつの秘境にしてそれぞれのそれぞれなりの聖地である新木場コーストだ。仕事も含め規模の大小問わず年間200日ほどライブハウスに行っていた時期もあるのだが、数えきれないくらいのオハコの中でもここは特別な思い入れのある場所だったりもする。音楽のついでに「現代の貯木場」の認知度が上がったりしたらとても素敵なのだが。

江戸時代の材木職人たちがこのコーストや、昨今増え始めたおしゃれなカフェなんかを見たら「へえーこんなもんができちまったか」なんて目を丸くして、海が小さくなったことに文句を言いながらも、好奇心旺盛な江戸っ子たちだ。これは案外ノリノリで楽しんでくれるかもしれない、などと想像したら思わず笑みがこぼれてしまった。




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